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(ベイルート)— サウジアラビアの刑事司法制度は、パキスタン人容疑者の適正手続および公正な裁判への権利を踏みにじっている、とヒューマン・ライツ・ウォッチおよびジャスティス・プロジェクト・パキスタン(Justice Project Pakistan)が本日発表の報告書内で述べた。パキスタン人容疑者は法的支援を求めたり、サウジアラビアの裁判所手続を理解し、あるいはパキスタン大使館関係者に相談する際に多大な困難に直面している。刑事司法制度上のはなはだしい欠陥が、こうした人びとにとりわけ重くのしかかっている。

報告書「『クモの巣にとらわれた』:サウジ刑事司法制度におけるパキスタン人の取扱い」(全29ページ)は、パキスタン人容疑者に対する刑事事件で、サウジ裁判所による適正手続違反が常態化している実態を調査・検証したもの。訴追や公判なき長期間拘禁、法的支援へのアクセス欠如、自白調書署名への圧力、長期間の恣意的拘禁から逃れるための事前の実刑判決受入れへの圧力、質の低い翻訳などの問題がある。刑務所内の虐待行為や劣悪な環境を訴える容疑者も複数いた。

Families of detained migrant workers protesting inadequate Pakistani government protection of Pakistani citizens in Saudi Arabia outside the Lahore Press Club in 2016. © 2016 Justice Project Pakistan

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局局長サラ・リー・ウィットソンは、「長年にわたる有益な改革にもかかわらず、サウジ当局は刑事事件で、サウジ国民そして外国人の権利をともに疎んじている」と述べる。「パキスタン人容疑者たちの取扱いは、サウジアラビアの法の支配の改善の必要性を示す。」

サウジアラビアには1,200万人の外国人が滞在しており、これは全人口の3分の1以上にあたる。パキスタン人約160万人のほとんどは移住労働者で、同国の移民コミュニティとしては2番目に大きい。

ヒューマン・ライツ・ウォッチとジャスティス・プロジェクト・パキスタンは、近年サウジアラビアで拘禁され、裁判にかけられた12人のパキスタン国民ならびに他9人の容疑者の家族7人に聞き取り調査を実施した。関係する19件の刑事事件は、窃盗や書類の偽造、殺人や違法薬物の密売に至るまで様々で、サウジアラビアではこれらは多くの場合、死刑も適用される犯罪だ。

適正手続違反は、特に重大事件に関係する被告に最大の影響を与えた。2014年初め以来、サウジアラビアが処刑した外国人のうちパキスタン人は73人で、その数は外国人で最大だ。その大半がヘロインの密輸によるものだ。今回の調査で検証した違法薬物関連事案のうち3件で死刑判決が下され、15年〜20年の実刑判決が4件、4年の実刑判決が1件、のこり3件は公判中となっている。

家族らは、うち4人の被告については、違法薬物の密売業者から強制的に「運び屋」として働かされていたが、サウジ裁判所はそうした背景には聞く耳を持たず、捜査をしたり、判決中に強制自白の訴えに耳を貸そうとはしなかったと語った。

死刑判決以外の全事案で、被告は十分な弁護機会を与えられなかった。最初の公判審理の際に裁判官は、警察の報告書のみに基づいて事前に作成された有罪判決および量刑を言い渡し、被告にそれを受け入れるよう求めた。被告は書面で決定に不服を申し立てることは許されたが、続く公判でも同じ決定を下されている。被告たちにとっては、決定を受け入れない限り、無期限に拘禁されると感じられる。

ある被告は、「裁判官は私たちの事案ファイルを前にして、こちら側の話は聞かずに判決を言い渡しました」と証言する。

9人の被告は、読んだり、検討したり、完全に理解したりすることもなく判決を受け入れるよう、裁判所から圧力を受けたと話す。飲酒と喧嘩で10日間の服役と80回のむち打ちの判決を受けたと思っていたが、後日これに強制送還も含まれていたことを知りショックを受けたという人もいる。

聞き取り調査に応じた人のうち、弁護人がいたのは1人だけだった。その他の人は刑務所にいる間に弁護人を探すこともできず、弁護士費用を支払う余裕もなかったからだ。また、裁判所指名の翻訳者が適切なサービスを提供せず、時には故意に誤って被拘禁者の陳述を訳したり、アラビア語の裁判文書の内容を不正確に記述したと、4人が証言している。

また、被拘禁者やその家族の中には、刑務所について、過密状態や不衛生な設備、ベッドやシーツの不足、お粗末な医療など、劣悪な環境だと訴えた人たちもいた。元被拘禁者2人と現在拘禁されている1人は、サウジ刑務所当局者が尋問中にビンタやベルトでの殴打、電気ショックといった虐待を行っていたと証言。別の被拘禁者の家族は、当局者が夫を「棒」で殴ったと語っている。

1988年にサウジアラビアも批准した「領事関係に関するウィーン条約」のもと、サウジアラビアはパキスタン国民を逮捕した際、パキスタン領事関係者にその旨を知らせる義務を負っている。しかし今回の調査で検証した事案では、サウジ当局が領事通知をした形跡がみあたらなかった。ジャスティス・プロジェクト・パキスタンはパキスタン外務省関係者に書簡で、パキスタン出身の被拘禁者全員について知らせたが、返答は得ていない。聞き取り調査に応じた家族はほとんど、サウジアラビアで身内が逮捕された際に、どの政府機関に連絡すべきかを知らなかった。

パキスタン人容疑者のほとんどは、そもそもパキスタン政府当局が何も力になってくれないと考え、在リヤドのパキスタン大使館や在ジッダ領事館の領事サービスは最初から当てにしていなかった。 領事館関係者と面会した人は1人だけで、大使館関係者に連絡をとったその他の人は、強制送還の際の支援を受けたにすぎない。その他の国の領事館とは異なり、パキスタン領事館がサウジアラビアの刑務所を訪れることはめったになかったと、証言者たちは口をそろえた。

前出のウィットソン局長は、「サウジアラビア政府によるパキスタン国民の取扱いにはなんの言い訳も通用しないが、パキスタン政府当局も拘禁中または裁判中の自国民のための領事サービスを大幅に改善する必要がある」と指摘する。「そうすればパキスタン人容疑者が、サウジアラビアの恣意的かつ不公正な司法制度と闘えるチャンスが高まるだろう。」

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