Skip to main content
寄付をする

中国:弁護士を弾圧 「国家転覆」の疑い

習近平政権による人権活動に対する大規模弾圧

(ニューヨーク)中国政府当局は、弁護士と助手、活動家の少なくとも合計11人を「国家転覆」関連容疑で正式逮捕した。中国で人権活動家に対し、前例がない激しい弾圧が加えられていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。政府当局は直ちに容疑を取り下げるべきであり、この11人はもちろん、政治的理由で拘禁されているその他の弁護士や人権活動家も釈放すべきだ。

警察当局は2015年7月9日から9月にかけて、全国で少なくとも300人の人権弁護士、弁護士助手、活動家の身柄を拘束した。弾圧6ヶ月後の現在、11人が正式に逮捕され、3人が保釈された。また24人は依然状況が不明である。正式に逮捕された人びとは、かなりの確立で起訴され有罪判決を受ける。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国部長ソフィー・リチャードソンは「中国政府が人権弁護士を『国家転覆』の疑いで正式逮捕したのは、法によって人権を守る活動を国家転覆行為と捉えているからだ」と指摘。「法律家に対して激しい弾圧を加えて弁護士を脅し、共産党と法廷で対峙しようとする人の弁護を思いとどまらせようとしている。」

2015年7月の弾圧以来拘禁されている人の大半は「指定居所監視居住」と呼ばれる公判前拘禁措置によって拘禁されている。警察は容疑者を最大6ヶ月間、外部との接触を遮断して秘密の場所に拘禁できる。被拘禁者のほとんどについて中国の国内法上、2016年1月9日までに正式逮捕又は釈放のいずれかを選ぶこととされていた

正式逮捕された11人の家族は、警察から2016年1月8日と9日付の逮捕通知書を受け取った。うち6人は「国家政権転覆罪」で、4人は 「国家政権転覆扇動罪」で逮捕されている。11人の氏名とプロフィールは次の通りである(敬称略)。

  • 周世鋒(Zhou Shifeng):弁護士。人権派弁護士を雇う北京鋒鋭律師(法律)事務所の所長。逮捕容疑は「転覆罪」で、拘禁先は天津市第1看守所(拘置所)。
  • 王宇(Wang Yu):弁護士。北京鋒鋭律師事務所。逮捕容疑は「転覆罪」で、拘禁先は天津市第1看守所。
  • 王全璋(Wang Quanzhang):弁護士。北京鋒鋭律師事務所。逮捕容疑は「転覆罪」で、拘禁先は天津市第2看守所。
  • 李姝雲(Li Shuyun):実習弁護士。北京鋒鋭律師事務所。逮捕容疑は「転覆罪」で、拘禁先は天津市第1看守所。
  • 趙威(Zhao Wei)(筆名「考拉」):北京の人権派弁護士の李和平(Li Heping)氏の弁護士補助員。逮捕容疑は「転覆罪」で、拘禁先は天津市第1看守所。
  • 劉四新(Liu Sixin):北京鋒鋭律師事務所の職員。逮捕容疑は「転覆罪」で、拘禁先は天津市第2看守所。
  • 包龍軍(Bao Longjun):実習弁護士を申請中の市民法定代理人で王宇氏の夫。逮捕容疑は「転覆扇動」で、拘禁先は天津市第2看守所。
  • 謝陽(Xie Yang):湖南省の弁護士。逮捕容疑は「転覆扇動」で、拘禁先は長沙市第2看守所。
  • 謝燕益(Xie Yanyi):北京の弁護士。逮捕容疑は「転覆扇動」で、拘禁先は天津市第2看守所。
  • 高月(Gao Yue):李和平弁護士の助手。逮捕容疑は「証拠隠滅幇助」で、拘禁先は天津市第1看守所。
  • 胡石根(Hu Shigen):古参の人権活動家。逮捕容疑は「転覆扇動」で、拘禁先は天津市第1看守所。

保釈された3人は北京鋒鋭律師事務所の弁護士の黄力群(Huang Liqun)氏と経理責任者の王芳(Wang Fang)氏、および広州の弁護士の隋牧青(Sui Muqing)氏である。

刑法の「国家政権転覆罪」は中国では極めて重い罪だ。関与の認定度合いに応じて刑の重さは変わるが、「首謀者」と認定された場合の最高刑は終身刑である。「国家政権転覆扇動罪」の最高刑は15年の刑だ。例えば、中国国内で人権問題を扱うWebサイトを作った黄琦(Huang Qi)氏は、2000年に国家政権転覆罪で5年投獄された。ノーベル平和賞受賞者の劉曉波氏は13年間、中国で非合法化されている法輪功信者の弁護で知られる弁護士の高智晟(Gao Zhisheng)氏は3年間の刑となった。

これらの人物のいずれかが、中国憲法や国際法が保障しないなんらかの言動を取ったことを示す入手可能な証拠はない。中国憲法も国際法も、平和的手段による表現と結社の自由の権利を保障している。

「2013年3月に正式に権力を承継した習近平主席の下、中国政府は表現の自由と法の支配への包括的な弾圧を行っている」と、前出のリチャードソン部長は述べた。

活動家や弁護士、政府や共産党に批判的と見なされた人びと数百人も拘禁・投獄するのみならず、政府当局はインターネットとメディアも標的にしている。大学教員や党員、ジャーナリストに対して「正しい」イデオロギーの重要性と党の優越性を強調し、政府はまた域外非政府組織管理法案や、反体制派を脅威と見なすいくつもの公安関係法令を上程している。

「裁判で依頼者を代理し、訴訟の内容を世論に訴えることは国家転覆ではないし、いかなる犯罪でもない」と、リチャードソン部長は指摘。「反対に中国政府こそが、基本的人権と法の支配を転覆している。」

皆様のあたたかなご支援で、世界各地の人権を守る活動を続けることができます。