Myanmar troops take part in a military exercise, February 3, 2018.

© 2018 Reuters

(ニューヨーク)ミャンマー政府は、ロヒンギャへの残虐行為との関わりをめぐり、最近軍役を解かれた将校2人を訴追すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ミャンマー国軍は、2018年6月25日に公式Facebookページに投稿した声明で、マウンマウンソー少将の免職を発表。その後にアウンチョーゾウ中将の辞任を発表した。

2人はともに、「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)による2017年8月25日の治安施設等への襲撃を受けて行われた、ラカイン州での軍事行動を指揮していた。国軍部隊はマウンマウンソー元少将とアウンチョーゾウ元中将の指揮の下、殺人、レイプ、大規模放火などの軍事作戦を実行。ロヒンギャ難民70万人が隣国バングラデシュに避難した。ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査によれば、こうした人権侵害は人道に対する罪に該当する。国軍の6月25日付声明は、2人の虐殺行為への関与に言及しないかわりに、ARSAの襲撃に先立って2人が見せた管理能力と遂行能力の低さを中心に取り上げた。

「指揮下の部隊が民族浄化を行った軍高官を引退させることは、大規模な残虐行為の対応としてはまったく不十分だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ・アジア局長のブラッド・アダムズは述べた。「今回の事件は、ミャンマー国軍が重大犯罪に関するアカウンタビリティを果たすつもりがほとんどないことの証拠なのである。」

この軍高官2人は、ラカイン州北部でのロヒンギャへの残虐行為に責任があるとして各国の制裁対象となっている。マウンマウンソー元少将は2017年12月21日に米国による制裁の、また2018年2月16日にカナダによる制裁の対象者となった。6月25日、欧州連合(EU)カナダは、マウンマウンソー元少将、アウンチョーゾウ元中将らミャンマー治安部隊関係者7人について、その当時ラカイン州北部にいたか、軍事作戦に責任があるとして新たな制裁対象とした。

Releasing from service two generals whose forces committed ethnic cleansing is a grossly inadequate response to wide-ranging atrocities.

Brad Adams

Asia Director

マウンマウンソー元少将は、ラカイン州での部隊展開と作戦行動を指揮する西部軍団(Western Command)の元司令官。6月25日の免職に先立ち、2017年11月には司令官から「予備」役扱いとされ、司令官を外されていた。

声明は、マウンマウンソー元少将について複数の欠点を指摘。ARSAの襲撃について事前の情報収集のほか、襲撃に備えた必要な行動や準備を行わなかったこと、またラカイン州の治安確保に失敗したことなどを挙げた。だが声明は、西部軍団指揮下の部隊が、元少将が指揮監督する地域内で行った残虐行為については一切言及していない。

アウンチョーゾウ元中将は、西部軍団など3つの地方軍団(RMC)を監督する第3特別作戦局(BSO-3)の元司令官、マウンマウンソー元少将の上司だった。声明は、ラカイン州での襲撃事件、および「上からの」政策実行について、元中将にその遂行能力がなかったとした。報道によれば、元中将は「健康上の理由」などから職務を解任された後、5月22日に軍からの退役を許可された。

2人の軍高官はともに、2017年8月下旬に治安部隊がラカイン州で開始した民族浄化作戦に関して、軍と治安部隊の行動の権限と責任をもつ地位にあった。慣習国際人道法における司令官の責任によれば、司令官や上司は部下が行った犯罪について、そうした犯罪を知っていた、また知るべきでありながら、それを防ぐか、実行者を処罰するための行動を取らなかった場合には刑事責任を問われる、とされている。

ミャンマー政府は最近、ラカイン州での人権侵害の訴えを調査する調査委員会(委員は3人、うち1人は国際社会の代表)の設置計画を発表した。しかし政府は、政府治安部隊によるロヒンギャへの犯罪行為について信頼に足る調査の実施に何度も失敗してきたと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。2016年に行われた、ラカイン州での暴力に関するミャンマー国軍の調査では、ミャンマー治安部隊が大規模な放火、レイプ、殺人を行い、ロヒンギャ約9万人がバングラデシュに避難したにもかかわらず、2件の小さな人権侵害が認定されただけだった。2回目の調査は、1回目と同じ軍司令官の指揮下に行われ、2017年8月に始まった軍事作戦では「無実の人びとの殺害は1件もなかった」との結論が出された。

6月27日、国連のミャンマーの人権問題に関する特別報告者・李亮喜氏は、政府が新たに設置した委員会の目的について、とくに同国政府が国連のマンデートを受けた調査委員会の入国を依然拒否していることを踏まえ、疑問を呈した。李氏はまた人権理事会へのアップデートのなかで、ミャンマーの状況は行われた犯罪行為のアカウンタビリティ追求を必要としており、国際刑事裁判所(ICC)の注目を「明らかに正当化する」と述べた。さらに国連人権理事会は、犯罪容疑者が今後訴追されるのに備え、アカウンタビリティ・メカニズムを確立すべきだと付け加えた。

国連安全保障理事会はミャンマーの状況をICCに付託するべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ICC議定書によれば、同裁判所が活動できるのは、国家が国際法違反の重大な犯罪行為を捜査または訴追する「意志または能力ない」場合に限られる。ミャンマーはICC加盟国ではなく、ICC管轄権も受け入れていないため、国連安保理はミャンマーの状況をICCに付託する必要がある。

「ミャンマーがこれまで虐殺行為を否定してきたことを踏まえれば、政府が提案している委員会が信頼に足る証拠を提出することはほぼ望めない」と、アダムズ局長は述べた。「各国政府による対象限定型制裁は非難を示す強いメッセージであり、アカウンタビリティ追求の手段でもある。しかし重大犯罪の責任者に法の裁きを受けさせることの代わりにはならない。関係諸国は国連安保理に対し、ミャンマーの状況をICCに付託するよう強く働きかけ、収集された証拠が訴追に使われることを保証すべきである。」