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ミャンマー:キリンは軍系企業と関係を断つべき

日本の大手企業は調査報告書を公表すべき

Storage tanks and fermentation chambers of beer making at Kirin Brewery Nagoya, Kiyosu City, Japan, July 23, 2019. © 2019 The Yomiuri Shimbun via AP Images

(東京)―キリンホールディングス株式会社(以下キリン)は、合併事業提携先で軍系企業のミャンマー・エコノミック・ホールディングス社(以下MEHL)に関する調査報告書を公表すべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。キリンは、2021年1月7日にデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社(以下デロイト)による調査が終了したと発表したが、守秘義務を理由に公表していない。

「キリンは軍系企業のビジネスパートナーに関する調査報告書を公表することで、消費者や投資家、そして人権団体などの信頼を回復すべきだ」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理のフィル・ロバートソンは述べた。「キリンとMEHLの提携は深刻な人権問題を疑わせ素早い対応が必要であり、調査結果を非公開にしたままで状況を当惑させるべきではない。」

キリンは2021年1月7日に、デロイトによる調査は「確たる判断に必要な情報をデロイトが十分に入手できなかったため、確定的な結論」に至らなかったと発表。同調査は、「当社合弁事業のMyanmar Brewery Limited及びMandalay Brewery Limitedからの資金の使途を明らかにするためのもの」としていた。

現在、キリンはミャンマー・ブルワリー社(以下MBL)とマンダレー・ブルワリー社(以下MDL)の過半数の株を、MEHLとの提携の下保有している。キリンは2015年にミャンマー国軍が所有するMEHLとの合弁事業提携により、MBLの株式の55%を買収し、その後、発行済株式総数の4%をMEHLに譲渡した。同社は、2017年にMEHLとの別の合弁事業でMDLの株式の51%を買収した。

ミャンマー国軍(タッマドー)は長きに渡って同国の少数民族に対して深刻な人権侵害や戦争犯罪を犯してきた。そして、2017年8月以降には、ミャンマー治安部隊がラカイン州のロヒンギャ・ムスリムに対して、殺害、性暴力、強制退去を含む民族浄化の作戦を展開した。国際人権ヒューマン・ライツ・ウォッチは、同作戦中にミャンマー治安部隊がロヒンギャに対して人道に対する罪やジェノサイドに当たる愚行を犯したことを把握している。

ラカイン州では、約60万人のロヒンギャを行動の自由や充分な食料、医療、教育や生活に必要なサービスへのアクセスを国軍や警察に断たれたまま生活している。さらに、2012年以来、約13万人が野外収容所に収容されている。ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査では、ロヒンギャに強いられている劣悪で抑圧的な環境は迫害、アパルトヘイト、そして自由の剥奪という人道に対する罪であると判明している。

国連が設置した事実調査団(以下「FFM」)は2018年に、軍による残虐行為が「戦争犯罪および人道に対する罪のレベルに達した」との調査結果を報告した。FFMは2019年9月の報告書で、ミャンマー国軍ならびに軍系企業のMEHLやミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)と関係する「あらゆる外国の企業活動」が、「国際人権法および国際人道法違反に寄与あるいは関与するリスク」を負っており、「少なくともこうした外国企業がミャンマー国軍の財政能力を支援している」と結論づけた。

FFMは、現在進行中の、また今後の国際人権法および国際人道法の違反を阻止するために、軍の「財政的孤立」を強く求めている。

キリンは2020年11月11日に、MBL及びMDLからキリン及びMEHLへの「全ての配当金の支払い」の停止を発表。同社は、「本合弁事業を取り巻く事業環境の見通しが著しく不透明である」ことやMBL及びMDLからの「資金の使途を明らかにするため調査が進行していることや新型コロナウイルスの感染拡大」を理由とした。

2020年5月22日にヒューマン・ライツ・ウォッチと3つの非政府組織は、キリンに書簡を通じてMEHLとの提携を解消すべきだと求めた。キリンは同年6月6日に「MEHLの財務やガバナンス体制に関する独立した精査」を行うためデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社を起用したと発表。その後、同年6月12日付の書簡で、「MEHLとの合弁事業 2 社からの収益は、どのような収益であれ、軍事目的で使用されることはキリングループとして到底受け入れらない」とヒューマン・ライツ・ウォッチなどへ返事をした。アムネスティインターナショナルは、同年9月、MEHLとミャンマー国軍の関与についての詳細を明らかにした報告書を発表した。

キリングループの人権方針は、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」など人権を守る国際的な取り組みを尊重する、としている。同原則に従えば、キリンは「自らの活動を通じて人権に負の影響を引き起こしたり、助長することを回避し、そのような影響が生じた場合にはこれに対処」すべきであり、「たとえその影響を助長していない場合であっても、取引関係によって企業の事業、製品またはサービスと直接的につながっている人権への負の影響を防止または軽減するように努める」べきだ。

「FFMが外資系企業にミャンマー軍と関係を断つよう強く提言してから1年以上経っているのにも関わらず、キリンは明確は判断を取ることを躊躇している」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理のロバートソンは述べている。「キリンは、ミャンマー国軍との関係が長引くほど、軍の愚行に加担しているリスクが高まり、同社の人権的な経歴にさらに泥を塗ることになるということを自覚すべきだ」

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