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イラン:弁護士と家族へ続く脅迫や嫌がらせ

著名な人権弁護士であるモスタファーイー氏の身柄拘束に失敗した当局は、妻と義理の兄弟を身代わりに

(ニューヨーク) - イラン当局は、著名弁護士の妻と義理の兄弟を直ちに起訴するか、さもなければ釈放すべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。当局はモハンマド・モスタファーイー弁護士への嫌がらせや脅迫を止めるべきだ。氏はこれまでも未成年や恵まれない人びとの弁護を引き受けており、死刑宣告事件の弁護も多数引き受けている。

モスタファーイー弁護士は2010年7月24日から消息を絶った。この日、氏は当局から尋問され、その後釈放された。同日遅く、治安当局者が逮捕状を手に氏の事務所に向かったと、複数のペルシア語メディアが報道している。しかし、当局は、氏本人の身柄拘束はできなかった。そこで、代わりに妻のフェレシュテフ・ハーリミ氏と、義理の兄弟のファルハッド・ハーリミ氏を事務所近くで逮捕。2人とも、起訴・立件のないままに現在も拘束され続けている。

「当局は、理由も告げずに2人を逮捕した」とヒューマン・ライツ・ウォッチ中東局長サラ・リー・ウィットソンは述べる。「この逮捕劇がイラン政府による人質事件でないというなら、イラン政府には、その理由を示す全面的な責任がある。」

7月24日、モスタファーイー弁護士は、自分のブログへの投稿で、エヴィーン(エヴィン)刑務所の一般検察庁から、尋問のため出頭するようにと命じられたと記した。尋問の大半は、犯行時未成年で犯したとされる罪で死刑判決を受けた依頼人への金銭的援助の出所を尋ねるものだったという。昨年2009年、モスタファーイー弁護士は、自らの依頼人である未成年時の犯罪で死刑判決を受けた若い死刑囚たちのために、彼ら/彼女らの起こした事件の被害者家族への賠償金支払を支援する基金を立ち上げた。遺族が賠償金を受け取れば、被告人を許し死刑執行が放棄されるからだ(訳注:イラン刑法にこうした規定がある)。

この投稿の数時間後に、モスタファーイー弁護士は次の内容を投稿した。「今日、一般検察庁第二部は尋問後に再び連絡をよこして、また出頭を要求してきた。今度はどういう問題なのか不明だが、ともかく明日またエヴィーン刑務所まで行くことになった。今日逮捕される可能性もあるが、はっきりしない。」 いまのところ、これが氏による最後の投稿となっている。

イラン司法権はムスタファーイー弁護士に逮捕状を出した理由を明らかにしていない。

モスタファーイー弁護士は、イランで最も著名な人権弁護士の1人。過去何年にもわたり、彼は世間の注目を集める事案をいくつも担当した。その一つに、2児の母親であるサキネ・モハンマディー・アーシュティヤーニー(43)の事件がある。彼女は、7月初めに姦通罪で有罪となり投石による死刑判決を下された。国際社会からの圧力や怒りの声により、イラン司法権は投石による死刑は行わないとしたが、死刑判決自体を取り消してはいない。

モスタファーイー弁護士は、殺人や強姦などの犯罪で死刑判決を受けた未成年犯罪者の事案も数多く手がけており、未成年時の犯罪への死刑判決の廃止を訴えるイラン国内の有力な論者だ。ここ数年、モスタファーイー弁護士は、死刑囚房の未成年受刑者の悲惨な状況を示す重要な情報や、収容者からの心を打つ証言を明らかにしてきた。

2009年、モスタファーイー弁護士は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対しデラーラー・ダーラービーの最期について証言。当局は、ラシュト刑務所で氏を極秘裏に処刑した。容疑は17歳の時に行ったとされる殺人だった。イラン政府は2009年に、氏を含めて少なくとも4人の未成年を処刑した。

モスタファーイー弁護士などの著名な人権弁護士が、イラン治安部隊や司法権による脅迫や身柄拘束の標的となるのは今に始まったことではない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、著名な人権弁護士や家族に対し、イラン政府は、これまでも長い間、嫌がらせや脅迫を行ってきており、こうした実態はパターン化しているといえる。例えばノーベル平和賞受賞者のシリン・エバディ氏の妹や夫は、過去何年もの間、嫌がらせや尋問の対象となっている。イラン政府当局は、2008年12月、エバディ氏が代表を務める人権擁護協会(HRDC)を閉鎖した。

選挙の不正が叫ばれている2009年6月12日の大統領選挙以来、イラン当局は多数の人権弁護士たち(モハンマド・アリー・ダードハーフ弁護士、アブドル・ファッターフ・ソルターニー弁護士、モハンマド・セイフザーデ弁護士、ハーディー・エスマーイールザーデ弁護士、マーニジェフ・モハンマディー弁護士、カーンビース・ノールージー弁護士、シャーディー・サドル弁護士、モハンマド・オリャーイーファルド弁護士)の身柄を拘束したり、嫌がらせを行ったりしてきている。司法権は、オリャーイーファルド弁護士を「反体制プロパガンダ」の罪で有罪とし、今年2月、1年の刑を宣告。オリャーイーファルド弁護士が、2009年10月12日に刑務所当局によって処刑された依頼人ベフヌード・ショジャーイー少年について外国メディアにコメントしてまもなくのことであった。オリャーイーファルド弁護士は、現在、刑を受刑している最中。当局は、昨年の大統領選後、ムスターファーイー弁護士を一時身柄拘束したが、当時はまもなく釈放した。

「イラン政府の人権弁護士に対する攻撃は、単なる報復ではない。外部世界に、貴重な情報が流れるのを止めるという狙いがあることがますますはっきりしてきた」と前出のウィットソンは述べる。「国際社会は、モスタファーイー弁護士をはじめとする人権弁護士を支援し、弁護士たちが、国家の脅迫や干渉を受けずに仕事を続ける権利を擁護すべきである。」

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