リオデジャネイロ五輪最終日の8月21日、男子マラソンに出場したエチオピアのフェイサ・リレサ選手が、エチオピア最大の民族であるオロモ族を弾圧する自国政府への抗議を表すポーズでゴールし、銀メダルを獲得した。帰国すれば殺害や投獄の危険があるとして、亡命の意向を示している。エチオピアでは8月6日から7日にかけ、少なくとも100人が政府の治安部隊に殺害される事件が起きたばかりだった。昨年11月にオロモ族が住むオロミア州で政府の土地開発計画に対する抗議活動が始まったが、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)調べでは、以来9カ月で死者は少なくとも500人、連邦警察・軍による拘束者は数万人に上る。犠牲者の多くはデモに参加した学生たちだ。リレサ選手の決死の抗議の背景には、血の弾圧があるのだ。

抗議デモはおおむね、平和裏に行なわれてきた。しかし、政府治安部隊は警告もなくデモ参加者に実弾を発砲するなどの残虐な対応をとるようになった。このため、同国での長年にわたる人権侵害や民族差別に対する抗議にデモは変質し、最近では抗議活動はアムハラ族の住むアムハラ州にも広がりをみせている。

HRWは昨年11月からの一連の弾圧について、エチオピア内外で125人以上から聞き取りなどをし、今年6月に調査報告書を発表した。聞き取りに応えた、オロミア州のウォレガ地域に住むあるオロモ族のエチオピア人は、「住民が日常的に逮捕され、殺されている。この地域ではすべての家庭に、逮捕された子どもが少なくとも1人はいる。生まれてずっとこの土地に暮らしているが、これほど残虐な弾圧は見たことがない」と話した。逮捕者への拷問も日常的に行なわれている。

エチオピアでは昨年の総選挙でも、野党やジャーナリスト、デモ参加者などへの大規模な弾圧が行なわれ、選挙の国際基準に遠く及ばなかった。以来、連邦議会、地方議会ともに議席のすべてを与党側が握る。独立したメディアやNGOに対しても無数の規制が敷かれている。

こうした人権状況に対し、国連のゼイド人権高等弁務官は8月10日、エチオピア政府によるオロミア州、アムハラ州での過剰な有形力行使の問題について、国際調査を提案し、エチオピア政府と受入れ協議を開始したと述べた。これまで「だんまり」を続けてきた米国、英国、日本などエチオピアの安全保障・開発協力上の友好国・資金援助国は、この提案を強く支持し、国際調査を実現すべきだ。