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イラン:政治囚暴行事件の真相を明らかにすべき

エヴィーン刑務所暴行事件は司法権の人権軽視の表れ

(ベイルート)イランの首都テヘランのエヴィーン刑務所では2014年4月、看守が政治囚数十人に激しい暴行を加える事件が発生したことが伝えられている。司法権は調査結果を公表すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。当局は不当な暴力を用いた者について、全員を職階を問わずに処分すべきだ。当局はまた、基本的権利を暴力によらず行使したことで拘禁されている人全員を即時無条件釈放すべきだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、イランの刑務所機構を監督する司法権当局者に対し5月22日付で書簡を送り、4月17日当日かその後にエヴィーン刑務所第350エリアで激しい暴行事件が発生したとの信頼できる報告について懸念を表明した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは刑務所当局者への調査や懲罰の実施の有無を知らせるよう求めた。今のところイラン側からの返答はない。またヒューマン・ライツ・ウォッチは、政府が中身のある救済措置を取ったとの情報を得ていない。

「イラン司法権は、かたくなな態度を取ることで多数の囚人への暴行事件に関する報道が立ち消えになることを望んでいるのかもしれない。しかしそうした対応自体もまた、法的正義を司る意志も能力もない司法権のあり方を告発するものだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東局長代理ジョー・ストークは述べた。「司法権当局者は被害者と家族に対し、暴行を命じ、実行した者が今後処罰されることを少なくとも伝えるべきだ。」

当局者の一部は今回の暴行事件を否認しているが、命令に従わなかった囚人との小競り合いだったとの発言もある。事件は警備員が禁止品の持ち込み検査を行おうとした後に発生した。囚人の家族など事件に詳しい人びとはヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、警備員と看守数十人が囚人に対して居室から出るように命じた際、これを拒否した者に激しい暴行を加えたと述べた。

この消息筋によれば、刑務所職員は30人前後の囚人に対して廊下を歩くよう命令。囚人の列を左右から挟むようにして殴る蹴る、棒で打つなどの暴行を加えた。重傷を負った人もいる。囚人の頭を殴る看守もいれば、胴体や腕、脚を殴る者もいた。 

この消息筋によれば、当局側はこれ以外の方法でも少なくとも囚人31人に懲罰を加えた。長期間の独居拘禁や、侮辱的で品位を欠いた処遇が行われた。反政府組織関係者との容疑で死刑判決が確定した囚人1人はその後処刑されている。

囚人31人には著名な人権活動家が含まれる。刑事裁判の弁護を行ってきたアブドルファッターフ・ソルターニー弁護士、クルド人ジャーナリストで人権活動家のモハンマド・サーディク・カブードヴァンド氏、労働運動家のベフナム・エブラーヒームザーデ氏、当局に解散させられた人権報告者委員会のサイード・ハエリ氏などだ。

これ以外の27人の氏名は次の通り(敬称略)。ゴラームレザー・ホスラヴィー・サヴァードジャーニー、マジード・アサディー、アサドッラー・ハーディー、レザー・アクバリー・モンファレド、ジャヴァード・フーラドヴァンド、メフルダード・アハンカハー、アサドッラー・アサディー、ソヘイル・アラビー、アミール・ガジヤーン、モハンマド・ダーヴァリー、サイード・マティンプール、ヤーシャール・ダーロッシャファー、メフディー・ホダーイー、セムコ・ハルガティー、ソヘイル・ババディー、ソルーシュ・サーベト、アリー・アスガリー、ダーヴァル・ホセイニー・ヴォジダン、アーラシュ・ハムパイ、ベフザード・アラブゴル、モスタファー・アブディー、モハンマド・ショジャーイー、オミード・ベフルーズィー、モスタファー・リスマンバフ、モハンマド・アミーン・ハーダヴィー、フータイン・ドウラティー、エスマーイール・バルゼギャリー。

第350エリアでの暴行事件から1週間も経っていない4月23日に、司法権はゴラームホセイン・エスマーイーリー刑務所庁長官を解任し、テヘラン司法権長官に任命すると発表。イラン刑務所庁は刑務所機構を監督する司法権の管轄下の組織だ。しかし司法権当局は、エスマーイーリー氏の解任と暴行事件との関連をただちに否定した。 

5月14日、モハンマド・バーゲル・ノウバフト報道官は政府としてこの問題を調査すると発言。しかし報道官がこう述べた後で、司法権長官など政府高官は捜査対象と範囲を狭めている。当事者の囚人と家族には捜査状況や調査結果についてなんら情報が知らされていない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが書簡を送ってからも、当局は少なくとも10人を第350エリアから、テヘランの西45kmの街キャラジにあるラジャーイー・シャフル刑務所へと移送した。4月の事件以来、刑務所当局は5人の囚人(モンファレド、フーラドヴァンド、ハーディー、アラブゴル、サヴァードジャーニーの各氏)をエヴィーン刑務所第240エリアの独房に移した。当局はまたダーロッシャファー氏とハエリ氏の兄弟を拘束したが、その後保釈した。  

当局が一部囚人を第350エリアから移送したり、囚人2人の家族を拘束したりした理由は定かではない。だがヒューマン・ライツ・ウォッチは、こうした動きが4月の事件への報復と部分的に結びついている可能性を懸念している。書簡の中でヒューマン・ライツ・ウォッチは、過酷な報復的・懲罰的措置に懸念を表明した。当局に対し、イラン国内法と国際法は共に被告人の保護を定めていることを改めて指摘した。

5月31日、ラジャーイー・シャフル刑務所当局はサヴァードジャーニー氏に死刑を執行した。氏は反体制組織モジャーヘディーネ・ハルグの関係者であるとして「武力による体制破壊」(モハーレベ)の罪で死刑判決を受けていた。執行前、この事案に詳しい消息筋はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、当局は氏に対して彼が4月17日の攻撃の主犯格であると見なしており、判決が確定しているので刑を執行すると伝えたと述べた。

しかし氏の裁判と有罪判決には手続き、内容の両面でいくつもの不備があった。当局は、司法権が氏への死刑執行命令を見直し、取り消すことを定めた重要な改正刑法の規定を無視している。ヒューマン・ライツ・ウォッチはイラン政府に対し、サヴァードジャーニー氏への死刑執行停止を求めていた

「イラン刑務所当局は、明らかに政治的な容疑で有罪とされた囚人を虐待している。今回のエヴィーン刑務所での暴行事件は、この根深い問題のあらわれだ」と前出のストーク局長代理は述べる。「刑務所内の劣悪な人権侵害がつねづね問題になるあまり、かれらの投獄そのものがそもそも許されないことが忘れられてしまう。」

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