(ワシントンDC)―ドナルド・トランプ米大統領が2020年5月28日に発した大統領令「オンライン検閲の防止」は、インターネット上の表現の自由に対する世界規模の重大な攻撃だ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。
この大統領令は、ソーシャルメディア企業の法的責任を免除する米通信品位法第230条 (c) (1) について、企業がコンテンツを「誠意(good faith)」をもって制御しているか否か次第にすることを目的とするもの。この「誠意」基準の明確化は、連邦通信委員会 (FCC) が担うことになる。この大統領令は、大統領府が「誠意がない」とみなすようなかたちでソーシャルメディア企業がプラットフォーム上の投稿を制御しようとした場合、免責の権利を剥奪できるようにする内容で、ソーシャルメディア企業は利用者からの訴訟の洪水に飲み込まれる脅威にさらされる可能性がある。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのデジタル権利上級調査員兼アドボケートのデボラ・ブラウンは、「トランプ大統領の大統領令は、政府がソーシャルメディア企業のコンテンツ制御方法に反対するかもしれないので、プラットフォームそのものと投稿者を罰するという脅威に等しい」と述べる。「トランプ大統領が郵送投票は『不正投票に繋がる』としたツイートに、ツイッター社が事実確認を促すリンクを追加したことが、今回の背景にあるとみられる。」
ソーシャルメディア企業のようなインターネット仲介業者がホストするコンテンツをめぐり、通信品位法が定める免責権の誤解釈に加えて、この大統領令は政府が「言論の自由を制限した」とみなすプラットフォームに対する連邦政府の支出・マーケティング、そしてそこでの広告を禁じるとともに、ツイッターやフェイスブックなどのサイトのやり方に関して規制当局や検察官に対し、虚偽または不当でないか調査を指示する内容となっている。本大統領令は司法の場で争われることになろう。
郵送投票と不正投票の関する大統領の誤った主張をツイッター社が要事実確認とした数日後出されたこの大統領令は、オンラインプラットフォームは「国家の言説を傷つける選択的な検閲を行っている」と記述。ソーシャルメディアプラットフォームは、コンテンツ管理および削除の方法が偏向していると長年非難されてきた。そうした非難は、反保守派だということから、草の根運動家や人種的少数派よりもエリートや政府に偏向しているというものまである。
利用者がコンテンツを投稿するソーシャルメディアプラットフォームなどのインターネット仲介業者は、通信品位法第230条により、投稿されたコンテンツに対する責任を免除されている。同時に、投稿の削除やコメント付け、人を不愉快にさせる第三者の投稿への警告付けといった各プラットフォームの方針を実行しても法的責任を問われることはない。そのため、ソーシャルメディア企業は誤情報よび偽情報、ヘイトスピーチ、テロリストのコンテンツなど、違法コンテンツや自社の利用規約やコミュニティガイドラインに反する言論に対抗措置をとることができる。
ソーシャルメディア大手は多くの点で公共広場的役割を担っており、コンテンツ管理の方法や恣意的な検閲防止予防のためのセーブガード手続きについて、より透明性を保ち、かつ説明責任を担う必要がある。政府高官などの公人の発言や行動を知ることには強い公共性があり、こうした企業はプラットフォームでの公人の発言が他者の権利を扇動や虚偽で脅かす際に正しいバランスで対応するのに苦労している。これら大手は世界規模のアクターであるから、利用規約やコミュニティガイドラインを国際人権基準に合わせる必要がある。
ブラウン上級調査員は、「ソーシャルメディア企業が自社プラットフォームでコンテンツを許可や禁止することについては、確かに多くの論争がある。が、プラットフォームの免責の権利を剥奪することでは解決しない」と指摘する。「それどころか、より多くの検閲をもたらすことになる。世界各地の指導者に対し、自分の好きなようにプラットフォーム上のコンテンツを規制せよと求める免状を与えてしまうようなものだ。」
米国:トランプ大統領がSNSプラットフォームを攻撃
大統領令は、政府を不快にする企業を標的にする内容
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