今月12日、タイ南部のパッタニー県にある6つの学校が、ガソリンによる放火で炎上しました。炎は教科書や用具、教室、そして子どもたちの夢を焼き尽くしたのです。これらの学校が11月初旬の新学期までに修復されることは絶望視されています。

マレー系イスラム教徒が大半を占めるタイの各県では、学校や教師に対する攻撃は、分離独立闘争における日常的なひとこまになりつつあります。過去10年の間に、300超の公立学校が襲撃され、少なくとも175人の教師(その大半がタイ系だがそれに限らない)が教室や宿舎、または学校への通勤途中に銃撃されました。

この分離独立派による犠牲者は5,000人超。そのほとんどが子どもを含む一般市民です。一方でタイ政府治安部隊も、分離独立勢力やその支持者(とみられる)マレー系イスラム教徒に対する超法規的殺害などの人権侵害が疑われています。

民族革命戦線コーディネート(BRN-Coordinate)ネットワークに属する反政府勢力パッタニー自由戦士(Pejuang Kemerdekaan Patani)は、学校を政府および仏教系タイ文化の象徴であるとして、攻撃対象にすえています。タイ軍は12日日曜日に起きた攻撃を、分離独立勢力に対する近時の取締りの報復と考えているようです。この時、民族革命戦線コーディネートの地元司令官の兄弟が1人殺されています。

こうした状況が長年続いてきたにもかかわらず、国連が民族革命戦線コーディネートによる人権侵害に初めて触れたのは今年7月。国連事務総長が発表した子どもと武力紛争に関する年次報告で、子どもの徴用に触れたのです。タイの子どもの置かれた状況にやっと気づいたとでもいうのでしょうか。しかも、この報告書は、民族革命戦線コーディネートが学校や教師に対する攻撃の加害者でもあることは言及していません。2007年から「武装組織」が当該地域の学校を攻撃している、と記述しているのに、です。

この7年間で、何百もの学校が攻撃され、200人の教師が殺害されました。しかし今になっても、国連はタイ南部で教師の身の安全や子どもの教育にいったい何が起きているのかを明言しないのです。

国連事務総長の年次報告は、武力紛争下で子どもがおかれた状況を改善するための、国連のもっとも効果的な方法のひとつといえます。報告書は子どもに対する重大な国際人道法違反を犯した組織を調査・検証し、列挙します。そこでひとたび名指しされれば、当該国における国連機関の活動が活発になったり、安全保障理事会が制裁を発動する可能性が出てくるなど、国連の介入が拡大することになるのです。政府軍や反政府武装勢力が報告書のリストから外されるには、紛争当事者たちが、行動計画(多くの場合期限付き)に従って人権侵害を停止したことを、国連から承認されなければならない決まりになっています。

つまり、国連が紛争下の子どもが受けている人権侵害を余すところなく明らかにし、全当事者に人権侵害を停止するよう圧力をかけることが肝要なのです。タイの子どもと教師がしかるべき注目を受ける日まで、いったいあといくつの学校が炎えてしまうのでしょうか?