(ニューヨーク)— 国際オリンピック委員会(IOC)は、2022年冬季五輪大会の開催国がその準備過程および開催期間中に、人権尊重の公約を確実に果たすようにすべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2022年冬季大会の招致をめざす中国カザフスタンは共に、人権状況が極めて悪い。IOCは7月31日に、マレーシアのクアラルンプールで行われる第128次IOC総会で、開催都市を決定する予定だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのグローバル・イニシアチブ部長ミンキー・ワーデンは、「中国とカザフスタンのどちらが2022年冬季五輪を開催することになろうとも、IOCは自らの新たな人権保護へのコミットメントを守れるかどうか、厳しいテストにさらされることになる」と指摘する。「IOCは開催国に対し、オリンピック憲章および人権原則に厳密に従うよう強く求め、さもなくば開催権利を失う、と明言すべきだ。」

中国およびカザフスタン当局は、政府に批判的なマスメディアや活動家に敵意をむき出しにして、表現・結社・集会の自由ほか基本的人権の保護を怠っている。差別や労働者の権利侵害、およびそれを防止しようとしない政府の無作為は、重大な懸念である。いずれの国も、人権侵害からの保護を求めるための、効果的で独立した司法メカニズムを有していない。

2005年以来ヒューマン・ライツ・ウォッチは、五輪ほか主な国際競技大会の開催国が、準備過程および開催期間中に行ってきた重大な人権侵害について調査・検証してきた。これらの国には中国ロシアアゼルバイジャン、イラン、カタールなどが含まれる。中国が2008年夏期五輪を開催したとき、当局は五輪施設の建設予定地から、何千人もの住民を適正な手続や補償もなしに強制立退きさせたうえ、報道の自由を尊重し、平和的な集会を認めるという義務を果たさなかった。北京大会の開催は同時に、政府による労働者の権利侵害に拍車をかけ、かつ、アカウンタビリティがないまま人権を侵害する治安部隊の動きを拡大させるきっかけともなった。

2014年12月、IOCは「オリンピック・アジェンダ2020」として知られる改革案を採択。開催都市が性的指向に基づいた差別を禁じ、労働者の権利ほか人権保護を確保するといった特定の義務が含まれている。また、オリンピック憲章は報道の自由を擁護し、オリンピック・ムーブメントの重要な要素として「人間の尊厳」を認定することを、すべての開催都市に義務づけるものだ。しかしながらIOCは、これら原則を開催国が尊重しているかをモニタリングするメカニズムを設置していない。

前出のワーデン部長は、「2022年冬季五輪大会でIOCは、自らの原則を体現できるか、正念場を迎える」と述べる。「どちらに決まろうとも、重大な人権侵害国が五輪大会を開催することに変わりはないのをIOCは知っている。それであれば、開催都市契約において中身のある権利保護条項を義務づけるべきだ。そして、五輪スタジアムの建設や、電気通信関連ほかの動きをモニタリングするのと同じく、権利保護の公約も厳守されているかしっかり見張るべきだろう。」

IOCは今年、開催地の選考過程の一部として、状況を評価するために両国を訪れた。しかし公式報告では、進行する重大な人権侵害を適切に特定しなかった。中国に関する報告では、IOC評価委員会が中国当局に対して報道の自由とインターネットへのアクセス問題について問うた結果、「書面で『制限はしない』約束を得た」とし、「メディア活動に関する明らかなリスクはない」と結論づけている。

しかし中国におけるインターネット検閲は世界でも目立っており、近時にも多くのジャーナリストが活用していた仮想プライベートネットワーク(VPN)でさえ遮断している。こうした政府の政策に対してIOC評価委員会が、独立した、または批判的な見解を提供できる中国国内の個人または団体と意見交換した形跡はみられない。そうした団体のひとつ、反差別NGO「北京益仁平」は当局からの再三にわたる嫌がらせを受けており、開催候補地の評価期間中は、代表たちが身柄を拘束されていた。同団体の活動は、差別禁止の公約を政府が遵守しているかモニタリングする上で大変重要である。それにも関わらず、IOCは同団体と面会をしないばかりか、政府による同団体への敵意に関し、公式に懸念を表明することもなかった。

前出のワーデン部長は、「私たちはすでに一度、中国における五輪大会で人権侵害が悪化するのを目撃している。更に、2015年の今の環境は、2008年の時よりもひときわ深刻だ」と述べる。

カザフスタンについても、評価委員会の報告書は、労働者の権利保護、報道の自由、集会の自由をめぐる重大なリスクの潜在性に言及しなかった。報告書は、政府が「デモ集会の権利や五輪大会に関しての報道の自由を保障すること、また大会の準備過程におけるインターネットの制限や労働者の権利の侵害をしないこと、立退きをさせないことを確約」したとしている。実際にはカザフ政府がこれら諸権利を十分に保護していない証拠が広く示されているにも関わらず、報告書では、政府の約束内容を詳しく説明していない。ここ数年、政府は多数の独立系報道機関を閉鎖し、平和的なストライキに介入。労働者を代表する活動家たちを投獄して、日常的に平和的なデモ集会を解散させてきた。

今年2月中旬に評価委員会が訪問した直後、カザフ議会は差別的な反レズビアン・ゲイ・バイシェクシャル・トランスジェンダー(LGBT)法案を通過させ、署名のためヌルスルタン・ナザルバエフ大統領に送った。これは明らかに五輪の差別禁止条項に矛盾する。カザフ憲法制定評議会がのちに、同法は違憲的に曖昧との判決を下したが、ある議員は今年後半中にも改正案を提出する考えを示している。

ワーデン部長は、「カザフスタンは、反LGBT法を可決するためのあらゆる努力や、労働者への人権侵害、または報道の自由や平和的なデモへの介入は、全く容認されるものではないことを知る必要がある」と述べる。

IOCは2022年開催都市契約に、開催地が大会準備過程や開催期間中において、人権を確実に尊重・保護する公約を含むこと、そしてさもなくば制裁措置を発動することを確保すべきだ。また、組織内に人権専門チームを確立するのみならず、独立した人権モニタリング機関を設置し、開催都市契約にある人権上の義務の遂行状況を定期的に報告させるべきだ。

ワーデン部長は、「すでに人権状況が悪い国に五輪の開催を許してしまうと、準備過程や関連イベントにおける人権侵害悪化にあっと言う間につながり、結果として五輪大会を台無しにしてしまうことは、これまでの多くの経験が証明している」と指摘する。「IOCは人権保護の面でも最高の大会を実現し、開催国にも同様に振舞うよう義務づけるための明らかな好機を、2022年大会をめぐり手にしている。」

背景の情報は以下をご覧下さい:

Background on China and Kazakhstan’s Bids
China is an authoritarian state that systematically curbs fundamental rights, including freedom of expression, association, assembly, and religion, when their exercise is perceived to threaten one-party rule. Since the leadership of President Xi Jinping assumed power in March 2013, authorities have unleashed an extraordinary assault on basic human rights and their defenders with a ferocity unseen in recent years – an alarming sign given that the current leadership will likely remain in power through 2023. It has also significantly narrowed space for the press and the Internet, further limiting opportunities for citizens to press for much-needed reforms.

Rather than embrace lawyers, writers, and whistleblowers as allies to deal effectively with rising social unrest, the government is hostile to criticism, targeting activists and their family members for harassment, arbitrary detention, legally baseless imprisonment, and torture. In recent months it has detained hundreds of activists and human rights lawyers, and shuttered a number of independent groups, including groups that work on discrimination and the rights of people with disabilities. At least two well-known activists, Cao Shunli and Tenzin Delek Rinpoche, have died since early 2014 after being denied adequate medical attention in detention, and dozens of others are known to be gravely ill.

Kazakhstan, the largest country in Central Asia and among the 20 largest oil producers in the world, has a deeply problematic human rights record. In recent years, the government has shut down many critical opposition and independent media outlets. The authorities impose tight controls over public protests, with police regularly breaking up peaceful protests as small as a few people, or even one person. The government is hostile to workers’ rights. A recent law on trade unions drafted allegedly to better regulate employee-employer relations increased restrictions on labor organizing, while additions to the criminal code further limit the right to strike.

In December 2011, police violently responded to clashes at the site of an extended labor strike by workers in the oil and gas sector, killing 12 people. Authorities then jailed several labor activists and an outspoken opposition leader, who was sentenced to seven-and-a-half years in prison on overbroad criminal charges following a trial that did not meet international fair trial standards. Lesbian, gay, bisexual, and transgender (LGBT) people in Kazakhstan face hostility and abuse, lack of legal protections, and inadequate official responses and support mechanisms such as police and social services.

How Mega Sporting Events Can Fuel Rights Abuses
Ahead of the 2014 Winter Olympics in Sochi, Russia, Human Rights Watch documented pervasive exploitation of migrant workers on Olympic sites, forced evictions of families to make way for construction of these sites, harassment and jailing of environmental and other activists, and the stifling of journalists’ efforts to document these abuses. A few months before hosting the games, Russia passed a discriminatory “anti-LGBT propaganda law” that helped fuel violence and abuse against LGBT people.

In the months leading up to the inaugural European Games in Baku, Azerbaijan, the government undertook a sweeping crackdown on independent journalists and human rights activists, prosecuting dozens on serious criminal charges. They remain behind bars. Only in July did the government initiate prosecutions against several who have been in custody for nearly a year. Immediately ahead of the games the government denied numerous leading international journalists access to Baku to cover the games, and faced no repercussions, despite clear guarantees to ensure media freedom during the games and repeated government “assurances” that journalists would be allowed to report freely on the European Games and other issues.