(バンコク)ミャンマー軍事政権が同国の選挙で選ばれた政府を「非合法組織」に指定したことは、反クーデターの活動家やこの組織について報じるジャーナリストが逮捕される危険を高める、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。国軍の国家統治評議会(SAC)は1957年の非合法結社法を直ちに廃止するべきである。
国家統治評議会は2021年3月21日、連邦議会代表委員会(CRPH)と「その関連委員会」を不法結社法の下の非合法組織であると宣言する決定を出した。植民地時代のこの法律により、ミャンマーの大統領は「法の実施または法と秩序の維持を妨害する目的を持つ」または「公共の治安に対する脅威である」と考えるどんな組織も非合法と宣言することができる。いったん非合法だと宣言されると、同法の下ではその組織への接触や支援はほぼすべてが犯罪とされる。
「不法結社法には、政治活動家や、反体制組織について報じるジャーナリストを訴追するために使われてきたというよろしくない歴史がある」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア担当法律顧問のリンダ・ラクディールは述べた。「CRPHを非合法とすることによって、ミャンマーの軍政はCRPHのメンバーだけでなく、CRPHを支援する、CPRHについて報道する、またはCRPHと接触しただけの人もより高い危険に晒すことになる」。
不法結社法第17条(1)の下では、「非合法組織の構成員である、またはそのような組織の会合に参加する、またはそのような組織の目的のために寄付をしたり受け取ったり求めたりする、またはそのような組織の活動を何らかの方法で助ける」者は誰でも最短で二年、最長で三年の禁固刑を宣告される可能性がある。
第17条(2)の下では、「非合法組織を運営したりその運営を助けたりする、またはそのような組織やその構成員の会合を宣伝したりその宣伝を助けたりする」者は誰でも最短で三年、最長で五年の禁固刑を宣告される可能性がある。
不法結社法は1990年代に政治活動家を恣意的に拘束するために頻繁に利用された。また紛争地域で少数民族の文民を逮捕、拘束するためにも使われてきた。少数民族武装勢力のアラカン軍が2020年3月に非合法組織に指定されると、同法はラカイン州でアラカン軍を支援したとして数十人の人を逮捕、訴追するために使われた。
不法結社法はまた、少数民族武装勢力と接触しただけで人を逮捕、訴追するためにも使われてきた。これにはカチン独立軍を訪ねたとされて二年間の懲役刑を宣告された2人の宗教間活動家と、タアン民族解放軍が行った麻薬焼却式典について記事を書くために取材に行った3人の記者も含まれる。
ディヴェロプメント・メディア・グループの編集長であるアウンマームウーは、2019年5月に不法結社法に基づいて警察に起訴されたことを知って以来、身を隠している。警察は起訴の根拠を示す文書は示していないものの、アウンマームウーは同グループがミャンマー国軍とアラカン 軍との紛争を報じていることに関連して起訴されたと考えている。過去の事例を見ると、不法結社法はCRPHの活動を報じるジャーナリストなどに対して使用される可能性が高い、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。
ミャンマーのジャーナリストはすでに軍事政権からの深刻な脅威に直面している。2月1日のクーデター以降、国家統治評議会は5つの報道機関を禁止し、40人近いジャーナリストを逮捕、拘禁している。10人のジャーナリストが刑法第505A条に違反した疑いで起訴された。これは軍事政権が新たに採用した幅広い規定で、「恐怖を引き起こす」コメントをする者、「フェイクニュース」を広める者、「政府職員に対して直接的または間接的に犯罪行為を扇動する」者は最長で三年の禁固刑を宣告される可能性がある。
「不法結社法は暴力的な植民地時代の遺物であり、とうの昔に破棄されているべきだった」とラクディールは述べた。「軍政は同法を廃止し、同法の下で現在進められている訴追をすべて取り下げるべきである」。