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中国:国連人権理事会の理事国に立候補

先延ばしにしている国際人権条約の批准が先

(ニューヨーク)-中国が、国連の人権理事会の理事国選挙に立候補することを表明している。理事国となるためには、まず市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下自由権規約)を迅速に批准すべきで、これ以上の遅延は許されない。中国政府は15年前にこの重要な人権条約に署名はしたものの、未だに批准していない。

中国が自由権規約に署名したのは1998年10月5日。しかし、繰り返し批准すると公言しながらいまだに批准しておらず、これ以上遅延する説得力のある理由は見当たらない。唯一考えられる理由は、中国政府が同規約に謳われる人権擁護義務を完全に果たす用意がないということだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ中国担当部長のソフィー・リチャードソンは「中国は国連の人権理事会の理事国になりたいと希望している。この重要機関に加わりたいと言いながら、その理事会の資格要件に従っていない」と指摘する。

国連安保理の常連理事国のなかで、自由権規約を批准していないのは中国だけ。同規約は、独立かつ公平な法廷で裁判を受ける権利から表現の自由、定期的かつ自由な選挙を通じての政治参加にいたるまで、人びとの主要な権利を広範に保障する条約である。締約国は人権委員会による定期的な審査の対象となり、規約の定める義務の実施をめぐる進捗状況や問題点が評価される。

現在の中国では、自由権規約に謳われる多くの権利が侵害あるいは否定されている。定期的かつ公正な選挙で投票する権利から恣意的拘禁をされない権利まで、様々な権利が侵害されている。2009年度ノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏の投獄に代表されるように、人権活動家や政府批判者に対する投獄、嫌がらせや拘禁、拷問も日常化している。劉暁波氏は08年憲章の共同執筆者であったことから「国家政権転覆扇動罪」で11年の実刑判決を受け、現在も服役中である。なお、08年憲章とは、法の支配と自由選挙を中国の政治体制の核心にすべきと提言したインターネット上の署名運動。

学識者、弁護士、ジャーナリスト120人が今年2月、自由権規約の批准を求める嘆願書を全国人民代表大会に提出した。7月には100人近くの上海市民が、同様の共同書簡に署名している。広東省の郭飞雄(Guo Feixiong)氏や北京の丁家喜(Ding Jiaxi)氏など、これら運動を始めた人びとは同規約に謳われる自由権を平和的に行使した結果、皮肉にも多くが囚われの身になってしまった

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、いかなる条件もつけずに自由権規約の批准を全人代に付すよう中国政府に要請した。また国連加盟国に対しても、10月22日に予定されている中国の普遍的定期審査(UPR)の機会を利用して、規約の即時批准を強く促すよう求めた。また加盟国は、11月12日に国連総会で予定される人権理事会の理事国選挙の際にも、同様の行動をとるべきである。

前出のリチャードソン中国担当部長は、「中国政府が自由権規約の迅速な批准にむけて、明確な予定を発表するべき時が来た」と述べる。「批准は中国の国際社会でのイメージを改善するであろうし、何よりも中国の国民自身が基本的人権をますます強く求めている。」

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