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米国:公開されたCIA報告書は、拷問と虐待に対する調査の必要性を示す

司法長官は包括的な調査を

(ニューヨーク)-米国司法省が、ブッシュ前政権下の拷問手法に関する米中央情報局(CIA)監察官の調査報告書の公開に踏み切った。この報告書は、9/11後の被拘禁者の虐待に対し、より包括的な刑事捜査を行なう必要性を明らかにするものだ。本日ヒューマン・ライツ・ウォッチはこのように述べた。長い間非公開とされてきたこの報告書は、エリック・ホルダー司法長官が、9/11後の尋問虐待に対する予備捜査を行う旨発表したことから、公開された。

CIA監察官のこの報告書(04年作成)は、アメリカ国内法及び国際法で拷問と規定される様々な虐待をCIAが行なってきたことを詳述。この報告書は、CIA要員らが、秘密拘禁した囚人に対し処刑を行なうと錯覚させる虐待(擬似処刑)や、目の前に銃や電気ドリルをつきつけて脅したり、拘束されている別の人の子どもを殺すと脅迫したり、様々な拷問が行なわれたことを明らかにしている。

「このCIA監察官の報告書は、CIAが重大な犯罪を犯したことを明らかにする公式な証拠となる」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのテロ・対テロ対策局の局長であるジョアン・マリナーは述べた。「全ての犯罪行為に対する完全な捜査を行なうべきだ。そして、犯罪行為を命じた者に対する十分な捜査も必要だ。」

ニュース報道によれば、ホルダー司法長官が監察官報告書の予備捜査の決定をした裏には、報告書に記載されている虐待に嫌悪感を抱いたことが強く影響していると言われている。

「司法長官がこれらの犯罪に対して予備捜査を開始したことは、朗報だ。しかし、拷問を許可した組織の高官たちも捜査対象に含まれていることが絶対に必要だ」と、マリナーは述べた。「たとえ末端のCIA要員たちが、いわゆる『許可のされていない』尋問手法を利用した場合でも、実は、CIA高官が、こうした尋問手法でも使ってよいとした文書や意思に沿って行なわれた場合が考えうる。」

予備捜査を行なうと発表した際、ホルダー司法長官は司法省の当時の法律顧問たちの指導の範囲内の行動を善意でとっていたに過ぎない者に対しては、訴追はしないとの方針を明らかにした。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ブッシュ前政権下の司法省が「許可した」違法な虐待的尋問手法と、CIA監察官報告書に詳述される「未許可の」違法な尋問手法の間には、重要な相違点はないことを強調。いずれの尋問手法も、米国の国内法で、長い間、拷問として訴追の対象とされてきた手法に他ならない。

特に、CIA監察官の報告書に記されている疑似処刑は、「水責め」と実質的に似通っている。「水責め」は、ブッシュ前政権下の司法省によって、適法な範疇と特別に認可されていた手法だ。「水責め」を受けた被拘禁者は、銃での処刑での恐怖と同様、死が目の前に差し迫っていると感じる。


こうした懸念から、CIA全体に対する広範な責任を負う組織の高官も捜査対象するべきである。指令の範囲を踏み外した現場調査官だけを捜査しても、捜査の信頼性を欠くことになる、とヒューマン・ライツ・ウォッチは警告した。そうした不十分な捜査では、ブッシュ前政権の司法省の拷問を許可したメモランダムを正当化することになる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、9/11後に行なわれた虐待について、超党派の包括的な公式調査を行なうよう求めた。議会下の調査委員会や軍の報告書、司法省調査などがこれまでに行なわれたものの、虐待に関する包括的な公式の調査は行なわれていない。これまでに行なわれた調査は、いずれも、政府からの独立性に欠くか、ないしは、調査に必要な文書や供述証拠が入手できないかのいずれであった。

現在に至るまで、被拘禁者虐待を行なった人びとに対する米国による責任追及は、ほとんど行なわれておらず、極めて遺憾な実態にある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、600人以上の米国人関係者が関与する約350の虐待事件に関して、情報を収集。大規模かつ組織的な虐待が行なわれていたにもかかわらず、CIA高官は誰一人として責任も問われていない。米軍要員のなかでも、処罰された者は少数にとどまる。

監察官の報告書は、CIAが行った虐待に関するその他の報告書と共に公開された。虐待的な尋問を許可する内容の2007年の司法省メモランダム(覚書)及び、CIA尋問調査の価値及び効果を評価したメモランダムも一緒に公開された。

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