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アゼルバイジャン:獄中の活動家、ジャーナリストを自由に

欧米とオリンピック委員会はヨーロッパ競技大会開催前に行動すべき

(ベルリン)国際社会は、第1回ヨーロッパ競技大会の開催国・アゼルバイジャンに対し、不当に拘束され獄中にある反体制派の釈放を強く求めるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは2015年4月20日付で新たな動画を公開し、同大会開催の何ヶ月も前から著名な活動家やジャーナリストが拘禁されている現状を示した。

アゼルバイジャンが開催国となる第1回ヨーロッパ競技大会は、6月12日~28日まで6,000人以上のアスリートが参加し、首都のバクーで行われる総合競技大会だ。

「ヨーロッパ競技大会まで2ヶ月を切った。アゼルバイジャンの深刻な人権状況と反体制派への政治的迫害の実態にはますます注目が集まっている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのジェーン・ブキャナン欧州・中央アジア副局長は述べた。「EUなどアゼルバイジャンと関わりのある国々が同国に対し、獄中の反体制派を釈放し、弾圧をやめるよう求めるには絶好のタイミングだ。」

EU首脳は、アゼルバイジャン政府が獄中の反体制派を釈放し、政府から独立した個人や組織への弾圧をやめなければ、大会開会式に高級代表団を送らないとの方針を明確に示すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

今回の動画で取り上げたRasul Jafarov氏は、4月16日に政治的動機に基づく容疑(脱税、権力濫用、違法取引、横領)で有罪とされ、6年6ヶ月の刑を宣告された。2014年8月の逮捕直前、氏は「人権のためのスポーツ大会(Sport for Rights)」運動を始め、ヨーロッパ競技大会を控えたアゼルバイジャンで、政治的動機に基づく身柄拘束などの人権侵害が起きていることへの関心を訴えた。

アゼルバイジャン政府当局は3月31日、ヒューマン・ライツ・ウォッチ上級調査員ギョルギ・ゴギアの入国を拒否した。同調査員は、Jafarov氏、および類似の政治的動機に基づく犯罪容疑で起訴された著名な弁護士Intigam Aliyev氏の裁判を、監視のために傍聴する予定だった。

50ヶ国のオリンピック委員会の連合体であるヨーロッパ・オリンピック委員会(EOC)は、2012年にヨーロッパ競技大会の開催国をアゼルバイジャンに決定し、準備状況を監督している。EOCが掲げる目標の1つは、国際オリンピック委員会がオリンピック憲章で定めたオリンピックの理念を全欧州に広めることだ。

「オリンピック憲章では、スポーツを通じて人間の尊厳を促進できることが明確にうたわれている。アゼルバイジャンで反体制派数十人が不当にも起訴・投獄されているのに、憲章の理念を推進しているとヨーロッパ・オリンピック委員会が主張するのでは筋が通らない」と、前出のブキャナン副局長は述べた。「ヨーロッパ・オリンピック委員会は自らの原則に立ち返り、アゼルバイジャン政府が基本的な価値観を受け入れない限り、信頼に足る国際競技大会を開催することはできないとの姿勢をはっきり示すべきだ。」

動画ではKhadija Ismayilova氏も取り上げた。政府の腐敗と、官僚のあやしげなビジネスの実態を暴露したジャーナリストだ。また著名なベテラン人権活動家で反体制派のLeyla Yunus氏と夫のArif Yunus氏にもスポットをあてた。

こうした獄中にある人びとのほかにも、活動家やジャーナリスト数十人がアゼルバイジャンからの出国を余儀なくされるか、身を隠さざるを得ない状況だ。主要な独立系メディア団体「記者の自由と安全研究所(IRFS)」代表でジャーナリストのEmin Huseynov氏もその1人。政府当局は2014年8月、Huseynov氏が治療目的でトルコに出国することを認めなかった。そして数日後にIRFS事務所を捜索、職員を取り調べ、コンピュータを押収し、事務所を閉鎖させた。逮捕を恐れたHuseynov氏は現在までバクーのスイス大使館に身を寄せている。氏は金融犯罪関連の容疑で起訴されているが、これも不当起訴だ。

「刑務所か国外にいるジャーナリストらは、多数のアスリート、スポーツ愛好者、ジャーナリストなどがまもなくバクーを訪れ、新たな一大スポーツイベントの開催を祝うことをよくよくわかっている」と、ブキャナン副局長は指摘する。「そして、オリンピック委員会首脳と各国政府には、大会をただ観に来るのではなく、不当に起訴された人びとの自由を強く求めて、正義のために立ち上がってほしいと強く期待しているのだ。」

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