(ニューヨーク)-国連人権理事会は、スリランカ内戦中に起きた戦争犯罪などの重大な人権侵害をめぐり独立した国際調査委員会を設置すべきという、ナビ・ピレイ国連人権高等弁務官の提言を盛り込んだ決議を採択すべきである。人権理事会はピレイ高等弁務官の報告書を今年3月の会期で検討する見込み。
2月24日に発表されたピレイ高等弁務官の報告書は、スリランカ政府が自国の「教訓と和解委員会」によりなされたアカウンタビリティ(責任追及・真相究明)をめぐる勧告の実施に求められる重要な措置を、何らとっていないと結論づけた。スリランカ政府が国際人権法・人道法違反に対処するための、信頼にたる政策遂行を怠っているのは、「もはや時間や技術的能力の問題として説明される種類のものではなく、根本的な政治意思の問題である」と、同弁務官は断定。結果として、「法の裁きやアカウンタビリティ、救済策実現のための更なる措置は、国際社会の肩にかかっている」とした。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムズは、「スリランカ政府は、内戦終盤に何万もの民間人を死に追いやったという自らの責任に対峙するのを拒み続けてきた」と指摘。「ピレイ高等弁務官の報告書は、スリランカ内戦時の人権侵害被害者のために法の裁きをもたらすことができるのは、独立した国際調査委員会よりほかないのだという強力なメッセージである。」
同報告書には、過去/現行の人権侵害事件が延々と列挙されている。超法規的殺害や表現・結社の自由に対する弾圧など、内戦中にも頻繁に起きていた人権侵害は今も続いている。
内戦時に利用されていた予防拘禁法は今も適用されている。政府はこれまで強制失踪に関する様々な機構を設置するなどしてきたが、ピレイ高等弁務官は報告書内で「これらいずれも効果的に機能しておらず、被害者や目撃者の信頼を勝ち取るのに十分な独立性も備えていない」と断定している。同高等弁務官はまた、NGOがいまも国防省への登録と報告を義務づけられている実態、そして軍隊が集中する地域で女性が性的嫌がらせや暴力を受けやすい状況におかれている実態などに懸念を表した。
報告書はまた、タミール・イーラム解放のトラ(LTTE)の幹部が戦争犯罪について法の裁きを受けていないことも指摘。通称「カルナ大佐」として知られるビニャガマムーシ・ムラリタランや通称「KP」として知られるクマラン・パスマナサンは、多くの子どもを兵士として徴用した罪を含む、多くの重大な人権侵害の容疑で捜査を受けていないだけでなく、政府側に寝返った後、高官として重用されている。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまでにLTTEによる少年兵徴用などの人権侵害を調査して報告書に取りまとめ、法の裁きを模索してきた。
前出のアダムズ アジア局長は「肝心な点は、スリランカ政府がこれまで、自軍による犯罪の捜査に着手することを再三拒否してきたということだ。ゆえに、法の裁きに向けて決定的な行動が取られるか否かは、来たる3月の人権理事会会期における理事国の対応次第ということになろう。」