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中国総領事館近くで中国の王毅外相の訪問に抗議するウイグル人デモ参加者、トルコ・イスタンブール、2023年7月26日。 © 2023 Dilara Senkaya/Reuters

私が故郷である新疆のクムル市を最後に訪れたのは2016年6月、海外で学ぶ若いウイグル人留学生だった頃だ。その帰郷が自分にとって故郷への最後の旅、祖父母との最後の食事、父との最後の抱擁、居場所を感じられた最後の瞬間になるとは、当時の私は知らなかった。

その後、習近平政権下の中国政府は、新疆ウイグル自治区において、最大100万人に上るウイグル人やその他のトルコ系イスラム教徒を恣意的に抑留・拘禁する大規模なキャンペーンを開始した。

中国当局は拘束者を、公式には「職業訓練教育センター」と称す政治的な再教育キャンプに抑留すると共に、適正手続きを経ることなく刑務所に拘禁した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチなどは2016年以降、中国当局が行ってきた拷問、強制失踪、広範かつ組織的な行動・通信の監視文化的・宗教的な迫害家族の強制的な引離し、及び強制労働などについて取りまとめてきている。

国連人権高等弁務官事務所は2022年8月に、これらの人権侵害は「国際犯罪、特に人道に対する罪に該当する可能性がある」という、画期的な報告書を公表し、中国政府に同自治区で「自由を恣意的に奪われた全ての個人を解放する措置を速やかに講じるよう」、強く求めた。

それから3年が経過した中、中国政府は報告書の調査結果と勧告を、「違法かつ無効」であるとして拒否し続けるばかりか、同自治区における「正常」感の醸成を狙うプロパガンダを強化している。

しかしながら、国連人権高等弁務官ヴォルカー・ターク氏は昨年、新疆では「多くの問題ある法律と政策」が実施されたままである、と述べている

長期の懲役刑を受けた推計50万人が今も尚、拘禁されており、その中には著名なウイグル人の知識人、文化的な影響力を持つ者宗教指導者が含まれている。

私自身を含む海外在住の多くのウイグル人は、依然として家族との連絡がほとんど、あるいは全く取れていない。中国当局によって拘束や強制失踪させられた愛する人々がまだ生きているのか分からない人もいる。

弾圧が始まった当初以降、友人と親族は私をウィーチャット(WeChat)の連絡先から削除し、電話にも出なくなった。私が国外で生活しているため、彼らの安全に対する「脅威」になってしまったからだ。

2018年6月には、WeChatに登録していた最後の人物、ビジネスマンで元公務員の父、メメット・ヤコップとも連絡が取れなくなった。

父が故郷の町にある抑留キャンプにいることを突き止めるのに2年かかった。中国当局は父を、国外にいる親族を持つ「信頼できない」人物だとみなし、拘束していたのだ。そこから父が現在、自治区の都市ウルムチ近くの刑務所で、懲役16年の刑に服していることが分かるのにも、更に2年かかった。

私はいまだに父の正確な所在地、健康状態や有罪判決の理由を知らない。

中国政府は、愛する人のために積極的に意見を述べる在外ウイグル人に「嘘つき」というレッテルを張り、国境を越えた弾圧として知られる脅迫と報復の一形態を用いて沈黙させようとしている。

国境を越えた弾圧とプロパガンダを組み合わせることは、中国政府による移動制限から明らかである。慎重に選択された極めて数少ないウイグル人のみ、新疆への出入りは許されず、家族との再会を切望しているウイグル人も厳しく審査されている。

在外ウイグル人を管理するため、当局者はウイグル人活動家に関する情報を収集するよう新疆を訪れるウイグル人に指示し、中国共産党の対新疆政策を褒めるよう圧力を掛ける。

新疆への政府によるプロパガンダ・ツアーに参加したことがあるウイグル人は家族に会える機会がまたあるか分からなかったからツアーに参加した」と語った。

中国政府は、同自治区の「正常性」を示す物語を推進するために、外国の外交官やメディアだけでなく一部のウイグル人に向けたプロパガンダ・ツアーを主催する一方、オブザーバーや国連人権問題専門家の独立した、自由な新疆への立入を阻んできた

今年6月に初めてジュネーブの国連本部を尋ねた際、私は中国政府の大きな影響力を感じた。何人かの外交官は私との会談を、プライベートでも拒否した。中国政府による監視を避けるために、本部の外で会うよう要請した活動家も何人かいた。

ある国連の専門家は、「故郷には誰も残して来てはいけませんよ」、と淡々と語った。国連を訪問して中国における人権状況を議論することが、新疆に今尚いる私の親族にもたらす可能性がある結果を認識していたのだ。

中国政府の在外ウイグル人批判者を沈黙させようとする試みは、国連及び関係各国政府による積極的な意見表明の重要性をさらに高めている。

一部の外交官は、国連人権理事会の9月会期中に画期的な国連報告書の発表から3周年を迎えるにあたり、新疆での人権侵害について公式な意見表明をする意義はまだあるのかと私に尋ねた。

その答えはイエスだ。

この記念日の前に、国連人権高等弁務官は新疆に関する包括的な最新情報を公表し、人権理事会に概要を説明するべきだ。 

各国政府は中国に、恣意的に抑留・拘禁している全ての人々を釈放し、人道に対する犯罪の責任を追及するよう、高官に対する制裁も含め、あらゆる手段を使って圧力を掛けなければならない。

私は故郷に愛する人たちがいる。その中には祖父母を含め、別れを告げることもできないまま亡くなった人もいる。

これは私自身の物語だけの問題ではない。不当に拘束された全ての人々が無条件で解放され、基本的権利を保障されるまで、私は中国政府による弾圧と戦い続けるつもりだ。国連および関係各国政府も同様に行動すべきだ。

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