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日本:東南アジア外遊で人権問題に言及すべき

岸田首相はインドネシア・タイ・ベトナムに改革を迫るべきだ

Japan's Prime Minister Fumio Kishida speaks during a press conference at the prime minister's official residence in Tokyo, Japan, April 8, 2022. © 2022 Rodrigo Reyes Marin, Pool via AP

(東京、2022年4月26日)–日本の岸田文雄首相は来る東南アジア外遊で、インドネシア、タイ、ベトナム各国政府に対し、人権状況の改善を強く働きかけるべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。首相は2022年4月下旬から5月上旬にかけて、3カ国を歴訪する予定だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗は、「日本はインドネシア、タイ、ベトナムに対し、主要開発援助国として、人権状況の改善を迫るべきだ」と指摘した。「外国訪問の際に人権問題を公的および私的な場で提起し、日本政府自身の人権外交への誓いを履行することは、国際社会における日本のクレディビリティに関わることだと岸田首相は認識しなければならない。」

インドネシアでは、イスラム教の政治家や過激派による宗教的迫害、ならびに冒とく法の元で行われている政敵や宗教的マイノリティに対する差別に関して、ジョコ・ウィドド大統領に強く働きかけるべきだ。岸田首相は、刑法改訂草案中にある冒とく法の拡大案が、信教・結社・表現の自由を脅かすことになると強調しなければならない。

ウィドド政権は2021年2月、公立学校におけるジルバブの強制的着用という服装規定を廃止しようとしたが、最高裁判所がこの案を覆した。岸田首相は、ジルバブ着用義務によって侵害される女性や少女の権利を守るため、60以上の地方および国の規定を取り消す中央政府規制を発令するよう、ウィドド大統領に要請すべきだ。 インドネシア政府はまた、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(LGBT)の人びとに対する差別的な政府規制にも終止符を打たなければならない。

タイでは、民主主義活動家や君主制の批判者を逮捕することで、基本的権利、とりわけ言論および集会の自由に対する規制を強めているプラユット・チャンオチャ首相に、重大な懸念を表明すべきだ。タイ政府はまた、新型コロナウイルス感染症パンデミックを口実に国家非常事態宣言を恣意的に執行し、時に若者主導の民主化運動を厳しく取り締まることで、野党の政治活動および集会を抑圧している。岸田首相は、結社および表現の自由を侵害し、かつ日本政府が資金供与している団体も含まれるNGOの活動をかなり限定的なものにしてしまいかねないタイ政府の法案に反対表明すべきだ。

岸田首相のタイ訪問は両国の国交樹立から135周年の節目と重なる。親密な政治的、経済的、社会文化的関係をこれまで築いてきた日本は、タイが真の民主主義と人権の尊重を追求しない限り、両国がこれまでのような関係に戻ることはないと、率直に伝えられる立場にある。岸田首相はとりわけ、言論と集会の自由に対する弾圧をやめるよう、プラユット首相に圧力をかけるべきだ。

べトナムでは、政府が人権活動家やブロガーに対する取り締まりを強めていることに対しての懸念を公に表明すべきだ。ベトナムでは2020年12月〜2022年4月に、少なくとも51人が、表現・結社・信教の自由を行使ししたために裁判にかけられ、有罪判決で懲役刑を言い渡された。岸田首相は、Pham Chi Dung氏、Nguyen Tuong Thuy氏、Le Huu Minh Tuan氏、Can Thi Theu氏、Trinh Ba Tu氏、Pham Chi Thanh氏、Pham Doan Trang氏、Trinh Ba Phuong氏、Nguyen Thi Tam氏、Do Nam Trung氏、Le Trong Hung氏、LeVanDung氏を含む政治囚の即時かつ無条件の釈放を求めるべきだ。

日本はベトナムのもっとも重要な開発援助国である。岸田首相は、ベトナム共産党が専制の脅威とみなす組織や団体の結成・運営を禁じていることへの懸念を公に表明する必要がある。インターネット上の表現の自由の尊重、ウェブサイトへのアクセスの遮断や政治的に微妙とされるコンテンツの削除をめぐるソーシャルメディア企業/電気通信関連企業への圧力の停止を強く求めなければならない。

SNS上などで一党支配体制を批判する人びとが、警察の威圧行為、嫌がらせ、移動の制限、身体的暴行、恣意的逮捕および拘禁に直面している。警察は、弁護人との接見を許可せずに数カ月間、政治活動家を拘禁して濫用的な取り調べ方法を用いた尋問を行っている。その後、党に掌握された裁判所が、ブロガーや活動家をでっちあげの国家安全保障罪で有罪とし、長期の懲役刑を科すのである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2月に、報告書「『自宅に閉じ込められる』:権利を制約されるベトナムの人権活動家たち」を発表した。2004年から2021年の間にベトナム政府が組織的かつ徹底的に、市民の移動の自由を制限してきた問題について詳述している。3月には、ロシアの侵略の際にウクライナとの連帯を示すため、ハノイで開催されたイベントに参加しようとしていた民主派の支援者8人が、治安部隊に阻止される事件が起きた。

岸田首相は、政府の批判、権利団体への参加、共産党の認可を得ていない宗教の信仰など、基本的な権利を行使したために投獄されたすべての人を釈放するよう、公に強く求めるべきだ。

前出の土井は、「日本は、世界を舞台に人権を保護するという公約を誇らしげに主張しながら、実際には、アジアで権利を侵害している各国の政府に人権状況の改善を求めて圧力をかけるといったことをほとんどしていない」と指摘。「岸田首相の東南アジア外遊は、国外での人権問題には公言しないという日本政府の長年の姿勢を改め、人権保護を世界的な場で率先して取り組む重要な機会だ。」

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