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バングラデシュ:サイクロンで危険にさらされる沈泥島

拷問や限定的な医療および食糧を訴えるロヒンギャ難民

NASA satellite imagery shows Cyclone Amphan over the Bay of Bengal in India, May 19, 2020, which made landfall on Bhasan Char May 20, 2020.  © 2020 NASA Worldview, Earth Observing System Data and Information System (EOSDIS) via AP

(ニューヨーク)-バングラデシュ政府は、適切な保護・安全対策が施されていないうえ、「スーパーサイクロン」の通り道となっている沈泥でできた離島ブハシャンチャールに、300人超のロヒンギャ難民を隔離していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。これまで、サイクロンが同国沿岸部を直撃した後に3人が犠牲になったと報じられている

当局は早急に難民の安全および移送を確保する措置をとるべきだ。具体的には、40人近くの子どもを含む難民をできるだけ早くコックスバザール県の難民キャンプに戻すことが挙げられる。国連難民機関やその他の人道支援団体が、彼の地で重要な支援サービスの提供や離散家族の再会支援を準備しながら待機している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムズは、「バングラデシュ政府は沿岸部で立ち往生していたロヒンギャ難民を適切に受け入れこそしたが、サイクロンの時期に小さな離島に留めておくことは危険かつ非人道的だ」と指摘する。「ブハシャンチャールが『水上』拘禁施設化するという恐れは、今や『水没した』それへの恐れに変わってしまった。」

サイクロン「アムファン」は、2020年5月20日夕方にバングラデシュ沿岸部に上陸したが、その後予想進路をわずかにはずれ、ブハシャンチャールは直撃を免れた。同国国土省は以前、ブハシャンチャールが満潮時に直撃を受ければ水没する可能性があると報告。同島には約300人のバングラデシュ治安部隊も駐屯している。

マレーシア、タイ、ミャンマー、およびバングラデシュの当局がロヒンギャ難民のボートの着岸を拒否し、2カ月間たらい回しにした後の5月上旬、最終的にバングラデシュが救出した。 同国は当初、本土の難民キャンプで新型コロナウイルス感染症が広がるのを防ぐために、難民を離島ブハシャンチャールに一時的に隔離するとしていたが、その後AKアブドゥル・モメン外相は、それが「おそらく」無期限になると述べている

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ブハシャンチャールに隔離された難民およびコックスバザール県のキャンプにいるその家族など、計25人に聞き取り調査を行った。離島にいる難民たちは、移動の自由や食糧・生活飲料水・医療へのアクセスが限定的な刑務所さながらの状態にあると証言。治安部隊による暴行を訴える難民もいる。

娘たちがブハシャンチャールにいるというある難民は、サイクロンの最中にその安否を案じていた。「強風がいつ建物を吹き飛ばしてもおかしくありません。海の真ん中にある監獄島のようなものです。」

インドおよびバングラデシュは、サイクロン「アムファン」の上陸をにらんで、沿岸部から200万人超の住民を避難させていた。しかし、バングラデシュ当局は、ベンガル湾で過去20年間、徐々に泥が蓄積されてできた40平方キロメートルの離島ブハシャンチャールにいるロヒンギャ難民を避難させることはなかった。ヤン・リー ミャンマー国連特別報告者(当時)は、2019年1月に同島を訪れた際、「はたして本当に居住可能かどうか」疑問を呈している。

難民は全員、サイクロンが上陸する前に島内にある4階建ての避難所に移動させられていた。が、バングラデシュ当局は国連の技術専門家に同島への十分なアクセスを与えておらず、居住性の有無や「アムファン」をめぐる非常事態準備の評価が不可能なままだ。

バングラデシュ政府は以前、難民の意志に反してブハシャンチャールに留まるよう強制することはないと約束していたが、関係当局者は難民にはっきりと本土へ戻ることはないと告げている。コックスバザール県にいる難民のひとりは、島に送られた姉が海軍将校から、「ミャンマーに送還されることはあっても、[コックスバザールの]難民キャンプに戻ることは絶対ない」と言われたと証言した。ブハシャンチャールにいるある難民も、軍当局者が「難民キャンプに戻れるなんて考えるな。家族全員ここに来ることになるだろうから」と言われたという。

ブハシャンチャールの難民は、国外脱出の仲介業者についての尋問の際、子どもを含む男性難民が兵士に威嚇・殴打されたと話す。女性難民たちは取調べ室からの悲鳴を聞いたという。 独房に入れられ殴られたと証言する子どももいた。「ある時点では、僕自身が[仲介業者の]ひとりと疑われ、殴る蹴るの暴行をうけました。まだちゃんと歩くことができず、拷問の痛みを身体中に感じます。」同じく当局者に威嚇されたという別の難民は、「他の男たちがどんな風に痛めつけられたか知らないのか。本当のことを言わないと同じことになるぞ」と言われたという。

難民たちはまた、島内の罰則についても詳述した。あるロヒンギャ女性は5月17日に、禁じられている携帯電話を使用した罰として、兵士が2人の女性に1時間以上も炎天下で立っているよう強制したのを目撃。別の難民は、食料品を買うために店に行き、避難所を去ったことをとがめられて沿岸警備隊の将校に殴られたと証言した。「その殴打のあざが体中にあります」と彼は言った。

エナムール・ラーマン防災相は、ブハシャンチャールを食糧・生活飲料水・医療・サイクロン防災センター、および電気の設備がととのった「スーパータウンシップ」と表現したが、難民たちは生活飲料水や医療の不足を訴えており、子どもたちは本や教育にもアクセスできていない。

1日2回調理された食事が供給されるが、それ以上を求めると非難されるという。ある女性は5歳と7歳の子どものために、より栄養価の高い食事を頼んだところ、国際支援機関によって「甘やかされた」と当局者にとがめられたと語った。別の女性は、「少なくともいくらかの食事をできることを神とバングラデシュに感謝する」よう言われた。「 そもそもこの国から追い出されて当然なのだ。」

難民たちは何カ月も海で立ち往生を余儀なくされたために、深刻な健康問題を抱えているが、島内には十分な医療がない。ある難民は、「一部の女性は皮膚疾患や下痢症状があるけれど、十分な治療を受けられません。[本土の]収容所なら少なくとも診療所や「国境なき医師団」の病院に行くことができるのに」と話した。姉が島にいる難民のひとりは、姉が糖尿病の薬を手に入れることができてないと語る。医者は痛み止めとしてパラセタモール錠を調剤するのみだという。

ボートに乗っている間あるいはその後に、女性や少女が性暴力をはじめとする暴力にあっていた可能性も懸念されている。ある医療従事者は、「レイプやその他の性的または性別に基づく暴力があったとしても、必要不可欠な医療やサイコセラピーにアクセスすることはできないだろう」と語った。ブハシャンチャールでは性暴力の被害者に対する保護サービスや十分な医療はない。

そもそもバングラデシュ当局は、サイクロン以前に、国連および非政府系団体が表明していた懸念に注意を払い、ロヒンギャ難民をコックスバザール県のキャンプに速やかに戻すべきだった。5月15日、アントニオ・グテレス国連事務総長はバングラデシュ政府に対し、2週間の隔離期間終了後、第1弾は5月16日、第2弾は5月21日に、難民を本土のキャンプに戻すよう要請した。サイクロンがブハシャンチャールからの移送の緊急性を浮き彫りにしたかたちだ。

アダムズ局長は、「サイクロンは雨季の始まりを告げる。密集したボート上で飢えに苦しみながら何カ月も過ごさなければならなかった難民たちは、ブハシャンチャールの離島に拘禁され、暴行を受けているのに加え、今や新たな危険に直面することになる」と指摘する。「バングラデシュ政府は難民をただちに本土のキャンプに移送すべきだ。そこなら彼らが心から必要としている医療や心理社会的治療が受けられるのだから。」

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