(東京) スポーツ庁及び東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、スポーツにおける虐待に対処する独立専門行政機関を設立すべきであると、日本の内外の6つのNGOが本日、連名で提言した。
2021年10月12日、一般社団法人アスリートセーブジャパン、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、全国柔道事故被害者の会、日本セーフスポーツ・プロジェクト、一般社団法人監督が怒ってはいけない大会、一般社団法人ユニサカの6団体は、室伏広治・スポーツ庁長官と橋本聖子・東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長宛に書簡を送付し、こうしたセーフスポーツ・センター(仮称)の設立を公約するよう求めた。
セーフスポーツ・センターが設立されれば、スポーツでの暴力・暴言等の被害を受けた場合にそうした虐待を通報し相談することができる。また虐待事案の対応状況を当局が把握することも可能になり、スポーツをする人やその保護者に対して実効的な救済策を確立することになるし、虐待を行った指導者を特定して認定を取り消すことなどを通じて、子どもへの虐待の抑制に役立つであろう。セーフスポーツ・センターはまた、セーフスポーツ概念の普及活動にも取り組み、法的支援を必要とする被害者が専門家に容易にアクセスできる仕組みも提供する。
「日本では、スポーツ競技に参加するためには、虐待や不当な扱いに耐えなければならないという過酷な現実が長いこと存在している」と、日本セーフスポーツ・プロジェクトの創設者で、アスリートの権利擁護の専門家である杉山翔一弁護士は述べた。「日本は、スポーツの現場で子どもとアスリートを守るための改革を求める世界的な動きをリードすることができるし、そうすべきである」。
ヒューマン・ライツ・ウォッチが2020年7月に発表した報告書『「数えきれないほど叩かれて」:日本のスポーツにおける子どもの虐待』では、日本の子どもたちが、スポーツのトレーニング中に身体暴力、性暴力、また暴言等の虐待を受けている実態が明らかになった。日本のスポーツ界には、「体罰」という子どもへの身体的懲罰の歴史がある。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会に至る過程では、日本の多くのアスリートや保護者、人権団体によって虐待の実態が明らかにされた。例えば1983年以降、柔道の稽古では100人以上のアスリートが死亡している。
また、書簡を出した諸団体は、日本語と英語で「スポーツから暴力をなくそう」キャンペーン(#AthletesAgainstAbuse)を行っており、日本でのセーフスポーツ・センター設立の必要性を訴えている。
「東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催中は、世界が日本に注目していた」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表・土井香苗は述べた。「大会閉幕後の今は、東京大会がどのようなレガシーを遺し、日本の子どもたちや家族にとっていかなる長期的な人権上のメリットをもたらすのか、が次の関心事だ。」
不十分な制度ゆえに、日本ではスポーツでの虐待への対応や防止への動きが鈍い。現在の日本では、虐待に対処し、アスリートを守る責任を負うのはスポーツ団体となっている。しかし、国の行政機関であるスポーツ庁から明確かつ包括的なアスリート保護政策が示されていない中では、それぞれのスポーツ団体は、アスリートへの虐待の防止・報告・調査・処罰の仕組みを自前で構築しなければならない。このように権限が分断されているため、スポーツをする人を守る制度に一貫性がなく、不十分なものとなっている。
全国柔道事故被害者の会の元事務局長・小林恵子氏は、「日本は、スポーツでの虐待に関するあらゆる申し立てに対応する独立した行政機関を今こそ設立すべきです」と述べた。「私の息子は、柔道の練習中の体罰で重度の障害を負いました。息子のケースは氷山の一角に過ぎません。これからの子どもたちのために、日本は真剣な改革に直ちに取り組むことが求められています」と述べた。