Japanese Foreign Affairs Minister Fumio Kishida speaks during a joint news conference with his Philippine counterpart Perfecto Yasay (not pictured) in Davao city, southern Philippines on August 11, 2016. 

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(東京)― 日本政府は国際基準に達していないフィリピン国内の薬物更生施設への資金提供を一切止めるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは岸田文雄外務大臣および国際協力機構(JICA)北岡伸一理事長宛書簡で指摘した。JICAは2017年4月にフィリピン政府との間で、「フィリピン保健省による違法薬物患者の治療体制・政策を強化」を目的とした18億5,000万円を限度とする無償資金協力の贈与を決めている。

「日本政府はフィリピンでの薬物使用者更生事業について、人権侵害を招きかねない手法への支援は見合わせるべきだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗は述べた。「JICAは、いかなる薬物使用者更正プログラムを支援するのか、その内容を明確にするとともに、薬物治療を希望する人びとの人権を侵害する事業や施設を支援する結果となることを防ぐために、日本政府がいかなる予防措置を取っているかについても正確な情報公開を行うべきである。」

フィリピンが本当に必要としているのは、国際基準や人権原則を満たす、非強制型・地域密着型の薬物依存治療だ。しかし、JICAもフィリピン保健省も、フィリピン政府の資金使途計画を詳しく明らかにしてはいない。しかし安倍首相が2017年1月の日・フィリピン首脳会談で行った「違法薬物対策に関し,フィリピンと手を携え,一緒になって有意義な支援策を考えていきたい」との申し出については、ドゥテルテ大統領の掲げる「麻薬撲滅キャンペーン」に関わる人権侵害の深刻さを考えると、疑問符がつく。ドゥテルテ大統領が2016年6月に就任してから、警察と正体不明の殺し屋により、薬物使用者あるいはディーラーとされた人びと7,000人以上が殺害されている。

薬物使用者更生施設の需要急増へのフィリピン政府の対応には、2016年12月に中国の資金援助で、マニラの北120kmにあるマグサイサイ陸軍基地内に設置された「1万床の巨大治療更生施設」などがあるが、そこでの更生事業は、科学的根拠に基づく薬物治療ではなく、ヒューマン・ライツ・ウォッチが東南アジア各地で明らかにしてきた人権侵害型モデルのコピーになりかねないとの懸念もある。

日本・フィリピン両政府は、カンボジア中国ラオスベトナムで明らかになった人権侵害型の手法の採用を回避すべきだ。これらの国で行われている非自発型の薬物更生プログラムは深刻な人権侵害につながっている。各国の「治療施設」なる場所では、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査によると、科学的根拠に基づく治療的支援ではなく、強制労働や軍事教練からなる「治療」が行われているほか、拷問や虐待が日常的であり、こうした収容施設の人びとは法の適正手続きなしで収容されていた。

 「日本政府は、フィリピンの薬物治療に有意義な支援を行うべきだ。それは、多数の犠牲者を出すドゥテルテ大統領による薬物撲滅戦争を隠す役割を果たすような資金提供であってはならない」と前述の土井代表は述べた。