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スリランカ:日常的な警察の拷問に苦しむ家族

法の裁きを求めた何年もの努力が無駄になる被害者たち

(コロンボ)— スリランカ警察は、拘束した刑事事件の被疑者を日常的に拷問・虐待している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。当局は独立した監督機関を設置し、スリランカ社会全体をむしばむ警察の人権侵害に終止符を打つ具体的な措置を講じるべきだ。

A Sri Lankan policeman keeps watch at a demonstration in the capital, Colombo, on August 14, 2014.   © 2014 Getty Images

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは、「スリランカ警察は、自白させるためのごく当たり前な方法として拷問を用いている」と指摘する。「実際は解決していない事件を偽りに『解決』させるための拷問を、警察は日々罰せられることもなくやりおおしているのだ。」

報告書「常に恐怖の中に生きている:スリランカにおける警察の人権侵害の放置」(全59ページ)は、刑事事件の被疑者に対してスリランカ警察が用いる様々な拷問方法を詳述した。その方法とは、激しく殴打する、電気ショックを与える、苦痛が生じる体の部位からロープで吊るす、性器や目に唐辛子ペーストを塗るといったもの。拷問の被害者やその家族は、法の裁きや救済を獲得するために何年もの年月を費やしかねず、実現の望みも薄い。

 
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、スリランカのコロンボとその周辺地域ほかで2014年〜15年に調査を実施。これまでの報告書は、少数民族であるタミル系市民への拷問など、内戦時の人権侵害に焦点を絞ってきたが、本報告書は、警察の拷問および人権侵害行為が蔓延している実態を明らかにしたもので、多数派のシンハラ系市民も同じく苦しんでいる実態を調査・検証した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査結果は、スリランカ警察署および留置所での拷問を長らく調査・検証してきた国内の人権諸団体によるそれと一致している。

たとえば、窃盗容疑で2011年に逮捕され、警察に身柄を拘束されている間に死亡したガヤン・ラサンガ氏の事件。母親は死体安置所で息子の遺体をみた時のことを、「足首に黒いあとがあり、足の裏は焼けているように見えました。臀部はあざだらけで、鼻は折れて血まみれでした」と語っている。

「AJ」は2015年3月に窃盗容疑で逮捕された。警察が自白を強要し、殴られたと証言する。「1分もしないうちに肌がむけて破れはじめたのが分かりました。痛くて大声で叫んで。警官は、これこそ私が真実を白状する道なんだ、と言い続けました。」

刑事事件被疑者に対する警察の長年の手続き違反は、現スリランカ政府による改革の公約にもかかわらず、拷問が蔓延する原因となっている。被疑者はしばしば逮捕理由を聞かされない。警察は時として、初動逮捕やその後の人権侵害的取調べ方法を正当化するため立件をねつ造する。スリランカ国内法は24時間以内に裁判官面会を定めているが、これが実際に行われることはほとんどない。被疑者家族は通常逮捕を知らされず、面会も許されない。被疑者は弁護人への接見をほとんど、あるいは全く認められず、たとえば医療官による検査といった保護メカニズムもいい加減であったり、そうでなければ不適切に実施されているのが実態だ。

前出のアダムス局長は、「これらのケースで最も悲しむべきことのひとつは、スリランカにはこうした人権侵害からの保護のためにしっかりした法律が存在するにもかかわらず、これらが義務としてではなく、警察手続きの単なる提案程度にとらえられていることだ」と述べる。「恣意的逮捕ほか警察の虐待行為は、拷問に行き着く。警察は権利を保護し支持するために存在するのであって、それを解体する立場ではない。」

被害者またはその家族が、裁判所ほかのメカニズムに苦情申立てを申請できたケースでさえ、法の裁きやアカウンタビリティ実現のチャンスはほど遠い。被害者は、地元裁判所に警察の人権侵害に関する申立てを申請できるが、弁護士や人権活動家は、当該手続きを通じて法の裁きを確保するには、いくつかの障害が存在すると話す。特に地方では、被害者に対する警察の脅迫行為があるためなおさらだ。裁判所への申請料に加えて、出廷費や弁護士費用が出廷のたびに加算され、仮に審理が開かれればの話だが、適切にそれがなされるまで通常、数年を要する。被害者たちのために政策提言活動をしている弁護士や人権活動家はヒューマン・ライツ・ウォッチに、警察官は上官や検事総長局、裁判所から裁量を広く認められていると話した。

スリランカでは2015年はじめに、広範の改革を公約して新政府が発足している。本報告書に検証された実態を改善するため、政府は少なくとも次の改革を実行すべきである:

  • 警察の拷問ほか、人権侵害行為は容認されないというはっきりとした公式命令を発する。
  • 警察の人権侵害疑惑を捜査し、結果を適切な訴追のため検事総長局に送る責任を担う、独立した警察監督当局を設置する。当局は完全に警察署外部に設置されるべきであり、司法省に捜査結果を報告すべきだ。かつ警察官や目撃者、警察ファイルを召喚する権限を独立して備えるなど、捜査に関連する権限を全面的に有すべきだ。
  • 警察による人権侵害の捜査・訴追に特化し、かつ独立した事務所を検事総長局に設置する。独立した警察監督当局からの委託に関するフォローアップもその責任に含まれる。
  • 警察規定およびマニュアルの改訂は、超法規的、恣意的および略式の処刑の効果的な防止および捜査における国連原則、法執行官のための国連行動綱領、法執行官による力および火器の使用に関する国連基本原則と一致するものであるべきだ。
  • 出廷した被拘禁者が拷問ほか虐待行為に苦しんだか否かを確定する、かつ法的に義務づけられた機密検診を命ずる判事責任の遵守を確保する。
  • 拷問等禁止条約を国際的な義務に即して完全に執行し、かつその選択議定書を批准する。

前出のアダムス局長は、「スリランカ警察は野蛮な拷問の慣例を今すぐ停止し、法の支配に従って、警察が仕えるコミュニティの信用を勝ち取るために行動すべきだ」と述べる。「これを実現する唯一の道は、人権侵害に対して厳格な措置をとり、被害者のために法の裁きを確保することだ。そして単に移動や停職処分ではなく、透明かつ公平な訴追を通じて加害者を罰する必要がある。」

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