(ニューヨーク)- 国連安全保障理事会の理事国は、北朝鮮政府による人権侵害の無数の被害者への正義を要求すべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。2016年12月9日、国連安保理は公式な議題として同国の状況を議論する予定だ。
「国連安保理が北朝鮮の恐ろしい人権侵害に光をあてることは、同国政府による人道に対する罪へのアカウンタビリティ(責任追及•真実究明)を求める声を大きくするものだ」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンは述べた。「金正恩支配を裏打ちする深刻な権利侵害を止めさせるべきだ。その可能性があるのは、国連加盟国からの更に強い国際的圧力しかない。」
世界人権デー(12月10日)前日に行われる今回の議論により、国連安保理は3年連続で、北朝鮮における人権侵害を国際平和と安全保障への脅威として正式に取り上げることとなる。ゼイド・ラアド・アル・フセイン国連人権高等弁務官が理事国にむけ、国連人権高等弁務官ソウル事務所(北朝鮮政府および指導者による人権侵害の証拠収集を行っている)の活動も含めた同国の人権状況をブリーフィングする。今回の議論の実現のため、現在の安保理議長国であるスペインは他最低8カ国の支持を必要としていたが、12月1日付けの議長宛書簡で、スペインを含めた合計9理事国が正式に会合を要求した。
人権理事会により設立された国連調査委員会(COI)は2014年、意図的な飢餓、強制労働、性的虐待、レイプ、拷問、公開処刑を含む北朝鮮の深刻な人権侵害を報告した。委員会は「組織的、広範な侵害の多くは、長期にわたり、現在も進行中」であり、「人道に対する犯罪の証拠として求められる高い基準に相当する」と結論付けた。さらに、国連安保理が北朝鮮の事態を国際刑事裁判所(ICC)に付託することを検討し、人権侵害の責任者個人への制裁を求めるよう勧告した。これらの勧告はその後、人権理事会および国連総会で採択された複数の決議で支持された。最も最近のものは、国連総会第三委員会が先月112カ国の賛成により採択した北朝鮮決議だ。
人権理事会決議後の2015年6月、ゼイド高等弁務官は、北朝鮮の人権侵害と人道に対する罪に関する情報の収集を継続するための事務所をソウルに開設した。そして2016年3月に人権理事会は、北朝鮮の被害者に真実と正義をもたらす方法を更に詳細に検討するため、アカウンタビリティに関する独立専門家グループを設立。本グループは2017年3月、人権理事会で報告書を発表する予定だ。
国連安保理は 9月9日に北朝鮮が行った核実験を非難する先週の決議の中で、北朝鮮国民の苦しみへの深い懸念を表明。本決議は安保理が「北朝鮮の人びとが受けている深刻な苦難に対し、深い懸念を改めて表明し、人びとの多大なニーズが満たされないまま、国民の福祉ではなく核兵器と弾道ミサイルを追求していることを非難し、北朝鮮国民の福祉と生まれながら持つ尊厳を尊重し、保障する必要性を強調」した。
「国連安保理は、例年行われるようになったこれらの重要な北朝鮮の人権侵害の議論を、同国指導者たちが犯してきた恐ろしい犯罪へのアカウンタビリティの実現に向けた行動につなげる方法を探るべきだ」と前出のロバートソンは述べた。「悲惨な人権侵害の数々に関する安保理での議論は、人道に対する罪は無視できず、北朝鮮における残虐行為の責任者は法により裁かれるべきであることを示している。」