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ウクライナ ロシアによる鉄道駅攻撃に新たな検証

関与を否定するロシアに武器と攻撃機会があったことを調査が裏付け

Ukrainian authorities inspect the rocket motor and guidance section of a Tochka-U missile next to the main building of the Kramatorsk train station in eastern Ukraine on April 8, 2022. The phrase “Payback for the children” is painted in Russian on the missile.  © 2022 Fadel Senna/AFP via Getty Images

(キーウ)2022年4月、ウクライナ東部の混雑するクラマトルスク駅へのロシアによるクラスター弾攻撃で数十人の民間人が殺されたのは戦争法違反であり、表面上は戦争犯罪でもあった、とヒューマン・ライツ・ウォッチとSITUリサーチは本日発表された報告書および映像で述べた。

『Death at the Station: Russian Cluster Munition Attack in Kramatorsk(駅での死:クラマトルスクでのロシアによるクラスター弾攻撃)』は、新たな詳細調査に基づき、テキストと映像を使ってクラマトルスク駅へのロシアによる違法攻撃に関する一連の出来事を再現している。4月8日の朝、数百人の民間人が駅で待っていたところ、クラスター弾を搭載した弾道ミサイルが爆発し、数十個の子弾を放出した。少なくとも58人の民間人が死亡し、100人以上が負傷した。主要な避難拠点であることがよく知られていた場所で、本質的に無差別な武器を使用する攻撃を命じたロシアの指令官らは取り調べを受け、責任を問われるべきである。

「クラマトルスク駅へのロシアの違法でおぞましい攻撃は、戦闘から懸命に逃れようとしていた民間人を殺し、負傷させた」とヒューマン・ライツ・ウォッチの危機・紛争上級調査員リチャード・ウィアーは述べた。「大勢の人が集まっているところにクラスター弾を使うことで引き起こされる残酷な影響は、禁止されているこの武器の使用を止めよというロシア軍への警鐘となるべきである」。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは5月14日から24日までドネツク州の都市であるクラマトルスクを訪れ、攻撃とその後の状況を調査した。調査員らは攻撃の生存者、犠牲者の家族、ファーストレスポンダー、医師、病院職員、政府関係者、ウクライナ政府の調査員など69人にインタビューを行った。ヒューマン・ライツ・ウォッチとSITUリサーチは200点以上の映像と画像を調べ、攻撃について空間と時間の面から分析を行った。調査員らは衛星画像も精査し、ミサイルが発射された可能性のある、ハルキウ州クニエ(Kunie)村近くのロシア軍陣地だった場所を視察した。

攻撃前には、地元当局が奨励し支援する避難の一環で、ウクライナ東部ドンバス地方全域から来た数万人もの人がクラマトルスク駅を通過していた。攻撃のあった朝には、荷物を持った500人以上の民間人が、比較的安全なウクライナ西部に向かう列車が来るのを待っていた。

発射された弾道ミサイルは午前10時28分に駅の上空で爆発し、数十個の子弾を放出した。それらは地面に当たると爆発し、駅で待っていた子どもや老人を含む多数の人が死傷した。家族と共に駅のプラットホームで待っていた女性は当時の混乱状態を説明した。「最初の爆発が起きたときには、私たちは何が起きたかわからなかった。…人々が叫び始めて、何か恐ろしいことが起きたのだとわかった。…私たちは地面に伏せた。でも義母[72歳]は反応が遅れ、座ったままだった。義母の片方の脚が吹き飛び、もう片方の脚は骨が折れ、それから彼女は亡くなった」

ファーストレスポンダーや駅のボランティア、一般市民が応急手当てをし、医療器具が現場に到着するまでの間、おむつで大量出血を止めようとしたケースもあった。攻撃の数分後に到着した救急車の運転手はこう述べた。「至る所で人々が叫んでいた。非常に苦痛に満ちた叫び声だった。あと20秒から40秒ほどしか命のない人たちの叫び声を聞いた。死の直前の叫び声を聞いた。手足が、子どもの手足が、地面に落ちているのを見た」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、駅の主な入口から50メートル南西で爆発した武器のロケットモーターと誘導装置の写真を分析し、それを「9M79K-1型トーチカU」弾道ミサイルと特定した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは32カ所の着弾地点にあった子弾の残部や破片も調べ、調査員が現場で見つけた、損傷を受けていない尾翼の組み立て、金属の調整破片、子弾の先端部分だとはっきりとわかる破片に基づき、子弾が確実に9N24であると特定した。

トーチカUは、9N24子弾の入った9N123Kクラスター型弾頭を飛ばす。このクラスター型弾頭には50個の破片子弾が収納されている。ロシアの製造企業によれば、9N24子弾はそれぞれ1.45キログラムの爆発物を含み、約316個の均一の大きさの破片に砕ける。これは、約1万5,800個の危険な金属破片が駅やその周辺に散布されたことを意味する。

ロシアとウクライナの両国は、クラスター型弾頭を搭載するトーチカ弾道ミサイルを備蓄している。ロシアはクラマトルスク駅への攻撃を否定し、ロシア軍はもはやトーチカUミサイルシステムを使用していないと繰り返し主張してきた。しかしヒューマン・ライツ・ウォッチは、攻撃が行われた時期にロシア軍がクニエ村の周辺で—クラマトルスクの北西にあり、駅の半径120キロの射程に入る—トーチカ発射車両と関連するミサイル運搬装置を持っていたこと、また同時期にロシア軍がクニエ周辺の陣地から定期的に攻撃を仕掛けていたことを示す証拠を入手した。

クラスター弾は、広範に無差別な影響を及ぼし、民間人にとって長期的な危険となることから、国際法の下で禁止されている。典型的なクラスター弾は空中で爆発し、数十個か、場合によっては数百個もの子弾を数百メートルの範囲に放出する。子弾は最初の着弾では爆発しないことが多く、地雷のように作動する不発弾を残す。

ロシアもウクライナも、クラスター弾を包括的に禁止する「クラスター弾に関する条約」の110カ国の締約国には入っていない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ロシアが現在の紛争中に繰り返しクラスター弾を使用してきたことを記録している。ウクライナ軍もクラスター弾を数回、使ったようである。

「クラスター弾は本質的に無差別である。クラマトルスク駅が民間人の避難拠点として公然と知られていたにもかかわらず、ロシアがこの武器を使用したのはぞっとするようなことだ」とSITUリサーチのディレクター、ブラッド・サミュエルズは述べた。「すべての国はこの攻撃や、その他のいかなるクラスター弾使用を明確に非難するべきである。この攻撃は捜査され、関与した者は法の裁きを受けるべきである」。

 

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