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参議院「外交・安全保障に関する調査会」

ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表 土井香苗による参考人発言(2023年2月22日)

大テーマ「21世紀の戦争と平和と解決力~新国際秩序構築~」

小テーマ「軍縮・不拡散②(核以外の大量破壊兵器、対人地雷・クラスター爆弾等)」

【目次】

21世紀における「人道的軍縮」の推進

対人地雷

クラスター弾

化学兵器

焼夷兵器

人口密集地における爆発性兵器

自律型兵器

結論

 

人権の新たな国際的包容(International Embrace)に向けて

 

人権危機がもたらす世界的インパクト

事例

人権尊重こそ、安定への処方箋

10箇条の提案

日本政府が人権で世界のリーダーとなるための10箇条

 

  1. 日本外交を導く実質的かつ強固な政治レベル文書としての「人権行動原則/計画」を作成し、国会で採択すること。この原則/計画に沿って、深刻な人権侵害がある国々に関し、明確なタイムフレームのある具体的な対策/行動計画を決定する。
  2. 外務省の構造改革を行う。予算増加、ハイレベルかつ強力な専任ヘッドを頂点とするチーム構成のもと、より効果的な人権外交ができる体制を作ること。
  3. いわゆるマグニツキー法(人権侵害制裁法、海外での人権侵害を理由に制裁を科す法律)を制定すること(例 米国、カナダ、英国、オーストラリア、EUなど)
  4. 主要関係国について、年次人権報告書を作成・発表すること(例 英国、米国、スウェーデンなど) 。
  5. 人権の守り手(human rights defenders)及び開かれた市民社会・市民空間(open civic space)を支援するプログラム及び基金を創設する。
  6. 人道的軍縮を推進する国際的な取り組みを支援・主導し、外交政策の柱とすること。
  7. 「普遍的管轄権(Universal Jurisdiction)」の概念に基づき、国際法に違反する重大な犯罪行為に関する司法手続きを支持・支援すること。
  8. 貿易政策の改革:深刻かつ組織的な人権侵害国に対する特恵関税措置からの除外、貿易協定に人権条項の盛り込みを義務付ける。そして、サプライチェーン問題改革を行う。具体的には、企業に対する人権デューデリジェンス義務の法制化、強制労働など人権侵害を伴って生産された物品の輸入禁止措置の導入など。
  9. 開発援助の政策・構造の見直し。人権侵害政府に対する開発援助の停止(但し、人道援助は継続)を定め、危機に効果的に対応できるようにする。
  10. 庇護希望者と難民の保護に対するグローバルな共同責任(日本への第三国定住を含む)を受け入れ、果たすこと。

 

【本文】

ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗と申します。本日、参議院「外交・安全保障に関する調査会」にて、大テーマ「21世紀の戦争と平和と解決力~新国際秩序構築~」における、小テーマ「軍縮・不拡散②」に関する調査について参考人としてお招きいただいたこと、ヒューマン・ライツ・ウォッチを代表し、お礼を申し上げます。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(本部・米国ニューヨーク)は独立した国際人権NGOとして、世界90ヵ国以上で人権侵害の調査活動に従事しています。世界中で人権侵害を調査・記録して詳細な報告書にまとめて発表した上で、法律や政策、実務の改善を求めるアドボカシーに取り組むことで、人権侵害を是正・防止することが活動の目的です。また、戦時下で弱い立場に置かれるマイノリティや文民から、難民そして困難の中にある子どもたちまで、最も大きな危険にさらされている人びとを守るために活動しています。

世界各地では、大規模かつ深刻な人権危機があちこちで発生しています。たとえば、ウクライナ/ロシア、エチオピア、中国、アフガニスタン、ミャンマー、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、南スーダン、イラン、イエメンなどです。こうした現状を踏まえると、新たなフレームワークと新たな行動モデルの構築が喫緊の課題であります。戦争中であろうと平和であろうと、現代世界の重大な課題と脅威を、人権という視点から捉えることによってこそ、危機の根本原因を解明し、それに対処する指針が引き出せると考えます。

 

21世紀における「人道的軍縮」の推進

ヒューマン・ライツ・ウォッチは「人道的軍縮」型のアプローチに注力し、戦闘員と文民を区別できない無差別型の兵器など、許容できない被害をもたらす兵器に対処してきております。このアプローチは、国家の安全保障上の利益によって推進される、これまでの軍備管理型・不拡散型の取り組みとは対照をなすフレームワークです。

この「人道的軍縮」が最優先するのは、人びとを支援し、人道上の悪影響に対処することです。「人道的軍縮」の特徴は、各国政府、国連機関、赤十字国際委員会、市民社会とのパートナーシップにあります。そこでは重要な役割を果たすのが、私どもヒューマン・ライツ・ウォッチのような非政府組織(NGO)です。NGOがグローバルな連合体を作り、緊密に連携して活動を進めるやり方が典型的です。

対人地雷

1997年の対人地雷禁止条約、通称「オタワ条約」は、このアプローチの先駆けであり、人道的軍縮アプローチの基礎を築いたとみなされています。この条約は対人地雷を包括的に禁止し、貯蔵地雷の廃棄を義務づけています。また、人道規定として、埋設地雷の除去や地雷被害者への支援も求めています。

オタワ条約によって、何十万もの人びとが生命や手足を失わずに済んだことは確実です。これまで日本を含む164ヵ国が条約を批准しました。各国はこれまでに貯蔵対人地雷5,500万発以上を廃棄しています。日本政府は2003年2月、約100万個の貯蔵の廃棄が終了しました。

日本政府は、世界各地での地雷除去事業を金銭的に支援してきました。また、条約を批准していないあらゆる国に対して「できるだけ早く(at the earliest opportunity)」批准を行うよう繰り返し訴えています。こうした行動は、地雷のない世界という共通の目標を達成する上ではなくてはならないものといえます。

一方で日本政府は、このオタワ条約が確立した規範を守るために、対人地雷の新たな使用を非難するべきです。ミャンマー軍事政権が対人地雷を使用し続けていることはきわめて問題です。また、ロシアがウクライナに全面侵攻して1年が経ちますが、この間、ロシアが対人地雷を大量に使用していることも、きわめて憂慮すべき事態です。ヒューマン・ライツ・ウォッチは先月、ウクライナ政府が対人地雷を使用した疑いがあることも発表しました。日本政府はウクライナ政府に対し、協力的コンプライアンスの精神に基づき、ウクライナ政府に実態調査を促すべきです。

クラスター弾

2008年の「クラスター弾に関する条約」もまた、人道的軍縮を代表する存在のひとつです。クラスター弾は、子弾を広範囲にわたり無作為にばらまくことで、紛争下の文民に直接的な脅威を与えます。多くの子弾が着弾時に起爆しないため、除去・廃棄されるまで長年にわたる脅威となります。

日本政府は2009年、クラスター弾に関する条約をいち早く批准した国となりました。そして、2015年に貯蔵クラスター弾14,000発以上の廃棄を完了し、国際法上の重要な義務を果たしました。しかし、世界におけるクラスター弾全廃はいまだ遠い道のりであり、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、日本政府がこの条約を一貫して支持・支援していることに感謝を申し上げます。

現在、110ヵ国がこの条約を批准しました。しかし、中国、ロシア、米国は未批准です。この10年間、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、シリア政府がロシア政府の積極的な支援を受けて、クラスター弾を大量に使用し、文民に被害を与えていることを、いくつもの調査報告書を通じて詳しく明らかにして参りました。

だからこそ、ウクライナ戦争で、ロシア政府がクラスター弾を発射するロケット砲を広範に使用している現状には愕然とさせられます。日本政府は、ウクライナでのクラスター弾の使用を非難し、この条約の普遍化と履行の促進にいっそう力を入れるべきです。

化学兵器

人道的軍縮のもう一つの特徴は、今申し上げたような条約が、国際人道法と国際人権法において、考えられる最も強力な基準の確立を目指している点にも認められます。1972年の「生物兵器禁止条約」(BWC)が、細菌剤(生物剤)や毒素の兵器使用を包括的に禁止していることも、そのひとつと言えるでしょう。

このことは、1993年の「化学兵器禁止条約」(CWC)での厳格な禁止にも明らかです。日本政府など193ヵ国が批准するこの条約は、きわめて多くの国が支持している兵器条約です。この条約は、各国に対して、保有する化学兵器と化学兵器生産施設の廃棄を義務づけています。現在、保有国が申告した化学兵器のうち、じつに99%が廃棄済であることには勇気づけられます。

ほとんどの国は条約の規定を遵守しています。しかし、深刻な課題も依然として存在します。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、化学兵器禁止機関(OPCW)も指摘していますが、シリア政府が禁止対象の化学兵器を使用した事例を複数明らかにしてきました。

しかし、化学兵器による一連の攻撃に責任のあるシリア政府当局者のアカウンタビリティ、すなわち法的責任を追及する試みは、進んでいません。次回の化学兵器禁止条約運用検討会議は、来る2023年5月に開催されますが、これは日本政府にとって、化学兵器禁止条約が確立した規範を守り、化学兵器使用に対するアカウンタビリティ/責任追及の取り組みを支援する、重要な機会といえます。

焼夷兵器

焼夷兵器は、化学反応によって火炎を発生させるため、化学兵器と混同されることがありますが、異なる兵器です。ガソリンをゲル化させたナパーム、アルミニウムと酸化鉄の粉末を混合したテルミットなどの可燃性物質を含みます。この兵器の使用は、人に耐え難い重症の火傷を負わせるとともに、文民の住宅施設や商業施設、インフラを火災によって破壊します。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは近年、アフガニスタン、パレスチナのガザ地区、イラク、シリア、ウクライナ、イエメンで焼夷兵器が使用され、文民が被害を受けたことを調査報告書で明らかにしています。焼夷兵器の使用は第二次世界大戦にさかのぼり、1945年3月10日の東京大空襲は10万人以上を殺害し、筆舌に尽くしがたい被害を生じさせたことはご存じのとおりです。

1980年の「特定通常兵器使用禁止制限条約」(通常兵器禁止条約、CCW)議定書Ⅲは、焼夷兵器の使用を規制しています。しかし、2つの深刻な欠陥のため、文民を十分に保護することができません。第一に、焼夷兵器の定義に多目的弾が含まれていません。たとえば、白リン弾や発煙弾です。これらもやはり焼夷効果を発揮します。第二に、民間人居住地域での空中投射型焼夷兵器の使用を禁じる一方で、一定の状況下での地上発射型焼夷兵器の使用を容認しています。文民地区での焼夷兵器の使用は、空中投射であれ地上発射であれ、全面的に禁止されるべきです。

CCW締約国たる日本政府は、議定書Ⅲの有効性を削いでいる、こうした欠陥への対処に取り組むべきです。また、2023年にCCWの枠組み内外を問わず、焼夷兵器に特化した議論が行われるよう取り組むべきです。

人口密集地における爆発性兵器

人道的軍縮における規範は、法的拘束力のある文書に限られません。2022年11月、日本など83ヵ国が、人口密集地における爆発性兵器の使用(EWIPA)から文民を保護するための、重要な政治宣言を支持しました。

この宣言は、都市部での爆発性兵器の使用の「制限及び抑制」を通じて文民被害の発生を防ぐための国家レベルの政策と実務を策定・実施することを各国に求めています。

ダブリンでの採択式で発表したステートメントで、吉川ゆうみ外務大臣政務官は「武力紛争下における文民保護の重要性と、国際法遵守の必要性」を確認されました。

日本政府は、文民を最大限保護するようにこの宣言を解釈・履行することで宣言の目的へのコミットメントを示すとともに、宣言の普遍化のための努力に貢献することができると考えます。

自律型兵器

人工知能(AI)及び関連技術の軍事的応用に多額の投資を行い、陸海空での自律型兵器システムを開発する国が増えています。こうした開発の行きつく先では、いったん起動すれば以降は人間の介在なしに目標を選択・交戦する完全自律型の兵器システムが開発されてしまうという懸念には、十分な根拠があります。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、機械単独の判断で人間を標的にし、攻撃するような兵器システムには「国際的な合意に基づく制限(internationally agreed limits)」を定めるべきだと訴えています。そして、こうした兵器は「道徳的に忌むべきものであり、政治的にも受け入れられない(morally repugnant and politically unacceptable)」と述べています。世界の70を超える国の政府と赤十字国際委員会、そして、ヒューマン・ライツ・ウォッチが共同設立者である「キラーロボット反対キャンペーン(ストップ・キラーロボット連合、Stop Killer Robots campaign)」は、こうした自律型兵器の禁止及び制限を定める新条約が緊急に必要かつ実現可能と考えます。

日本政府は、人間が有意な関与をしない致死性兵器を開発する意図はないと繰り返し述べています。しかし残念ながら、自律型兵器システムを対象として新たに、法的拘束力のある文書(条約)の交渉を開始することは支持していません。

行動規範(code of conduct)や政治宣言(political declaration)などの自主的なコミットメントを自律型兵器システムの開発の指針にすることでは、この問題の解決策になりません。自律型兵器は、戦争の本質を根本的に変え、武力行使の閾値を下げかねません。

通常兵器禁止条約(CCW)の枠組みでのキラーロボットに関する協議は、外交的行き詰まりを見せています。その打開が必要です。ヒューマン・ライツ・ウォッチが最近の報告書で示したように、人道的軍縮に関連する条約の歴史は、より効率的かつ効果的な方法があることを示しています。日本政府は、人類を守るため、CCWにかわる代替プロセスで自律型兵器システムを禁止・規制する新条約の交渉を行うという提案を支持するべきです。

結論

これまでの人道的軍縮の歩みからの重要な教訓がひとつあります。コンセンサス方式の交渉では、概ね成功しないという教訓です。したがって、コンセンサス方式とは別の代替プロセスによって、規範を定めた条約を策定してこれを実施し、兵器が引き起こす人間の苦しみに対処することこそを目指すべきです。こうした人道的軍縮アプローチこそが、より効率的・包括的で、結果も出していることは、すでに実証されております。

 

人権の新たな国際的包容(International Embrace)に向けて

人権危機がもたらす世界的インパクト

基本的人権と自由の侵害、経済的・社会的権利の剥奪、マイノリティ集団への大規模な暴力、そうした数々の人権侵害の責任が問われない状況――この先にあるのが人権危機です。人権危機がもたらすのは、人道に対する罪、国内避難民や難民の発生や耐え難い苦しみ、無数の残虐行為にまみれた紛争と内戦などです。

第二次世界大戦がもたらしたおぞましい惨状は、ひとつの教訓を後世に残しました。そして世界人権宣言(1948)の前文にはこう記されています。「人間が専制と圧迫とに対する最後の手段として反逆に訴えることがないようにするためには、法の支配によって人権保護することが肝要である」と。

各国政府には自国で人権を守る法的義務が課されています。しかし各国政権がこの義務を果たさない場合、国内には不満や不安定、そして最終的には危機へと至る不満の種がまかれていきます。人権侵害に手を染めるこうした政権は、阻止・牽制されなければその行動をエスカレートさせ、腐敗や検閲、不処罰(impunity)そして暴力こそが、自らの目的達成のために最も効果的な手段だという信念を強めていくのです。人権侵害の放置は大きな代償を伴います。その波及効果を過小評価すべきではありません。

事例

2つの事例を取り上げます。

まず、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻です。国際社会がロシアのプーチン大統領の法的責任/アカウンタビリティを追及すべく、一致団結した行動をもっと早くからとっていれば、今このような事態にはなっていなかったかもしれません。ウクライナ東部で紛争が始まった2014年に、シリアでの人権侵害が問題視された2015年に、そしてロシア国内で人権弾圧が激化した過去10年間に、一致団結した行動を取っていれば。各国政府は反省すべきです。

次に中国です。中国は、日本にとって安全保障上の最大の脅威といえます。1989年の天安門事件に対し、日本政府は西側諸国の制裁にむしろ抵抗する姿勢で臨みましたが、もし、日本政府が1989年以降、中国政府の人権侵害の法的責任/アカウンタビリティを追及して法の支配を要求する国際的取り組みをリードし続けるという対照的アプローチをとっていたら…と考えてみてください。当時の日本のGDPは中国の6倍を超えていました。今とは異なる状況がありえたことでしょう。

人権尊重こそ、安定への処方箋

いま世界各国が取り組むべきなのは、ウクライナへの軍事侵攻に対する国際社会の一致した対応の特によい事例に学び、これを再現するとともに、人権状況の改善のため、世界各地の危機を解決する政治的意志を倍増することです。

日本政府をはじめ人権尊重を掲げる政府には、必要な人権状況の改善が実現するように、政治的スタミナを使い続け、政治的関心を払い続けることが必要です。日本政府にも、意志さえ持てば、可能です。北朝鮮に関して2013年、当時の安倍晋三首相が外務省に指示を出し、北朝鮮での人道に対する罪の証拠を収集する調査委員会を設置する、国連人権理事会での決議案採択をリードしました。当時、多くの国々は調査委員会設置へのやる気はありませんでした。しかし、このとき日本政府が指導力を発揮した結果、今では、北朝鮮政府高官らは将来、人道に対する罪で国際法廷に立たされうる状況になっているのです。

10箇条の提案

この場をお借りして、日本政府が人権で世界のリーダーとなるための10箇条を提案させていただきたく存じます。

 

日本政府が人権で世界のリーダーとなるための10箇条

 

  1. 日本外交を導く実質的かつ強固な政治レベル文書としての「人権行動原則/計画」を作成し、国会で採択すること。この原則/計画に沿って、深刻な人権侵害がある国々に関し、明確なタイムフレームのある具体的な対策/行動計画を決定する。
  2. 外務省の構造改革を行う。予算増加、ハイレベルかつ強力な専任ヘッドを頂点とするチーム構成のもと、より効果的な人権外交ができる体制を作ること。
  3. いわゆるマグニツキー法(人権侵害制裁法、海外での人権侵害を理由に制裁を科す法律)を制定すること(例 米国、カナダ、英国、オーストラリア、EUなど)
  4. 主要関係国について、年次人権報告書を作成・発表すること(例 英国、米国、スウェーデンなど) 。
  5. 人権の守り手(human rights defenders)及び開かれた市民社会・市民空間(open civic space)を支援するプログラム及び基金を創設する。
  6. 人道的軍縮を推進する国際的な取り組みを支援・主導し、外交政策の柱とすること。
  7. 「普遍的管轄権(Universal Jurisdiction)」の概念に基づき、国際法に違反する重大な犯罪行為に関する司法手続きを支持・支援すること。
  8. 貿易政策の改革:深刻かつ組織的な人権侵害国に対する特恵関税措置からの除外、貿易協定に人権条項の盛り込みを義務付ける。そして、サプライチェーン問題改革を行う。具体的には、企業に対する人権デューデリジェンス義務の法制化、強制労働など人権侵害を伴って生産された物品の輸入禁止措置の導入など。
  9. 開発援助の政策・構造の見直し。人権侵害政府に対する開発援助の停止(但し、人道援助は継続)を定め、危機に効果的に対応できるようにする。
  10. 庇護希望者と難民の保護に対するグローバルな共同責任(日本への第三国定住を含む)を受け入れ、果たすこと。

 

日本は力強い民主主義国家です。しかし、その外交姿勢については、国外の重要人権侵害に声をあげるのをためらうという、残念な評価が確立してしまっているといえます。日本政府には、世界で人権を擁護するという自国の責任をしっかりと引き受け、日本単独又は他国と協力の上で人権状況の改善に向けた行動を取ること、とくに、世界の最も深刻な事態に対処することが求められます。日本政府にはぜひ次のことをご理解していただきたく存じます。人権問題への注力は、高潔なことでも非現実的なことでもなく、人権は現実主義的リアルポリティークとしての外交政策の核心である、ということです。このことは、日本が2013年に北朝鮮の人権問題を国連で主導したことにも現れています。2013年に日本が果たした役割を、歴史の一コマで終わらせることなく、今後の日本外交のモデルとしていただきたいと切に願う次第です。

皆様のあたたかなご支援で、世界各地の人権を守る活動を続けることができます。

地域/国