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ベトナム:民主活動家の母と息子たちを解放するべき

政府を批判した一家が裁判に

Trịnh Ba Tu and Can Thi Theu  © 2018 Private

(ニューヨーク)ベトナム当局は民主活動家のカン・ティ・テウと2人の息子をただちに解放し、起訴をすべて取り下げるべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2021年5月5日にカン・ティ・テウとその次男のチン・バ・トゥの裁判が開かれる予定である。3人とも2020年6月から拘禁されている。

カン・ティ・テウと夫のチン・バ・キエム、さらにその息子2人は、人権、土地権利、環境保護その他の問題についてこの10年間数多くの抗議行動や運動に関与してきた。当局は以前にも夫婦を投獄しており、2や家族に対し繰り返し嫌がらせや脅しをしてきた。

「カン・ティ・テウとその家族はベトナムにおける人権の擁護者として表立って発言してきた」とアジア政策提言担当ディレクターのジョン・シフトンは述べた。「ベトナム政府はこの勇敢な一家のような人びとを投獄するのではなく、かれらの言うことに耳を傾けるべきである」

2020年6月24日、ホアビン省とハノイの警察はカン・ティ・テウ(59)と息子のチン・バ・トゥ(32)とチン・バ・フォン(36)をそれぞれ逮捕した。3人はベトナム刑法117条の下、反国家プロパガンダを行った容疑で起訴された。同日、当局は一家と共に活動していた土地権利の活動家グエン・ティ・タム(49)も逮捕し、同じ条項の下で起訴した。グエン・ティ・タムは警察に拘禁されたまま裁判を待っている。

当局は9カ月間、弁護士がカン・ティ・テウとチン・バ・トゥに面会するのを認めなかった。これは国際人権基準に違反する。家族も2人との面会を許されなかった。長男のチン・バ・フォンの裁判の日程は未定で、弁護士はじめ家族とも連絡を取れないまま拘禁が続いている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査によれば、近年ベトナムは数百人の反体制活動家を逮捕し、現在137人の政治囚が人権擁護や政府批判に関連した刑に服している。2021年の最初の4カ月間で、当局は著名な人権活動家のグエン・トゥイ・ハンを含む10人の反体制活動家を新たに逮捕した。同時期に少なくとも12人の反体制活動家が有罪判決を下され、2年から15年の禁固刑を言い渡された。

カン・ティ・テウは2000年代半ばに有力な土地権利活動家として台頭し、政府による土地収用に抗議した。2014年4月、警察は政府による土地収用を撮影したことを理由にカン・ティ・テウを逮捕し、のちに刑法257条の下「公務執行者に抵抗した」罪で15カ月の禁固刑を言い渡した。夫も同じ日に逮捕され、同様の罪で14カ月の刑に服した。

カン・ティ・テウは刑期を終えるとすぐに人権擁護活動を再開した。環境に関する抗議行動に参加し、他の人権活動家や政治囚への支持を公に表明した。2016年6月、警察は土地収用に抗議するデモに参加したことを理由にカン・ティ・テウを再び逮捕し、3カ月後にカン・ティ・テウは20カ月の禁固刑を宣告された。

2018年2月に解放されたカン・ティ・テウはすぐに人権擁護活動を再開した。帰宅すると支援者たちに向けて熱のこもった演説をし、「小さな刑務所を出て大きな刑務所に戻ってきた」と述べた。カン・ティ・テウは政府による人権侵害を非難し、人権のための戦いを続けると誓った。また他国政府や国際人権機関はベトナムの人権擁護活動家への支持を表明するべきだと述べた。

カン・ティ・テウの息子のチン・バ・トゥは、両親に対する報復を目の当たりにしたことをきっかけに活動家になった。2015年6月、チン・バ・トゥが他の活動家たちとゲアン省の刑務所から出所した父の帰りを歓迎していたところ、私服警察と思われる数人の男に襲われ、チン・バ・トゥは重傷を負った。

チン・バ・トゥは8月に「自身や他の収容者に対する虐待」に抗議して20日間に及ぶハンガーストライキをしたとされる。

逮捕される前、一家の3人はドンタム村の人びとの声を伝える活動をしていた。同村では2020年1月に警察の襲撃によって農民のレ・ディン・キン(84)と3人の警官が死亡した。カン・ティ・テウと息子たちは、一連の土地をめぐる激しい衝突を説明した「ドンタム報告書」の執筆陣に加わっている。

警察は10月、同じくドンタム報告書の執筆者で著名な反体制活動家であるファム・ドアン・チャンを逮捕した。報告書の執筆者のうち唯一逮捕されていない人はベトナム国外に住んでいる。カン・ティ・テウと息子たちの起訴事由はファム・ドアン・チャンとの関係にも基づいているようである。警察は国営メディアに対し、一家の逮捕後に家宅捜索で多数の本や文書を押収したと述べ、ファム・ドアン・チャンによるいくつかの作品の題名を挙げた。

チン・バ・フォンとチン・バ・トゥは逮捕されることを予期していたようである。逮捕の当日、事前に撮影された映像がフェースブックに投稿され、その中で2人は

警察に拷問され殺されることへの懸念を表明し、もしも殺された場合には自分たちに対して行われた犯罪が明らかになるよう、遺体を公開してほしいと支持者や家族に依頼していた。

カン・ティ・テウと息子たちの逮捕以降、警察はカン・ティ・テウの夫、義理の娘のド・ティ・トゥー、義理の息子のファム・スアン・チュオンなど他の家族に対する嫌がらせや脅迫を続けている。

「迫害と残虐行為に直面しながらもカン・ティ・テウとその家族は計り知れない勇気を持って人権擁護を追求してきたが、他方でベトナム政府は市民の不満に耳を傾ける勇気さえも欠いている」とシフトンは述べた。「ベトナムを支援している国際ドナーやベトナムの貿易相手はこうした勇敢な反体制活動家への支持を公然と表明し、ベトナムによるひどい弾圧の実態を非難するべきである。」

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