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中国:「失踪」が懸念される3人の活動家

11月から行方不明の人権活動家たち 責任を明らかに

(ニューヨーク)― 中国政府は、強制失踪させられたとみられている著名な3人の人権活動家について、ただちに所在を明らかにすべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。人権運動家の劉飛躍(Liu Feiyue)氏、弁護士の江天勇(Jiang Tianyong)氏、活動家の黄琦(Huang Qi)氏は、以前から当局の嫌がらせを受けており、それぞれ2016年11月17日、21日、28日から行方が分からなくなっている 。

Police arrest a man in downtown Shanghai after calls for a "Jasmine Revolution" protest on February 27, 2011. © 2011 Reuters

家族や弁護士にアクセスできない秘密拘禁下では、拷問にあう危険性が著しく高まる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国部長ソフィー・リチャードソンは、「中国当局は、これら3氏の家族に公式に所在を知らせ、すみやかに家族の面会と弁護人の接見を許可するべきだ。今回の強制失踪に関与した政府当局者は、拘禁下で3氏を苦しめるいかなる不当行為に対しても責任がある」と述べた。

湖北省に拠点を置く、草の根の人権モニタリング組織「市民権と生活ウォッチ」(民生観察・Civil Rights and Livelihood Watch)の創設者である劉飛躍氏(46歳)は11月17日、同僚に対して公安局に連れさられそうだと携帯メッセージを送付。翌18日、湖北省の警察が劉氏の家族に対し、同氏は「国家政権転覆」の容疑で拘束されたと口頭で伝えた。しかし、同氏の家族は依然として書面による告知は受けていない。劉氏の弁護士、張科科(Zhang Keke)氏は12月6日、警察から口頭で、劉氏が隋州市第1看守所(拘置所)に、「転覆扇動」の罪の容疑で拘禁されたと知らされた。警察関係者は、劉氏の拘禁通知を「後日」法にならって送付すると述べ、また張弁護士の接見要求は「検討」が済むまで認めないとしている。

中国刑事訴訟法は、刑事拘禁から24時間以内に家族への通知を義務付けているが、「国家安全保障」や「テロリズム」が関係する事案や、通知により「捜査が妨げられる」可能性があると警察が判断した場合には、これが免除される。同様に、弁護人が求めれば48時間以内に被疑者との接見が認められているものの、「国家安全保障」「テロリズム」「大規模汚職」に関係する事案の場合、警察の事前承認が必要になる。嫌疑を裏付ける入手可能な情報はない。転覆扇動罪には、最長で15年の刑が科される可能性がある。

11月21日に、在北京市の人権弁護士 江天勇氏(45歳)は、湖南省長沙市に逮捕された友人の家族を訪ねた後、帰宅途中に行方不明になった。江氏の家族は数日の間、氏が住民登録していた長沙市、北京市、湖南省の複数の警察署に失踪を届け出ようとしたが、どの警察も何も手を打たなかった。江氏の弁護士 覃臣寿(Qin Chenshou)氏は、「12月13日に長沙駅でとある警察官から、江氏が『他人の身分証明書を使って20枚以上の切符を購入した』罪で9日間の行政拘禁下にあったと伝えられた」と話す。その警察官によれば、江氏は12月1日に釈放されており、家族には通知を郵送したが戻ってきてしまったという。しかし、その警察官は覃弁護士に通知のコピーを提供することを拒否した。さらに、「江氏が拘禁されたままなのかどうか、あるいは江氏の所在についてはこれ以上は知らない」と述べたという。

12月15日、米国に住んでいる江氏の妻 金变玲(Jin Bianling)氏は、警察が12月4日に北京市にある江氏のアパートに踏み込んだことを知ったと話した。12月16日の国営新華社通信の報道によると、江氏は「国家機密文書を違法に保持」し、「他国に国家機密を違法に提供」したかどで、不特定な「強制的刑事措置」のもと身柄を拘束されているという。しかし家族は、そのような通知を受けていない。報道では氏の行方も明らかにされていない。

11月28日、四川省の警察官が人権モニタリングサイト「六四天網」(64tianwang)を開設した黄琦氏(53歳)を自宅から連れ去ったうえで家宅捜索した。黄氏の83歳になる母親の所在も不明だが、サイト運営に携わるボランティアたちは警察の関与を疑っている。黄氏の拘禁に関する正式な通知はなされていない。氏は重度の腎臓疾患を患っており、毎日の服薬が欠かせない。
 
3氏は長年にわたり中国の人権促進活動に貢献してきた。劉氏の組織「民生観察」は2006年の設立以来、一貫して中国の人権侵害を報告し続ける草の根的なプラットフォームだ。これまでにも、非自発的な精神科拘禁の濫用をはじめとし、活動家、嘆願者、デモ参加者の拘禁、投獄および嫌がらせなどを記録してきた。 2009年に政治的な理由で弁護士資格を剥奪された江氏は、長年、法輪功修行者やキリスト教徒に法的助言をするなど、人権分野の事案で積極的に活動してきた。 2011年にこうした活動を理由に2カ月間拘禁され、拷問を受けた。これまで2回計8年間投獄されている黄氏は、1999年以来、自身のサイト「六四天網」を通じて活動家、嘆願者、法輪功修行者への人権侵害や強制撤去問題などを告発してきた。2016年11月に「国境なき記者団」が主催する報道の自由賞を受賞した同サイトは、中国を拠点とする人権サイトではおそらくもっとも長く運営されている。
 
これら3事案は、2013年3月に習近平国家主席が正式に権力の座について以来繰り返されている、中国政府の人権活動家に対する広範な取締りを反映したものといえるが、国家の直接の関与を示す情報はない。

国際法の下では、政府機関の人間が個人の身柄を拘束してその事実を否定・隠蔽する、または所在を開示しない場合、政府が強制失踪を犯したとみなされる。家族や法定代理人は、失踪者の所在や状態、法的地位について知らされない。「失踪した」人びとはしばしば、拷問やほかの虐待行為に直面している危険が高い。

中国政府は長い間、政府の批判者たちを強制的に失踪させてきた。2011年に当局は、オンラインで起きた「中国版ジャスミン革命」への匿名の呼びかけに対抗し、数十人の政府批判者を全国で失踪させ、何週間も秘密の場所に拘禁した。2012年の刑事訴訟法改正により、所在を開示せずに最長で6カ月間、合法的に拘禁できるようになり、事実上、強制失踪が合法化されたかたちだ。

2015年7月、中国政府が300人の人権弁護士とその関係者、ならびに支援者だった活動家たちを一斉検挙。うち十数件では、当局が何カ月にもわたり、拘禁の有無や被拘禁者の所在および状態といった情報を隠していた。依然として16人が拘禁されたままだ。2015年10月〜12月に、中国本土の政治に関する書籍を出版・販売する「銅鑼湾書店」の関係者5人が行方不明になった。うち4人は数カ月後に、禁止された本を密輸したとテレビで「告白」したのち釈放されたが、スウェーデン国籍の桂民海(Gui Minhai)氏は、外界との連絡を断たれたまま未知の場所に今も拘禁されている。

リチャードソン部長は、「中国当局は2015年の人権活動家の大量逮捕を境に、活動家を一人ひとり強制失踪させるという、結局は同じくらい不当な路線に切り替えたようだ」と指摘する。「これは、拘禁された人びととその家族を恐怖におとしいれるだけではない。『沈黙せよ、さもなくば沈黙させる』というメッセージを、残された市民社会に再確認させるものでもある。」

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