(モスクワ)-ノルウェーのテレビ局に所属するジャーナリスト2人が五輪報道のためソチ入りする途中で、ロシア南部の警察に拘禁されて嫌がらせを受けたうえ、投獄をほのめかして脅された。
ロシア関係当局は3日間にわたり、ノルウェーのTV2局関係者を再三拘禁して尋問。TV2局は2014ソチ冬季五輪の報道において公式に資格認定を受けた放送局だ。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ欧州・中央アジア局のジェーン・ブキャナン局長代理は、「ロシア政府によるTV2局関係者の扱いに、国際オリンピック委員会(以下IOC)は衝撃を受けたはずだ」と述べる。「関係当局による五輪報道関係者への嫌がらせについて、IOCは完全な説明を求める必要がある。そして、今後決して同様のことが起こらないという確約を取りつけるべきだ。」
ソチ五輪を目前にした今、ロシア関係当局は直ちに報道関係者への嫌がらせを停止し、報道の自由を確保すべきだ。
今年10月31日~11月2日にかけて、ソチに北接する黒海沿いのロシア連邦構成国、アディゲ共和国で報道活動をしていたTV2局レポーターのOystein Bogen氏とカメラマンのAage Aunes氏が、ロシアの交通警察によって6回にわたり職務質問を受けた。うち3回はその後に身柄も拘束されている。警察関係者はすべての職務質問・拘禁の際に両氏を厳しく追及。質問はソチやその他の地域での報道計画や取材協力者にとどまらず、個人の生活や学歴、信仰にまで及んだ。時に両氏がモスクワのノルウェー大使館に連絡を取ることさえ拒否。ある警察関係者は投獄をちらつかせてBogen氏を脅した。
Bogen氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに、局の調査と報道内容は五輪準備の異なる側面に批判的な光を当てることを目的としたものだったと語った。
前出のブキャナン局長代理は、「ロシア関係当局は、ソチ五輪や関連トピックについての批判的な報道をやめさせようと、ありとあらゆる手を打ったようだ」と指摘する。「何千というレポーターたちが五輪報道のために今後ソチ入りすることになるが、干渉・脅迫なき報道の確保は五輪開催国の中心をなす資格のひとつである。」
報道の自由の保障と保護はオリンピック憲章に高らかに謳われており、「オリンピック競技大会のメディアの報道」として第5章規則51条に明記されている。同章規則35条付属細則中でも、「オリンピック競技大会の(中略)メディアの活動は(中略)いかなる意味でも損なわれないものとする」と規定されている。
ゆえに、Bogen ・Aunes両氏に対するロシア警察の行為は、報道の自由の保障という五輪公約違反にほかならないものである。