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(ニューヨーク)― 中国司法部は、弁護士事務所と弁護士に関する2つの規則を改訂した。この動きは、中国での弁護士の独立と法の支配を更に悪化させるものであると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。2016年11月1日付施行のこの改訂は、2015年7月に政府が始めた弾圧策の一環だ。中国で最も舌鋒鋭い弁護士たちが嫌がらせを受け、投獄されている。

「今回の司法部新規則の基本的な内容は、人権弁護士に対し、これまでの効果的な法的戦術を今後は使うなと宣告するものだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国部長ソフィー・リチャードソンは指摘する。「弁護士が担当事件に注目を集めることができないばかりか、公の場での議論すら行えないなかで、国民の権利が十分に擁護されることはありえない。」

今回の「弁護士事務所管理法」(司法部令133号)と「弁護士営業管理法(同134号)は、弁護士と法律事務所に対して「共産党指導部への支持」と弁護士事務所での党支部開設をはっきり義務づけている。弁護士には中国の「基本的政治体制を拒否」したり、「治安の脅威」になったりするような意見の表明が禁じられた。

今回の改正規則により、あらゆる弁護士の表現の自由が曖昧かつ幅広い規制を受ける。弁護士は「公安を乱す」か、当局に圧力をかける座り込みや示威行動について、それが非暴力的なものであっても、依頼人やその他の人びとに参加するよう「扇動」または「組織」することが禁じられる。弁護士は、いかなる事件に関しても「誤解を招く」または「悪意ある」コメントを述べること、共同書簡を発表したり署名したりすること、そして「インターネット上で」または実際に集まって司法制度を「攻撃または中傷」することができない。また「騒ぎを起こすために群衆を集め」たり、裁判官を中傷したり、「国がすでに認定したカルト団体の性格を否定」したり、「法廷の秩序を乱す」行動を取ったりすることを禁じられる。更にインターネットやメディアを用いて「共産党と国への不満をあおる」ことや、「社会秩序を揺るがす」訴訟を起こすよう人びとを「扇動」することが禁止される。

1970年代後半以降、文化大革命後の当局による司法制度再建が行われ、中国では弁護士が急増した。政府は法科大学院数百校を設立して法曹を養成するとともに、弁護士活動を促進するために、2007年の弁護士法などの法律を新たに定めた。しかし同時に、弁護士を敵対的に扱う場面も増えている。とくに人権侵害被害者の代理人を務め、積極的に弁護を行うことで知られる舌鋒鋭い弁護士が標的となっている。

こうした弁護士は法廷で依頼者の弁護をし、極度に政治化された司法制度下での不公正な訴訟手続きとの対決をしばしば余儀なくされてきた。一方、報道機関やソーシャル・メディアを使って事件の内容を明らかにし、当局の行動を批判してきた。また弁護士や被害者、家族、活動家などを組織したり、連携することを通じて、さまざまな問題について権利擁護活動を行ってきた。強制立ち退き、土地接収、汚職警察の人権侵害、労働者への補償、ドメスティックバイオレンス(DV)、食物の安全性、児童虐待などだ。

中国政府は、利用できるさまざまな手段を不適切に用いて、活動に取り組む弁護士を報復していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。司法部とその下事務所が弁護士資格を認定しているが、とくに国内の全弁護士が毎年審査される時期などに、その剥奪や停止を行うことができる。中国の裁判所は、法廷秩序を乱した者を最大15日間司法拘禁する命令を発することができる。警察は刑法306条(証拠隠滅偽造罪)に基づき「証拠捏造」で弁護士を逮捕することができる。この条文は依頼者に対し、捜査当局者の拷問を公表するよう支援した弁護士に用いられてきたものだ。弁護士は職務にあたり、警察、裁判所職員、そのほか当局の命令で働く人びとから、暴力や脅迫、嫌がらせを受ける危険にもさらされている。結果的に、ほとんどの弁護士が当局を刺激したくないとして刑事事件を担当しないため、中国では代理人のいる刑事被告人の割合が低い。

習近平政権が始まった2013年3月以降、弁護士をめぐる状況は不安定を極めていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。現在までに当局の標的とされた著名な人権派法律家には例えば次の人たちがいる。

許志永(Xu Zhiyong)…新公民運動の創設者。2014年に4年の刑を宣告された。

浦志強(Pu Zhiqiang)…2015年12月に「民族怨恨扇動」と「騒動挑発」で3年の刑、執行猶予3年を宣告された。

郭飞雄(Guo Feixiong)…法律活動家。2015年11月に6年の刑を宣告された。

唐荆陵(Tang Jingling)…広州市の弁護士。2016年1月に「非暴力抵抗」思想を唱えたとして5年の刑を宣告された。

2015年7月に当局は、全国で人権派弁護士300人以上を拘束し、弁護士を支援する助手や人権活動家も逮捕した。大半はすでに釈放されたが、北京鋒鋭律師(=弁護士)事務所の所長・周世鋒(Zhou Shifeng)弁護士は2016年8月に懲役7年の刑を宣告された。李和平(Li Heping)、謝燕益(Xie Yanyi)、王全璋(Wang Quanzhang)、劉四新(Liu Sixin)、謝陽(Xie Yang)、李春富(Li Chunfu)の6弁護士の裁判はまだ始まっていない。北京鋒鋭律師事務所の著名弁護士である王宇(Wang Yu)氏は2016年8月に保釈されたが、現在も所在がつかめない。


国連の「弁護士の役割に関する基本原則」は、第16条で「政府は、弁護士が脅迫、妨害、困惑あるいは不当な干渉を受けることなく、その専門的職務をすべて果たし得ること(略)、確立された職務上の義務、基準、倫理に則った行為について、弁護士が、起訴、あるいは行政的、経済的その他の制裁を受けたり、そのような脅威にさらされないことを保障するものとする」と定めている。

「中国での弁護士弾圧は、勇敢な人権派弁護士と依頼者に対してだけでなく、すべての人の法の支配を脅かしている」と前出のリチャードソン局長は述べた。「中国指導部が安定を求めるなら、恣意的で人権侵害をもたらす規制の強化ではなく、撤回が答えなのである。」

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