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(バンコク)–2013年3月20日~22日にかけて中部ビルマの都市メイッティーラで発生し、死傷者を出した暴力事件について、ビルマ政府は徹底的な調査を行い、扇動者と関与者の責任を追及すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。政府が断固たる措置をとり、不処罰を許さず、差別を終わらせ、宗教間での寛容を促進することが、ムスリム系住民への相次ぐ攻撃を停止するために必要だ。

マンダレー管区メイッティーラ市で起きたムスリムと多数派住民の仏教徒との衝突により、推定約40人が死亡、61人が負傷したと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチが分析した衛星画像から破壊の規模が明らかになった。約828棟の建物(圧倒的多数が住居)が完全に破壊され、35棟が部分的に破壊されている。ほぼ完全に破壊された地域は、市の中心的なマーケットの西と北東の24ヘクタールを越える地域の3カ所に集中する。破壊の様子には、2012年のアラカン(ラカイン)州での宗派間暴力で破壊された町の衛星画像と似たところがある。同州では放火によって住宅地区が広範囲に焼失した。

「政府はメイッティーラでの暴力に関する責任の所在を追及して、残忍な殺害や地区を全焼させた火災を食い止めなかった警察の不作為を調査すべきだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「ビルマ政府はアラカン州での最近の宗派間衝突を教訓とし、暴力を封じ込め、生命と財産を保護する警察の能力を高めるよう即座に行動すべきだった。」 

メイッティーラ (主な被害エリア 1)
442棟の住居と見られる建物が破壊もしくは大きな損傷をうけた
Before: Meiktila (Main Damage Area 1)

After: Meiktila (Main Damage Area 1)

メイッティーラ (主な被害エリア 2)
345棟の住居と見られる建物および商業施設が破壊もしくは大きな損傷をうけた
Before: Meiktila (Main Damage Area 2)

After: Meiktila (Main Damage Area 2)

国連人道問題調整事務所(OCHA)が発表したニーズ・アセスメントによれば、1万2千人以上がメイッティーラでの暴力で住む場所をおわれ、周辺に一時避難している。

メイッティーラでの暴力事件以来、ムスリムへの襲撃がペグー(バゴー)管区のオポ、ジョビンゴック、ミンフラ各郡など中部ビルマ各地で起きている。伝えられるところでは、兵士はペグーでデモ隊を解散させるため威嚇発砲した。国内で約9郡に非常事態宣言か外出禁止令が出され、集会は制限されている。

反イスラム感情と宗教的不寛容の拡大は、ビルマのムスリム住民の人権保護に関する深刻な課題だと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。僧団の有力者の一部が説法を行い、ムスリムを攻撃するビラや通達を出し、仏教徒住民に対し、ムスリムとの取引をボイコットし、ムスリム住民との接触を断つよう説いている。

ビルマの2008年憲法には信教の自由を保障する条項があり、政府が「認可した宗教を最大限支援し、保護する」よう定めている。テインセイン大統領府は3月28日に「人種的・宗教的緊張を生じさせる、扇動も含むあらゆる形態の暴力について、憲法と現行法に従い、国民の利益に適う形でこれを統制、対処するために真摯に努力すること」を訴えた。

こうした努力には強力な手段が伴わなければならない。たとえば最近の暴力事件を計画、組織、実行した人物を、地位や所属集団に関わらず訴追する必要があると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。政府はまた、とくに聖職者など権威者による暴力の扇動を看過しないことをはっきりと示すべきだ。

このほか政府は、暴力に対する警察の公平な対処を保証する緊急措置を講じるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2012年6月と10月のアラカン州での暴力事件では、多数派である仏教徒住民を警察が支援し、少数派のロヒンギャ・ムスリム住民にしばしば敵対した。警察はムスリムへの暴力行為の停止策をまったく講じず、多くの場合、仏教徒の暴徒と一緒になり、ムスリムが住民の大半を占める村を攻撃した。

「ビルマ政府、ならびに政治・宗教・コミュニティの指導者は、ビルマの脆弱な多文化社会において、特定集団への暴力と差別を加速させるヘイト・スピーチの終結を求めるべきだ」と、前出のアダムズは訴えた。「法の支配に則った政府の断固たる対応こそが、過激な人びとや、さらなる経済的・宗教的・政治的目的のために暴力を用いるあらゆる人びとを思いとどまらせる上で決定的に重要なのだ。」 

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