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バングラデシュ:NGOを規制する委員会設立をやめよ

市民社会統制のため 政府による見せかけ

(ニューヨーク)-バングラデシュ政府が最近公表した、非政府組織(NGO)を規制する委員会の設立は、煩雑な手続きを増やし、NGOの重要な役割である監視機能を阻害するものである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。国際的な援助提供国・機関は、アワミ連盟政権に対し、同国の活発な市民社会セクターが政府からの不要な干渉なしに活動を続けられることを保障するよう要請すべきである。

バングラデシュ政府は2012年8月25日、NGOの多くが「テロ活動への資金援助と反国家的活動」に加担していると主張、その活動を監視する委員会を設立すると述べた。同時に、政府は約6千のNGOの登録を「反国家」活動への関与を理由に抹消し、更に4千団体の登録資格を検証中であるとした。

「アワミ連盟は常々、バングラデシュの民主主義と多元主義を守れるのは自分たちだけだと主張しているが、NGOの活動を規制しようとする試みは、その主張に深刻な疑念を抱かせるものである」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは述べる。「もし過去の政権が同じ手法でNGO団体の規制を試みていたならば、アワミ連盟は、それを表現と結社の自由を抑圧する動きである、と非難していたはずだ。」

バングラデシュには、テロ活動やNGOなどによる違法行為に対処する法律が既に存在する、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘する。刑法、テロ対策法、税法、そしてNGO活動に関する既存の規則により、NGO団体や所属する個人による違法行為に対処する体制が整っている。

「バングラデシュ政府は、『多くの』NGOに起因するという重大なテロの脅威はおろか、現行刑法が今後発生し得る問題の対処に不十分である理由も、何一つとして明らかにしていない。これは市民社会を政治力で支配するための偽装行為そのものである」と前出のアダムスは批判する。

NGOはバングラデシュにおいて、貧困削減、経済開発、医療保健、教育、人権保護などの分野で極めて重要な役割を果たしている。政府の推計によれば、5万近くのNGO団体が同国内で活動している。

バングラデシュで活動中のNGOは既に、事業の登録・実施のために必要となる多数の承認申請を含め、過度に煩雑で介入の多い規制プロセスを課されている。これらのNGOは、同国の内務省、警察、国家安全情報局による不透明な団体登録承認を含め、「非営利法制のための国際センター」(ICNL)が「遅延と障害によって複雑化されたプロセス」と呼ぶ審査を乗り越えなければならない。

同国で活動中のNGOは、承認プロセスの様々な段階で、深刻な遅延と恣意的な不承認に遭っていると述べている。バングラデシュ首相府のNGO局は、団体登録申請や事業提案を恣意的な判断で頻繁に拒否し、その判断には明らかに政治的理由が絡んでいることもある。NGO局のみならず様々な省庁や地方自治体において、承認を得るために賄賂を要求されるなど、汚職が大きな問題である、と数々のNGOがヒューマン・ライツ・ウォッチに報告した。

バングラデシュ政府はまた、NGOに対する外国からの寄付の受け取りを規制する新たな法律を公表する寸前である、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。この新法は、外国の援助に一部でも依拠する事業すべてに対し、政府による何段階もの事前承認を義務付けるものである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまでにも、インド外国貢献規制法を含む、慈善活動への外国からの寄付に不必要な負担を課す各国の法律や法案を批判してきた。今回のバングラデシュにおける法案もこれらに酷似するものである。

「バングラデシュ政府は、NGOセクターを寸分に至るまで統制するような取り組みを強化しているが、それは市民社会の活動を阻害するだけで、決して活発化させるものではない」とアダムスは述べる。「NGOの活動につきまとう委員会を設立するのではなく、社会で必要とされている事業から資金を搾取している、NGO局や他の政府機関でまん延すると言われる汚職を、しっかりと調査する委員会を立ち上げるべきである。」 

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