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ビルマ:通信事業免許獲得の外資2社 利用者保護が必須

企業は 強力な権利保護の先例づくりを

(ワシントンD.C.)–今回、ビルマで通信事業免許を獲得した2社は、強力な人権保護の方針と、広範な透明性確保策の構築を公約すべきだ。企業側は、ビルマの電信法(テレコミュニケーション法)での、法的な人権保護対策の欠如という現実を踏まえ、違法な監視や検閲から、サービス利用者を保護する計画を発表すべきだ。

ビルマ政府は2013年6月27日、通信事業の全国免許を、国営カタール・テレコム (Ooredoo) と、ノルウェーのテレノールに与えると発表した。この2社と同国政府間での免許交付手続は、9月までに完了する予定だ。政府はまた、フランス・テレコムと仏・オランジュ社の企業連合(コンソーシアム)を、上記2社のいずれかが、入札内容を完遂できない場合の補欠として選んだ。しかし政府は、新電信法をまだ施行しておらず、移動体通信とインターネットの分野での、プライバシーと表現の自由、情報アクセスに関する権利を保護するうえで、鍵となる改革も未実施だ。

「ビルマ国内で長年人権侵害が存在している以上、選定された2社は、政府による検閲、違法な監視、さらにはネットワーク停止に関して考慮するべきである」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのインターネットと人権に関する上級調査員、シンシア・ウォンは述べた。「企業は、利用者のために強力な保護策を設け、政府からの要求についての透明性を確保し、政府に対して、法律による権利保護を実施するよう、強く求めるべきだ。」

ビルマの新テレコミュニケーション法は、法案の条文が確定していないが、通信・情報技術省(MCIT)側は、7月に議会で法案は成立する予定であると発表している。起草作業は密室で行われており、最近の草案について意見の募集もしていない。最新草案は公表されていないが、ヒューマン・ライツ・ウォッチが3月に草案を評価した段階では、このまま成立すれば、検閲と監視が長年続いた国の人権侵害防止策としては、不十分であるという深刻な懸念があった。ビルマには、表現規制を行うなど、人権と齟齬をきたす、問題のある法律がほかにも多く存在する。

既存の検閲・治安関連法を用いれば、ビルマ政府や国軍は、通信企業に協力を要請し、ブロガーや活動家、ジャーナリストに盗聴を行ったり、その発言を禁じることができる。5月発表の報告書で、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、これに懸念を表明した。ビルマには、恣意的で広範な監視活動を禁止する、電子プライバシー法が存在しておらず、司法は一度も政府から独立していない。ビルマ国軍には現在も、非常事態を宣言し、電気通信装置を管理する、広範な権力が認められている。さらに当局が、反体制派の沈黙のために用いてきた、人権を制限する法律が、いまだ廃止されていない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは5月3日に、事業免許取得申請を許可された12の企業と企業連合に書簡を送付し、人権保護策について、すでに設けてある場合にはその内容を、また、免許取得後には、どのような内容を作成する予定かを問い合わせた。この書簡では、国連の定める「保護・尊重・回復」フレームワークと、「ビジネスと人権に関する指導原則」で、明確に規定された指針と、グローバル・ネットワーク・イニシアティブ(オンラインでの表現の自由とプライバシー保護に取り組む様々な利害関係者が作る国際イニシアティブ、以下GNI)が定めた基準と一致する、具体的な勧告を行った。

12社のうち、テレノールフランス・テレコム-オランジュ連合を含む8社が、ヒューマン・ライツ・ウォッチの書簡に、書面で回答したカタール・テレコムからは回答が寄せられなかった。

テレノールとオランジュは「表現の自由とプライバシーに関する情報通信作業対話」のメンバーであり、同対話が定める人権原則を実施すると公約している。同対話は3月に、メンバー企業が定める人権基準への支援とその改善について、GNIと提携すると発表した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、同イニシアティブのメンバーであり、テレノールとオランジュとはビルマで生じる問題について直接議論を行ってきた。

「ビルマに投資や支援を行う側は、今回選ばれた通信企業2社が将来の顧客の権利保護のために行う措置の中身を、今後注視することなる」と、前出のウォンは述べた。「両社は、ビルマ国民の人権状況改善に、対外投資が重要な役割を果たすきっかけとなるかもしれない。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、カタールテレコムとテレノールに対し、事業免許とビルマ参入にかかわる交渉を行うにあたり、複数の重要な手続を踏むよう強く求めた。最低でも、企業は、事業活動に関連する人権侵害の発生を防止し、発生した場合は、それに対処する方法について、方針と手続を定めなければならない。事業活動には、公式な事業免許など、政府との協定に基づくものも含まれる。

こうした手続では、「非常事態」が宣言されている期間に、検閲、違法な監視とネットワークの停止を政府から要請された場合の対処法も、定めておかなければならない。この中には、要求を拒否するか、人権への影響を最小限する対策についての情報も含まれなければならない。企業は、こうした方針と手続の設定状況を公開しなければならない。

両社はまた、通信設備設置にかかわる護衛の提供や、土地利用権の獲得に関する、物理的な事業活動や、会社としての重要決定にかかわる人権上のリスクを把握し、対処しなければならない。両社は、取引をする可能性のあるすべての企業について調査を行い、重大な人権侵害に関与していないことを確認しなければならない。また、自社の人権保護方針を、取引先に確実に遵守させなければならない。

人権侵害の共犯となるリスクがあることを踏まえ、通信事業企業は、表現の自由とプライバシーの権利に対する政府の規制をめぐり、透明性の向上に努めるべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。今回選ばれた2社は、事業に関する全協定の詳細を公開する許可を取得し、透明性に関するレポートを定期的に公開し、表現の自由とプライバシーの権利を制限せよとの政府の要請に、どう対応しているのかを伝えるべきだ。企業側は、ビルマでの事業内容の詳細の確定にあたり、自社が負う人権上の責任を果たす取組みについて、進展状況を公開すべきだ。

カタールテレコムとテレノールの競争相手となるのは、事業免許を持つ現地企業2社(ミャンマー・テレコミュニケーションズと、地元企業の企業連合)である。ミャンマー・テレコミュニケーションズは、国営ミャンマー郵電公社(MPT)の民営化実施に伴い、設立する予定だ。ただし、民営化の実施時期は未定である。

後者の企業連合の中身は不明だが、報道によれば、国営ヤダナポン・テレポート社が中心となる。新電信法施行後には、政府により、通信セクターを管理する規制も実施される。しかし、同セクターに関する独立した規制当局の設置は、2015年のことだ。

「通信事業許可を獲得した以上、両社には、自社のサービスが、検閲と監視の新たな道具に使われることを、確実に防止する責任がある」と、ウォンは述べた。「事業免許の詳細が固まる前に、今こそ、人権保護を最大化させるべきだ。」

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