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ビルマ:政府がロヒンギャ民族の隔離を計画

強制移住と国籍差別により生じる危険

(ニューヨーク)ビルマ政府の計画案は、ロヒンギャ民族ムスリムに国籍を認めない差別的な政策を固定化し、すでに住む場所を追われた13万人以上を閉鎖型のキャンプに強制移住させるものだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ビルマの国際ドナー、国連、その他影響力のあるアクターは、ビルマ政府に対し「ラカイン州行動計画」の大幅な変更あるいは撤回を強く求めるべきだ。

本計画は2013年4月のラカイン調査委員会の勧告に従うものだ。委員会はテインセイン大統領により、同州で2012年に起きたロヒンギャ民族への広範な殺害と暴力行為を受けて設置された。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこの「行動計画」の写しを入手した。文書は「ロヒンギャ」という呼称を認めず、一貫して「ベンガリ(ベンガル人)」と記している。これはビルマ当局や民族主義的な仏教徒が広く用いる不正確で軽蔑的な呼び名だ。ムスリムへの言及は宗教学校に関する部分だけになっている。

「ようやく発表された『ラカイン州行動計画』だが、過去数十年のロヒンギャ民族への迫害を根拠づける、ビルマ政府の差別的かつ人権侵害的な政策を拡大・強化するものだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンは述べた。「この計画はロヒンギャ民族から希望を奪い、自国からの出国を迫ることをおそらく目的とした、これらの人びとの恒久的隔離と無国籍化の詳細な設計図にほかならない。」

この計画は、同州の開発と紛争後の再建策を全体として定めたものとなる予定だ。草案は6セクションに分かれ、細かく箇条書きされている。セクションのタイトルは「治安・安定・法の統治、復旧と再建、恒久的移住、ベンガル人の国籍資格評価、社会経済開発、平和的共存」だ。「恒久的移住」セクションでは、既存の避難民キャンプで暮らす133,023人を移動させ、同州内のキャンプに住まわせる手順が示されている。キャンプは州都シットウェー周辺と州内の複数の郡に存在する。移動先の場所は、はっきり特定されていない。

この計画は、2012年の暴力事件で住む場所を奪われたロヒンギャ民族について、元の場所への帰還が認められるかどうかに触れていない。仏教徒も住む元の地域への再統合が認められるという、ロヒンギャ民族側の期待を否定するものだ。

計画では2015年4月から5月にかけて、ロヒンギャ民族の避難民全員が移住することとされているが、この時期はモンスーンの季節の直前だ。なお準備として、住居、学校、地域住民用施設、必要な道路、および電気・水道・衛生関係のインフラが来年4月までに整備される。

2012年6月に勃発し、10月に再発した宗派間暴力により、ロヒンギャ民族を主とする推定約14万人がアラカン州一帯のキャンプで今も暮らしている。生活を全面的に支えるのは、国際的な人道支援だ。このほかにも4万人がキャンプの外で暮らすが、外部からの支援はほとんどない。政府はロヒンギャ民族への暴力事件に責任のある者、とくに2012年10月のロヒンギャ民族への「民族浄化」を組織した者を逮捕または訴追していない。ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、10月の事件は人道に対する罪に該当するほど深刻なものだ。

ロヒンギャ民族は実質的にビルマ国籍が認められておらず、2014年3月~4月の国勢調査からも除外された。また移動の自由、雇用、生計手段の確保、医療へのアクセス、信教の自由を厳しく規制されている。避難民キャンプの環境はきわめて劣悪だ。ロヒンギャ民族はキャンプ敷地外に出ることが許されず、長期的な監禁状態に置かれている。行動計画草案が想定する恒久再定住地の設定は、ロヒンギャ民族の孤立化と周辺化を加速し、また移動の自由など諸権利を侵害すると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「ビルマ政府の計画は、過激派が主張する隔離措置の提案だ」と、前出のロバートソン局長代理は述べた。「ロヒンギャ民族を、都市部から人里離れた地方のキャンプに移動させることは、基本的権利の侵害にあたる。これらの人びとを外部の支援なしでは生活できない状態に置くとともに、所有地の接収を正式なものとすることになる。」

行動計画草案の第4セクションは、ロヒンギャ民族の国籍該当性の評価手続の概要を示している。土台とされるのは、数十年来ロヒンギャ民族の国籍否認に用いられてきた差別的な1982年国籍法だ。計画案は8月から国籍認証手続を始め、3月までにすべての「ベンガル人」の登録を終えるとする。記録される住民は3つのカテゴリに分類される。「これまでに記録[または]登録された者、これまでに記録されたことはないが、ミャンマー[ビルマ]の既存の法律に則った評価手続を希望する者、既存の法律の定義に合致しない者」である。「ベンガル人」という侮辱的な呼称を拒否するロヒンギャ民族は、すべて3番目のカテゴリに分類され、国籍取得の権利を否定される。

1、2番目のカテゴリの人びとには、国籍資格審査の判断が2015年1月から2016年10月のあいだに行われる。国籍取得要件に該当しないロヒンギャ民族について、当局は「登録を拒まれた者および十分な書類を持たない者を、必要な人数だけ収容する一時的なキャンプを設置」し、こうした人びとを外界から隔離されたキャンプに閉じ込める予定だ。これは送還可能性のある恣意的で無期限な拘禁にあたる。

ビルマ当局はミエボンで審査手続の一部を試験的に実施した。参加したムスリム1,094人のうち、国籍の適格性を認められたのは209人。内訳は、カマン民族ムスリム(1982年国籍法で民族集団に認定されている)、ベンガル人と申告した人、ロヒンギャ民族として受け入れられた人びと(人数不明)である。アラカン州に住むロヒンギャ民族の総数は、2014年3月~4月の国勢調査で集計から除外された人数に基づくと推計100万人超だ。大半がバングラデシュと接するブッティーダウンとマウンドー両郡に住む。計画草案には直接含まれていないが、非合法移民を抑制する国境警備体制強化を求める計画の規定によって、ブッティーダウンとマウンドー両郡は直接的な影響を受けるだろう。

「国際ドナーと関係各国は、この計画によってロヒンギャ民族が国籍を得て、アラカン州に統合されるなどと誤解してはならない」と、ロバートソン局長代理は述べた。「ビルマの人権状況を懸念するならば、ロヒンギャ民族の基本的な権利と自由を擁護するために、国籍法の改正を引き続き要求するべきだ。」

すべての国際ドナーは現行の計画案を拒否すべきである。ドナー側は、ビルマ政府に対し、無差別の原則に基づくとともに、避難民が自発的に、安全かつ尊厳を持って自宅や元住んでいた場所に帰還する、または国内の他地域に自発的に移住する権利を保障する国籍付与計画を定めるよう求めるべきだ。

9月29日の国連総会演説で、ビルマのウンナマウンルウィン外相は今回の計画が「起草の最終段階にあり、まもなく実施される」と述べ、国連に支援を求めた。複数の国連機関がラカイン(アラカン)州で活動している。ロヒンギャ民族を差別し、物議を醸した今年3月の国勢調査前に起きた職員襲撃事件を受け、国連機関の活動は中断していたが、最近は徐々に拡大しつつある。

「改革派を自認する政権が、偏狭な政策を提案することは衝撃的だ」と、ロバートソン局長代理は述べた。「しかし国連機関など関係者が、民族浄化を固定化し、永続的な隔離政策を行う計画を非難せず、これに追随するとしたら、その衝撃度は比べものにならない。国際ドナーは一致してこの計画を退け、政府に対して、世界最悪級の迫害を受ける人びとの権利を擁護する解決策を提示するよう、強く求めるべきだ。」

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