2021年に策定された「子どもに対する暴力撲滅我が国行動計画(NAP)」の初の改定が予定されており、EVAC日本フォーラムのメンバーであるヒューマン・ライツ・ウォッチも以下の改定案を政府に提出しました。
子どもに対する暴力撲滅我が国行動計画(NAP)改定案
II 優先して取り組むべき課題
(NAPへの追記提案)
子どもに対する暴力の統計に、スポーツにおける暴力・暴言・ハラスメント等の不適切行為の例を追記することが必要。Ⅱ 優先して取り組むべき課題の2パラグラフ目に、「JSPO(公益財団法人日本スポーツ協会)の『スポーツにおける暴力行為等相談窓口』への相談件数が2024年度は過去最多の536件あり、被害者の約8割が高校生以下で、うち小学生は約5割」という旨の記載を追記する。
IV 各課題における現状と行動計画
1虐待
(NAPへの追記提案)
「具体的な取組」(3) 児童虐待を受けた児童の保護、家族再統合支援及び自立支援の項目において家庭養育優先の原則が紹介されているが、現実には、2016年児童福祉法改正から5年以上経過した2023年度末統計でも、国は乳幼児は75%以上、学童期以降は50%以上の里親等委託率を目標として掲げているにも拘わらず、里親等委託率は全年齢平均で25.1%に過ぎず、国連・児童の代替的養育に関する指針にて「幼い児童、特に3歳未満の児童の代替的養護は家庭を基本とした環境で提供されるべきである」とされる3歳未満児についても26.9%に過ぎない。現状の書きぶりでは、乳幼児を含めた大部分の子どもたちが今も施設収容されている実情が記載されていないことから、社会的養育が原則として家庭で行われていると誤認させかねない記載ぶりとなっている。そこで、正確性を期すとともに現状の改善に対するコミットメントを示すため、家庭養育優先の原則の説明の後に、「一方、2023年度末においても、里親等委託率は25.1%であり、3歳未満児についても26.9%に過ぎないので、『家庭養育優先の原則』を未就学児、なかでも3歳未満児に対して徹底するために子ども家庭庁は、児童福祉法改正を含めあらゆる措置を取る」旨を追記する。
4体罰
(NAPへの追記提案)
2025年のスポーツ基本法改正により、国及び地方公共団体が措置を講じなければならないとされたことを受けて、追記する必要。(1)スポーツにおける暴力に、「2025年6月に、スポーツ基本法が改正され、国および地方公共団体に対して、暴力、性的な言動、指導者などの優越的な関係を背景とした言動などに、措置を講じなければならないとされた。スポーツ庁と文部科学省は、暴力等の禁止、スポーツをする人の権利の明確化、指導者の研修と資格の義務化、大人の通報義務化、スポーツにおける体罰のデータ収集等を確保するため、法改正や新法の制定を含めた具体的な措置を導入していく」旨の記載を追記する。
上記の国の措置の一環として、スポーツにおける子どもの虐待に対応する独立した行政機関として、「日本セーフスポーツ・センター」(仮称)を設置することを追記する必要。「国が、日本のスポーツにおける子どもの虐待への対処を任務とする独立した行政機関として『日本セーフスポーツ・センター』(仮称)を設置し、虐待の申立てを報告・追跡し、被害を訴えた子どもと親への救済を行い、虐待を行った指導者を特定して指導者ライセンスを取り消すことなどの権限を与えるための、具体的な検討を開始する」旨の記載を追記する。