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米国:LGBTの平等を脅かす州法

「差別ライセンス」法が各種サービスへのアクセスを妨害

In response to the state’s “license to discriminate” bill, Steve Long displays a sticker welcoming LGBT customers to his restaurant in Jackson, MS, on October 2, 2017.  © 2017 Rogelio V. Solis / AP Photo

 

(ニューヨーク) — 米国各地の州議会が可決した「宗教例外」法の新たな波が、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(LGBT)の人びとの権利を侵害している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。確固たる差別禁止制度が存在しない場合、こうした法律が宗教的自由をまもる善意の措置ではなく、むしろ差別のライセンスとして機能してしまう。廃止するべきだ。

報告書「『平等がほしいだけ』:米国のLGBTの人びとを脅かす宗教例外および差別」(全41ページ)は、最近の「差別ライセンス」法が養子縁組や里親委託、保険制度、一部のモノおよびサービスへのアクセスにおいてLGBTの人びとへの差別を生み出している実態を詳述した内容。これらの法律は、LGBTの人びとの人間関係やアイデンティティに、道徳・宗教が理由で反対する意見と、LGBTの人びとの権利とのバランスが取れていない内容だ。調査結果は、こうした宗教上の免除が差別的な拒絶を促し、LGBTの人びとがサービスを受けることを妨げ、かつ尊厳を損なっていることを浮き彫りにした。

Demonstrators protest during oral arguments in the Masterpiece Cakeshop vs. Colorodo Civil Rights Commission case at the Supreme Court in Washington, U.S., December 5, 2017.

Across the United States, state laws are being passed or debated that would allow businesses, adoption and foster care agencies, and even healthcare providers to discriminate against LGBT people.

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ヒューマン・ライツ・ウォッチのLGBTの権利プログラム調査員ライアン・トレスンは、「これらの法律を『例外』と位置付けること自体、誤解を招く」と指摘する。「そもそもLGBTの人びとを差別からまもる法律が十分でない現場に照らせば、議員たちは逆行していると言わざるを得ず、ルールを作る前に例外作りにいそしんでいる。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、宗教例外が近ごろ法律として制定された複数の州で、そこに住むLGBTの人びと、サービス業者、政策提案者112人に聞き取り調査を実施。

調査の大半は、ミシシッピ州、テネシー州、ミシガン州の3州で行われた。ミシシッピ州では、同性婚、婚外交渉、トランスジェンダーのアイデンティティに対する、宗教上または道徳上の反対意見を持つさまざまな個人・企業・サービスプロバイダーに対し、差別を行うことを州法が認めている。テネシー州では最近制定された州法により、精神保健カウンセラーが宗教的信念に基づいてクライアントを切り捨てることができる。そしてミシガン州は、州からの助成を受けている養子縁組機関・里親支援機関が道徳上・宗教上の反対意見を持つ場合に、LGBTの親に子どもを委託することを拒否する権限を明確に付与した。アラバマ州、ノースダコタ州、サウスダコタ州、テキサス州、バージニア州でも、養子・里親縁組の例外が実施されている。

現在、19州とコロンビア特別区(ワシントンDC)のみが、雇用・住宅・公共施設における性的指向および性自認に基づく差別を明確に禁じている。他に3州が一部を保護している。ニューハンプシャー州とウィスコンシン州では、性的指向に基づく差別は禁じているものの、性自認による差別は禁じていない。ユタ州では、雇用と住宅における差別は禁じられているが、公営住宅が含まれていない。残り28州には、LGBTの人びとに対する差別を明示的に禁ずる法律がない。

LGBTの人びとに対する差別への明確な保護が存在しない州では、この広範な例外条項の存在の結果、養子縁組機関・里親支援機関や医療機関、事業主、およびサービス提供者がLGBTの人びとへのサービスを拒めるという考え方を強化している。ミシガン州で宗教ベースの里親縁組機関から手配を断られたレズビアン女性のエリン・バスク=サットンさんは、「要は、見知らぬ人に私はよい母親にはなれないといわれたのですから、これまでの人生で最悪の経験でした」と話す。

たとえ直接サービスを拒否されないとしても、宗教例外が許される限り、LGBTの人びとは差別を恐れ、サービスを求めることをやめてしまう。LGBTの人びとはこれまでも、公共圏での完全かつ平等な参加へ壁を感じたり、差別に直面している。これらの法律の数々は、こうした差別的環境を悪化させてしまう。

「拒否されることを恐れて、最初から[サービスを求めようと]しない人たちを知っています」と、テキサス州のトランスジェンダー政策提言者リサ・シェプスさんはいう。「テキサス州の田舎ならどこでもある光景です。」

これらの法律は、宗教上の自由を守る法律と位置づけられているが、LGBTの人びとの平等の前進、とりわけ同性婚の権利に対する反対として生まれてきたものにほかならない。ミシガン州の養子および里親縁組の例外に反対したジェフ・アーウィン下院議員は、「これら法律の目標は、同性婚カップルに対する差別を各機関に認めることだ」と指摘した。LGBT差別のために法律が悪用されないようにする法律修正を議会が拒否した例もある。

「差別ライセンス法」がある州に住むLGBTの人びとにも、このメッセージは伝わっている。ミシシッピ州在住のレズビアン女性であるブランディライン・マンガム=ディアーさんは、「二級市民として尊敬されないというわけです。いえ、市民でさえない、アウトサイダー扱いですね」と語った。

2018年には、すでにフロリダ州、ジョージア州、イリノイ州、オクラホマ州、ワシントン州で例外法案が提出されている。アラスカ州、アリゾナ州、フロリダ州、アイダホ州、インディアナ州、ケンタッキー州、ミズーリ州、ネブラスカ州、ニューハンプシャー州、ニューヨーク州、オハイオ州、ペンシルバニア州、ユタ州、バージニア州、ウェストバージニア州では差別禁止法案が検討されている。

議会は、雇用・教育・住宅・医療・サービスへのアクセスで、性的指向および性自認に基づく差別を禁ずる法律を制定すべきだ。全面的な例外を認めている各州はこれを廃止すべきだ。そしてこうした法案を検討している議会は、LGBTの人びとの権利と幸福を危うくしない、よりバランスのとれた法律を目指すべく、全面的例外を許容する法律を拒否すべきだ。

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