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東南アジア:「ボートピープル対策会議」の中心に人権を

ビルマでの人権危機解決と、難民保護のためのアクセスが強く求められる

(バンコク)- 5月29日にバンコクで、東南アジアの新たなボートピープル危機について協議する各国政府は、漂流中の人命を救うために拘束力のある合意を確保せねばならない、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。関係各国は無条件の上陸を許可し、庇護希望者の権利を保護する国連諸機関へ障害なきアクセスを保障すべきだ。

また各国政府は、ロヒンギャ民族に対する人権侵害に終止符を打つための具体的な措置をとるよう、ビルマ政府バングラデシュ政府に要求せねばならない。ロヒンギャ民族が危険な航海を選んでまで国外に脱出する理由は、ロヒンギャに対する人権侵害にあるからだ。

インド海周辺で進行中の、変則的な難民移入問題を受けた特別対策会議には、17カ国の代表が出席する予定。参加国には(アルファベット順に)アフガニスタン、オーストラリア、バングラデシュ、ビルマ、カンボジア、インド、インドネシア、イラン、ラオス、マレーシア、ニュージーランド、パキスタン、パプアニューギニア、フィリピン、スリランカ、ベトナム、タイなどがある。日本も米国やスイス、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)および国際移住機関(IOM)の幹部とともに、オブザーバー参加する。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは、「東南アジア地域の各国政府は、国連ほかと協力して、この人間の悲劇を止めるための結束力ある解決策で合意すべきだ。これまで何年も、何事もなかったかのように傍観してきた姿勢を繰り返してはならない」と指摘する。「諸悪の根源となっているビルマとバングラデシュの人権侵害を止めるとともに、迫害を逃れてきた難民を受け入れて保護するという、タイ・マレーシア・インドネシアほか各国の人道的対応も不可欠だ。」

この15カ月の間に、最大8万8千人の成人男女および子どもが、船でバングラデシュおよびビルマから、タイ・マレーシア・インドネシアに渡航していると国際機関は推計している。その多くは、ビルマに住むイスラム教系少数民族ロヒンギャだが、バングラデシュ国籍保持者の数もかなりにのぼる。ほとんどはまずタイに渡航し、そこから陸路でタイおよびマレーシア国境地帯のジャングルに設置された収容施設(キャンプ)に移送される仕組みだ。施設は被害者たちを拘禁・恐喝・虐待するために用いられており、当該地域ではこの数週間に次々と集団墓地が発見されている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは対策会議参加国に対し、次にあげる諸問題を優先するよう要請した:

· 現在および将来の漂流船捜索・救助をめぐり、差し迫った必要性を強調すること。関係国は国際社会が申し出た捜索・救助の支援を受け入れるべきであり、また捜索・救助活動のより良い協力体制を模索して情報を共有し、リソースを供出すべきである。タイ・マレーシア・インドネシアは、いまだ周辺海上を漂流している可能性がある船の捜索・救助作戦を展開すべく、積極的に努力することで合意すべきだ。

· 現在および将来のボートピープル救助をめぐり、UNHCR と IOMに無制限かつ無条件のアクセスを保障すること。そして、海上で救助され上陸した個人に対する透明・公平かつ専門的な審査を行い、難民としての保護資格、人身売買被害者としての支援サービス受給資格、そして適切な支援サービスの内容を決定すること。タイ・マレーシア・インドネシアは(いずれも1951年難民条約に加盟していない)、到着した人びとの難民認定ほか必要な保護を選定するため、UNHCRに権限行使を認めるとともに、UNHCRによる難民の地位の決定に従うべきである。そして、難民および庇護希望者が迫害ほか重大な危険の中に強制送還されたり、生命の脅威からの脱出および自由を妨害されることがないよう、綿密にその権利を保障せねばならない。ロヒンギャ民族が何十年も迫害され、国籍を拒否されていることから、ビルマへの帰還が不可能であるため、これは特に重要な意味を持つ。

· タイにボートピープルの上陸許可を要請し、かつマレーシアやインドネシアほか各国から長期的な上陸許可の約束を取り付けること。マレーシアとインドネシアは近ごろ上陸許可に同意したが、タイは拒否している。タイ政府は安全かつ尊厳ある上陸を許可し、保護内容の審査のためにUNHCRのアクセスを認める約束をすべきだ。特別対策会議では、致命的な状況にあるボートピープルを海上に置き去りにしたり、互いの国に責任を擦りつけあう結果を招いたあらゆる「救助」形態を否定すべきだ。

· 当該問題の直接的原因であるビルマ政府に圧力をかけること。長きにわたってロヒンギャ民族が、故郷のアラカン州から脱出を余儀なくされてきた理由である抑圧政策と、基本的な権利の否定を速やかに停止するよう、ビルマ政府高官に強く求めること。対策会議は、ロヒンギャ民族がその諸権利を尊重された国民と認め、差別的な政策をすべて廃止するよう、ビルマ政府に圧力をかけるべきだ。ロヒンギャ民族に対し国籍を拒否する政府の姿勢は、問題解決策の策定をより困難にするだけだ。たとえばテインセイン大統領府のザウ・ハティ報道官は先週、「ミャンマー(ビルマ)は、我々が当該問題の直接的原因であるとする一部[政府]の主張を容認することはないだろう」と述べている。ビルマ政府は国籍法(1982年)を改正し、移動の自由や生業、所有権、結婚の権利および子どもを持つ権利など、すべてのビルマ国民がすべからく享受すべき基本的権利に対する差別的な制限を廃止する必要がある。

· ロヒンギャ民族の受け入れ拒否政策を撤廃し、迫害に終止符を打つようバングラデシュに圧力をかけること。バングラデシュ政府は、ロヒンギャ民族のアラカン州への送還政策(自らも公にしている政策)を停止し、ロヒンギャ民族を保護・支援サービスの資格がある難民として認定すべきだ。政府はまた、一度は拒否した国際社会による支援の受け入れに同意し、ロヒンギャ民族や、同じくビルマとの国境地帯に住む自国民のために、保健・教育などの基本的な公共サービスを提供すべきだ。船での脱出しか道はないと、人びとに思わせる現状を変えるべきである。

前出のアダムス局長は、「今回の地域会議は、参加する各国政府がもれなく、効果的な捜索・救助作戦や、難民の求める保護の実現、密航・人身売買業者の訴追、そして船での脱出を人びとが余儀なくされた根本原因の解決を約束することで、はじめて成功ということになろう」と述べる。「難民の再定住といった、国際社会による責任分担もまた重要だ。が、これも既存および将来の政策の中心に人権をすえねばならないと、すべての政府が同意すればこそ、永続的な解決となりうるのである。」

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