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香港:活動家への根拠なき有罪判決、破棄を

中国政府による集団裁判、民主化運動への激しい攻撃の表れ

2021年1月6日、香港警察は53人の民主派政治家を「転覆工作」の容疑で逮捕した。政治家らは2020年7月、当時予定されていた立法会選挙に向けた民主派候補者を調整するための非公式世論調査を組織または参加したことを理由に逮捕された。 (c) 2021 Lam Chun-tung/Initium 

(ニューヨーク)香港政府は、著名な民主派活動家に対する根拠のない香港特別行政区国家安全維持法(香港国安法)違反での有罪判決を直ちに破棄すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

2024年5月30日、中央政府の統制下にある香港行政長官が選んだ判事3人が、活動家と元議員計14人に対し、過酷な香港国安法に基づく有罪判決を下した。2人は無罪となった。これに先立ち、被告31人が寛大な判決を期待して有罪を認めた。裁判所は判決を後日発表する予定である。最高刑は終身刑だ。

「香港での集団裁判は、中央政府が基本的人権と民主的政治プロセスを歯牙にもかけないことをはっきり示している」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国局長代理である王松蓮(マヤ・ワン)は述べた。「香港政府はこれらの活動家への有罪判決を取り消すとともに、その法的義務を果たし、政府を自由に選ぶ権利を含めた香港市民の諸権利を擁護すべきである」。

香港最大の香港国安法違反事件で、当局は複数の世代にまたがる民主活動家47人を香港国安法第22条「国家政権転覆陰謀」罪で起訴した。被告は元議員、抗議運動指導者、労働組合幹部、学者などで、年齢も26歳~68歳と幅広い。多くが2021年1月の逮捕から3年以上が経過したいまなお未決勾留状態だ。

被告らは、当時2020年9月に予定されていた立法会選挙の民主派候補者を選ぶための2020年7月の予備選挙の実施を手伝ったり、候補者として立候補したりした。民主派は立法会で過半数を占めることで、北京の中央政府と香港政府に対して、抗議運動をする人びとの要求に応え、中央政府が長年約束し、香港の事実上の憲法である香港特別行政区基本法(香港基本法)が保証する香港市民への普通選挙権付与を行うよう迫った。香港市民60万人以上が政府の脅しをものともせずにこの予備選挙に参加した。

勾留や裁判手続きは多くの点でデュープロセス(法の適正手続き)の国際基準に違反している。例えば長期に及ぶ未決勾留や陪審裁判の拒否が挙げられる。香港当局は、オーストラリア国籍を持つゴードン・グ・チンハン(呉政亨)氏に対して、国際法で義務付けられている領事の接見を何度も拒んでいる。

裁判所は5月30日、被告の計画は「違法な手段」によって政府の「職務と機能の遂行に重大な妨害、混乱、または弱体化をもたらす」ものであり「国家政権転覆」にあたるとの判断を示した。判決は「違法な手段」は犯罪行為に限定されないとしたが、弁護団はこの解釈では「国家政権転覆」の定義があまりに広く曖昧なものになってしまうと主張していた。

検察は被告のうち5人を「主要組織者」とし、終身刑を含む厳罰もありうるとほのめかした。このうち、唯一無罪を主張した前出の活動家の呉政亨(Ng Ching-hang)氏には有罪判決が下された。元法学教授の戴耀廷(Benny Tai)氏はすでに罪を認めた。残りの3人、元立法会議員の区諾軒(Au Nok-hin)氏、元区議会議員の趙家賢(Chiu Ka-yin)氏と鍾錦麟(Chung Kam-lun)氏は減刑と引き換えに検察側証人となった。

有罪判決を受けた他の13人の被告は、元立法会議員の黃碧雲(Helena Wong)氏、林卓廷(Lam Cheuk-ting)氏、梁國雄(Leung Kwok-hung “Long Hair”)氏、陳志全(Raymond Chan Chi-chuen)氏、元区議会議員の鄭達鴻(Cheng Tat-hung)氏、楊雪盈(Clarisse Yeung Suet-ying)氏、彭卓棋(Michael Pang Cheuk-kei)氏、何啟明(Kalvin Ho Kai-ming)氏、施徳来(Sze Tak-loy)氏、柯耀林(Ricky Or Yiu-lam)氏、ジャーナリストの何桂藍(Gwyneth Ho Kwai-lam)氏、活動家の鄒家成(Owen Chow Ka-shing)氏、看護師で労働組合幹部の余慧明(Winnie Yu Wai-ming)氏である。

裁判所は元地区評議会議員の劉偉聰(Lawrence Lau Wai-chung)氏と李予信(Lee Yue-shun)氏を無罪とした。検察は控訴の意向だ。

6月25日に情状審理が始まり、量刑は後日言い渡される。香港国安法第22条では「主要な違反者」を懲役10年から終身刑と定める。「積極参加者」には懲役3年~10年が、「その他参加者」には3年未満の懲役、または「短期の拘禁または制限」が科せられる。

2020年6月30日に中国政府が香港に押しつけた香港国安法の定める国家政権転覆罪などの犯罪は、適用範囲が広すぎ、運用が恣意的だとヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。香港基本法で定められ、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)で保護される基本的人権の平和的行使もその対象となっている。自由権規約の内容は、香港基本法を経由して香港の法的枠組みに統合され、1991年の香港権利章典条例(香港人権法案条例)で具体的に示されている。

香港国安法の施行以来、中国政府と香港政府は、香港の市民的自由を消し去るための措置を矢継ぎ早に講じてきた。民主派を逮捕し、独立系メディア、労働組合、政党を強引に解散させ、準民主的な立法会については、民主派議員の資格を剥奪し、選挙制度を変え、中国共産党に忠誠を誓う者だけが当選できるようにすることを通じて、政府の意向を追認するだけの機関に変えてしまったのである。

香港の自由が急速に悪化していることについて、一部の国や国連は懸念を表明している。しかし、具体的な行動を起こしている政府は皆無に近い。香港国安法の施行後に中国と香港の政府高官を対象とする制裁措置を取ったのは唯一米国政府だ。人権制裁制度を持つ英国、欧州連合、オーストラリアは、人権侵害に関与する中国と香港の政府高官をただちに制裁対象とすべきだとヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「中国政府は香港市民の民主主義への願いを打ち砕くだけでなく、自分たちは断固として姿勢を変えないというメッセージを世界に対して発しようとしている」と、前出の王局長代理は述べた。「世界各国の政府は、民主主義と人権を求める闘いの最前線に毅然と立ち続ける香港市民を支援すべきである」。

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