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ビルマ:サイクロンで脅かされる避難民の生命

政府の無策は人災化を招く

 

(バンコク)- ビルマ西部での民族浄化で避難民化したムスリム数千人が、ベンガル湾に接近中のサイクロンにより生命の危険にさらされている。ビルマ政府は避難民を高台に避難させる緊急措置を取るべきだ、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。

2012年5月以降の暴力と迫害により避難民化したロヒンギャ民族およびカマン民族のムスリム14万人のうち半数が、水害に弱い水田と沿岸地域で生活しており、サイクロン「マハーセン」関連の暴風雨被害を受ける可能性がある。サイクロンはビルマ西部とバングラデシュに5月15日遅くに接近する見込みだ。

暴風雨はバングラデシュ沿岸とビルマ西部の低地帯に広範な影響を及ぼす可能性があり、キャンプの外に出ることのできない避難民はとくに危険な状態に置かれる。

「これまで他国政府や多くの人道組織が雨季前にムスリムの避難民を高台に避難させるべきとの警告を繰り返してきたが、ビルマ政府はこれを受け入れてこなかった」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは指摘する。「もし危険な状態にある避難民を政府が避難させなければ、その結果生じる甚大な被害は天災ではなく人災である。」

ビルマ政府は今月13日から14日にかけて一部の避難民に対する限定的な避難を実施し、アラカン州全域ではアラカン民族も同じく避難対象となった。しかし多くのキャンプでは、残りの避難民について、はっきりした避難計画やサイクロン接近に関する公的な警告がない。人道援助団体は、自力で脱出しようとするムスリムが、アラカン民族仏教徒と現地治安部隊の暴力を受けるのではと危惧している。

アラカン州のウィンミャイン報道官はイラワディ誌に対し「沿岸付近の全キャンプで現在避難が行われている」と述べたが、人道援助団体職員とロヒンギャ避難民はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、沿岸地帯のキャンプでは数万人が5月14日時点で避難を行っておらず、一部ではロヒンギャ民族が、理由は不明だが、海に近い地域に移動させられていると述べた。

ビルマ当局は、低地に残る避難民の高台避難に力を入れ、人道援助団体と協力し、支援が必要な全員に差別なく十分な住居を提供すると共に、ムスリムなど弱い立場にあるグループをサイクロン前後の攻撃などの暴力などから確実に保護すべきである。

国連の推計によれば、避難民14万人以上が人口稠密なキャンプに押し込められている。うち多くで住居、食糧、飲料水、衛生設備、医療、その他基本的なサービスが不足している。少なくとも6万9千戸の住居は雨季に耐えられるようなものではなく、サイクロンによる強風に耐えるものは遥かに少ない。洪水や暴風雨の深刻な被害にさらされる低層地帯に位置している。

当局はキャンプ住民の移動を依然厳しく制限しており、キャンプからの外出を禁止する措置は、サイクロン襲来時には被害を及ぼす影響があると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「弱い立場にあるムスリム住民はサイクロンからだけでなく、アラカン民族や、本来は避難民の退避を担当すべき地元治安部隊からの暴力を受ける恐れがある」と前出のアダムスは指摘する。

避難民にはビルマ政府の正式な登録を受けていない「未登録」ロヒンギャ民族数万人が含まれている。治安部隊はロヒンギャ民族に移動の自由を認めていないが、人道援助団体側はその存在を把握する地域に住んでいる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2013年4月に刊行した報告書『ただ祈るだけ』で、ビルマ当局とアラカン民族のグループが、2012年6月以降のアラカン州でのロヒンギャ民族とカマン民族ムスリム住民に対する民族浄化作戦で人道に対する罪を行っていることを示した。

未登録のロヒンギャ民族はヒューマン・ライツ・ウォッチや人道援助団体側に対して、食糧、住居、医薬品、飲料水、衣類などの必需品が不足していると繰り返して訴えている。ビルマ政府は未登録避難民への人道援助を許可していない。また政府は、今回のサイクロンに備えて人々を退避させるべく遅々とした避難計画を実施しているが、彼らはその対象者に入っていないと思われる。

国連の国内強制移動に関する指導原則は、領域内のあらゆる国内避難民に保護と人道援助を提供する義務を定めている。特に、援助の提供に関しては差別を行ってはならないとされる。避難民は「移動の自由の権利」および「キャンプまたはその他の居住地の内外を自由に移動する権利」を持つと定めている。また「国内の他の場所に安全を求める権利」も保持している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは国際社会のドナーに対し、立場の弱い避難民の安全確保をするよう、ビルマ政府に継続して強い働きかけを行うよう求めた。中身には、避難民を安全な場所に退避させ、十分な住居を提供し、人道援助団体が完全な形で、妨害を受けることのないアクセスを行うことを許可することも含まれる。

「アラカン州の暴力が発生して以来、現地治安部隊はムスリム系住民に激しく敵対してきた」とアダムスは述べた。「事態に最終的な責任を持つのは中央政府であり、それを踏まえて行動すべきである。」

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