国連人権高等弁務官事務所は先週、世界各国で深刻化している「国境を越えた弾圧」の認識と理解を深めるために、同問題に関して初めてのガイダンスペーパーを公表した。
国境を越えた弾圧とは、国家権力が国境を超越して体制に対して批判的な人々を封じ込めることを指す。ネット上の嫌がらせ、監視、強制失踪、親族への報復、さらに殺害を含む身体的暴力など、様々な形をとることがある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは昨年、この現象が国際社会において軽視、また見過ごされている実態を明らかにした。
国連のガイダンスペーパーは、国境を越えた弾圧の被害者が保護や救済を求める際、多くの障壁に直面すると指摘している。また、一部の受け入れ国では、適切な保護措置を確保できていない現状があるほか、避難を求めている人々に対し、外国政府の弾圧を積極的に助長している事例も明らかにした。
国連人権高等弁務官事務所、国連の人権専門家、そして国連加盟国はこのような慣習に対して強い懸念を表明している。
国連の意見と表現の自由に関する特別報告者が2024年に、ジャーナリストに対する国境を越えた弾圧に関する画期的な報告書を発表した。この報告書を受け、世界各地域の数十か国が国境を超えた弾圧を非難し、標的とされた人々の支援と加害者の責任追及を共同声明で表明した。
国連人権高等弁務官は年初の国際情勢報告会で、世界中で国境を越えた弾圧において「極めて深刻な事例」が増加していることに懸念を示した。また、各国に対してこの行いに対する「ゼロ・トレランス政策」の採用をするよう呼びかけた。
国連の新たなガイダンスは、各国に対して人権を尊重し、保護する責任を再認識し、国境を越えた弾圧の実行、助長、容認を控えるよう強く指摘した。また、被害者への救済や補償の仕組みの整備、スパイウェアなどの監視ツールの輸出に対するモラトリアムなどの導入を含め、人権保護と説明責任に関する具体的な勧告を提示した。
さらに、各国政府は、国境を越えた弾圧により危険にさらされている人々に徹底した保護を提供し、国際的に連携した対応を確保するために政府間の協力を深めるべきだ。
各国は現在会期中である国連人権理事会において、審議中の複数の関連決議、特にジャーナリストの保護や市民社会の活動空間の確保に関する決議の中で、国境を越えた弾圧について言及する場がある。この機会は国連人権高等弁務官事務所や人権専門家に示された懸念を認識し、問題に対する理解を深め、予防と救済に向けた国際的な意識喚起につながる。
国境を越えた弾圧の深刻な影響を再認識し、人権を侵害された人々の保護と正義の実現に向けて、今こそ国際的な協力が必要不可欠である。