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カンボジア:元野党党首に偽りの容疑で有罪宣告

ケム・ソカ氏に対する「反逆罪」の訴えを取り消すべき

Cambodia’s opposition leader Kem Sokha talks to the media at his home before leaving for a court hearing in Phnom Penh, January 16, 2020. © 2020 AP Photo/Heng Sinith

(バンコク)プノンペン市裁判所は2023年3月3日、カンボジアの元野党党首、ケム・ソカ氏に対し、反逆罪で27年の禁錮刑を宣告し、選挙における投票及び立候補といった政治的権利を無期限に停止した。カンボジア当局は政治的動機に基づくこの有罪判決を取り消し、ただちに無条件で同氏を釈放するべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

ソカ氏は、主要野党だったが解党されたカンボジア救国党(CNRP)の元党首である。2017年の逮捕以来、同氏は恣意的拘束や拘束中の虐待を受け、いかなる政治活動への参加も禁じられている。

「ケム・ソカ氏に対する容疑が、カンボジアの有力野党指導者の活動を孤立させ、国の民主的制度を排除しようという政治的動機に基づくフン・セン首相の策略であることは最初から明らかだった」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理、フィル・ロバートソンは述べた。「ケム・ソカ氏の投獄は、氏の政党を壊滅させるだけでなく、7月に真の総選挙が行われるかもしれないという希望を打ち砕くものでもある」

2017年9月3日の午前0時頃、フン・セン首相の個人警護班の人員が自動小銃で武装した約100人の警官を率い、ソカ氏をプノンペンの自宅で逮捕した。その後、捜査判事は同氏をカンボジア刑法443条の反逆罪と「外国人との共謀」の罪で起訴し、最長30年の懲役刑が科されることとなった。

ソカ氏と代理人弁護士はすべての容疑を否認し、同氏に対する訴えは根拠を欠き政治的動機に基づくものだと述べた。政府の検察官らは、ソカ氏が政府を転覆させるための外国の陰謀に長期に渡って関与していたと主張した。ソカ氏は現行犯で逮捕されたことを元に、議員としての免責特権が即時剥奪されたが、容疑の証拠として出されたのはソカ氏が2013年にオーストラリアで行った演説の映像だけだった。この演説でソカ氏は、カンボジアにおける民主的変革を目指し、平和的な運動を行っていることについて論じていた。

ソカ氏が逮捕されると、カンボジア政府は同氏の政党を合法的に解党しようとした。与党カンボジア人民党(CPP)の中央委員会のメンバーであった最高裁長官が率いる政府支配下の最高裁は、2017年11月に同党の解散を命じた。党の幹部の多くが逮捕を恐れて国外に亡命した。カンボジアは2018年7月29日に選挙を行ったが、有力な野党や野党候補者は立候補しなかった。与党CPPが国民議会の125議席すべてを獲得し、事実上、カンボジアは一党制の国家となった。

逮捕後、ソカ氏は2年以上も僻地のトボンクムン州の第三刑務所で未決拘禁された。刑務所当局は氏に対して適切な医療処置をせず独居拘禁し、肉親と弁護士以外による面会を一切認めなかった。2018年6月5日、独立した専門家で構成される国連恣意的拘禁作業部会は、ソカ氏の未決拘禁を「恣意的」で「政治的動機に基づく」と明言し、カンボジア当局にソカ氏を直ちに釈放するよう求めた。

ソカ氏の健康悪化について国際社会からの非常に大きな圧力と懸念に直面したカンボジア当局は、2018年9月にようやくソカ氏を釈放し、裁判所の監視下で事実上の自宅軟禁状態に置いた。

2019年11月10日、カンボジア当局はソカ氏に対する裁判所の監視を解除し、同氏が自宅を出て診療を受けることを認めたが、引き続き、すべての政治活動と出国を禁じた。この動きがあったのは、カンボジアの最大貿易相手であるEUが「武器以外のすべて(EBA)」協定の下で行うカンボジアの行動についての審査の中で、カンボジアの国際人権条約の不遵守状況について予備結論を出す2日前のことだった。

2020年2月12日、EUは EBA協定の下でカンボジアに適用されていた関税優遇制度を、「人権原則…の深刻で組織的な侵害を理由に」一部停止するとの決定を発表した。2022年3月、EUは「活動家や人権擁護者に保護を提供するために圧力をかけ、公的な行動をとること」を国際社会に呼びかけ、ソカ氏が裁判によって「政治家が政治参加という基本的権利を剥奪された」ことにも言及する決議を承認した。

新型コロナウイルス感染症により、ソカ氏の裁判は2021年を通して延期され、2022年1月に再開された。国連の専門家らは、「ソカ氏に対する反逆罪容疑が政治的動機に基づいており、政敵や政府批判者を標的にするための法律の悪用という、より大きなパターンの一部を形成していると考える強力な根拠」があり、「ソカ氏の逮捕と拘束の過程全体が、不正と国際人権法及びカンボジア法の明らかな無視によって損なわれている」と述べた。

裁判の最終弁論で政府検察は、ソカ氏が人権団体であるカンボジア人権センターを設立したこと、またその後の2012年に、自身の人権党をもう一つの主要野党であるサム・ランシー党と合併したことは、外国による内政干渉の結果であると主張した。検察官らは、ソカ氏に非常に重い刑罰を科し、政治に参加する権利を剥奪するよう主張した。

また、検察は2021年に他の野党支持者に対する集団裁判も開始し、2022年まで続いた。被告には解党されたソカ氏のCNRPの関係者100人以上のほか、市民社会の活動家も含まれた。検察側は、被告らが表現・結社・平和的な公会の権利を行使することで「重罪の犯行を促す扇動」を行ったと主張した。2022年6月14日、プノンペンの裁判所が「扇動」と「共謀」の容疑について、証拠なしに少なくとも51人のCNRP党員や政治活動家に有罪を宣告した。合計27人の被告は現在国外に亡命しており、欠席裁判であった。数カ月後には、集団裁判の一環で、新たに36人の有罪宣告が下された。

フン・セン首相は2023年1月に行われた公開演説で、政敵に対して、攻撃される準備をするように伝え、自分は「CPPに所属する人を集めて、あなた方に抗議し暴行を加えること」ができると述べた。さらに露骨な脅しを繰り返した後、首相は野党支持者に対する最後の警告を発して演説を締めくくった。「気をつけなさい。私が我慢できなければ、あなた方は壊滅的な打撃を受けることになる」。

「ケム・ソカ氏の裁判は、カンボジア司法の独立性の完全なる欠如と、与党がカンボジアの政治環境を思い通りに支配できる力を持つことを浮き彫りにした」とロバートソンは述べた。「カンボジアで権利が尊重されるように何十年も努力してきた各国政府は、この無意味で懲罰的な判決をきっかけに、フン・セン政権へのアプローチを見直すべきである」と述べた。

Correction

3/3/23: This press release has been updated to reflect the correct time Kem Sokha spent in pre-trial detention.

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