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ミャンマー:日本で訓練を受けた士官が人権侵害に関与した基地に所属

日本はミャンマー国軍と関係を断ち、暴力停止を働きかけるべき

A military helicopter from the Myanmar Air Force fires at a target during the first day of the “Sin Phyu Shin” joint military exercises on February 2, 2018, in the Ayeyarwaddy delta region, Myanmar. © 2018 Lynn Bo Bo/Pool via AP

(東京) - 日本で軍事訓練を受けたミャンマー空軍中佐が、ミャンマー中部マグウェイ地方での深刻な人権侵害に関与したとされる基地に所属していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチとジャスティス・フォー・ミャンマーは本日述べた。日本政府は、ミャンマー国軍の軍事訓練を直ちに止め、他の訓練参加者が国軍による戦時国際法違反に関与しているか調査すべきだ。

全国防衛協会連合会と防衛省の資料によると、ミャンマー空軍中佐のラン・モウ氏は2016年8月から2017年3月の間に日本の航空自衛隊幹部学校で訓練を受けた。また、現地メディアによると、ラン・モウ氏はミャンマーで副司令官を務めており、事情に詳しい2人の関係筋によると同氏はマグウェイ空軍基地に所属している。2021年2月の軍事クーデター以降、マグウェイ地域では空爆や地上戦を含む激しい戦闘が行われ、5万人以上の民間人が避難を余儀なくされた。報道によると、ミャンマー国軍はマグウェイで無差別空爆の可能性を含む略式処刑、放火などの残虐行為を行ったとされている。

「ミャンマー国軍の戦争犯罪を免責してきた長い歴史は、日本の軍事訓練プログラムが、日本をミャンマーの残虐行為に加担させる危険を冒すことになるという十分な証拠のはずだ」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局プログラムオフィサーの笠井哲平は述べた。「日本政府は訓練によってミャンマー国軍の暴力的な性質を変えられるという希望的観測を止めるべきだ。」

ミャンマーのメディアグループKhit Thit Mediaが2022年1月に報道した、2021年以降の空爆に関与したとされるミャンマー空軍関係者のリストに、ラン・モウ氏の名前、階級、地位、軍ID2321が確認されている。ラン・モウ氏の写真を確認したミャンマー軍と接点がある関係筋2名が、同氏の名前、軍ID、階級が本人のものであると認めた。

日本政府は2015年以降、外国籍の軍人の教育や訓練を認める自衛隊法第100条の2の規定に基づき、ミャンマー国軍の士官候補生及び士官を受け入れてきた。訓練は防衛大臣の承認の上、防衛省管轄の防衛大学校や自衛隊施設で実施されている。防衛省は2021年のクーデター後、2名の士官候補生と2名の士官受け入れ、2022年には、再度2名の士官候補生と2名の士官を受け入れた

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2021年12月、ミャンマー国軍の残虐行為に日本政府が加担する危険性があるとし、軍事訓練の停止を防衛省に要求した。当時、防衛省担当者は日本で訓練を受けた国軍の軍人が、ミャンマーに帰国後何をしているか把握していないと説明。しかし、2022年4月26日の衆議院安全保障委員会で防衛省担当者は「今どういうポストについているか」に関して「一定程度把握をしている」とした上、「相手国との関係」を理由に詳細の開示を拒んだ。

ミャンマー国軍は数十年にわたり、民族武装集団との長期にわたる武力紛争における戦争犯罪や、ラカイン州の少数民族ロヒンギャへの人道に対する罪や大量虐殺に当たる行為を犯してきた。

2021年2月のクーデター以降、ミャンマーの治安部隊などは民間人に対して大量殺害、拷問、恣意的な逮捕、無差別攻撃など人道に対する罪や戦争犯罪に相当する深刻な暴力を行使してきた。Assistance Association for Political Prisoners(政治囚支援協会)によると、治安部隊はこれまでに130人の子どもを含む1800人以上を殺害、13,000人以上を恣意的に拘束した。また、ミャンマー国軍が少数民族が住む地域における軍事作戦や、「軍政」に反対する武装勢力に対する攻撃を拡大したため、55万人以上の人々が避難を余儀なくされた。さらに、ミャンマー国軍は支援を必要としている人々に対する集団罰として、人道支援が届かないよう意図的に阻害してきた。

ミャンマー国軍は、空爆や重砲の乱射など、民間人を標的とした無差別攻撃を行い、人命と財産の損失をもたらしている。避難した人や支援に当たっている人々の証言によると、軍は特定の地域を支配するために、意図的に民間人を孤立させ恐怖に陥れる、「4カット」という戦略を使い続けていることが示唆されている。ミャンマーの人権状況に関する国連特別報告者は、今年2月に発表したミャンマー国軍への武器輸出に関する報告書で、ジェット機、攻撃ヘリコプター、装甲車、軽砲と重砲、ミサイルやロケットなどが民間人に対して使用されていると指摘した。

クーデター発生以来、日本政府は暴力行為の停止と、アウンサンスーチー氏ら民政高官の釈放を求めている。2021年3月28日、防衛省統合幕僚監部は山崎幸二統合幕僚長の名で11カ国との共同声明を発表し、ミャンマー国軍による「非武装の民間人」への軍事力の行使を非難した。日本政府は2021年初頭に、人道支援以外の政府開発援助(ODA)の新規計画を中断する一方で、既存の援助計画の継続は認めた。6月には、国会で「ミャンマーにおける軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求める」決議が可決された。

「ミャンマー国軍が残虐な犯罪を犯していることを知りながら、日本が国軍の幹部候補生の訓練を続けることは許しがたい」とジャスティス・フォー・ミャンマーのヤダナ・マウン氏は述べた。「日本の幹部候補生訓練プログラムは、ミャンマー国軍をより大胆にさせ、ミャンマーの人々に対する犯罪に使われる可能性のある支援を軍人に提供するものだ。我々は日本政府に対し、これらの訓練を直ちに中止し、ミャンマー国軍および軍系企業との取引を停止するなど、ミャンマー国軍の重大な侵害行為を阻止するための具体的な措置を取るよう要請する。」

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