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サウジアラビア:ウェブ編集者に 死刑言渡しの危険

平和的な宗教対話の喚起を

(ベイルート)-サウジアラビア政府当局は、宗教や宗教界有力者に関する議論を目的とするウェブサイトの編集者を、拘束・起訴しているが、その全容疑を直ちに取り下げるべきである。

2012年12月17日、編集者ライフ・バダウィ(Raif Badawi)氏の裁判を審理していたジッダの第一審裁判所は、この事件を死刑適用対象の背教容疑で上訴裁判所に上訴。宗教と宗教界有力者に関する議論を目的としたウェブサイト立ち上げに同氏が関与したことのみを根拠にした容疑であり、彼の表現の自由を侵害している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局局長代理エリック・ゴールドスタインは、「宗教と宗教界有力者について、オープンで非暴力な議論を行う土台を提供する自由なウェブサイトを立ち上げたために、バダウィ氏は生死の淵をさ迷う事態に陥っている。サウジアラビア政府は平和的な議論に死刑を適用するのを止める必要がある」と指摘する。

バダウィ氏の家族の1人によると、12月17日の審理の際、ムハマド・アルマルスーム(Muhammad al-Marsoom)裁判官は、同氏の弁護士による法廷での弁護を妨げた上で、「神に悔い改めるよう」バダウィ氏に求めた。更に、悔い改め、自由主義的な信念を放棄しない場合、死刑が適用される危険性があるとも伝えたという。

アルマルスーム主任裁判官は事件をジッダのパブリック裁判所に移送してバダウィ氏を背教容疑で審理するよう勧告。これに対しバダウィ氏は不服を申し立てした。

12月17日の審理に先立ちバダウィ氏は、いずれも死刑が適用されうる「電子経路を通じてイスラム教を侮辱した」罪および「服従の域を超えた」罪の両容疑で起訴された。アブドゥラヒム・アルムハイディーフ(Abdulrahim al-Muhaydeef) 裁判官は、同氏の公判を5度にわたり指揮してきたが、12月17日の審理で説明もないままアルマルスーム裁判官に代えられた。

サウジアラビアの法律は、イスラム教シャリーア法に由来。成文化されていない上に判例主義も採用していない。結果として、シャリーア法の法源として認められているコーランと預言者ムハンマドの言行録に基づき、裁判官個人が自由な解釈を行うこととなっている。

少数の例外的犯罪を除き、裁判官は原則として背教行為などの死刑が適用される犯罪を含め、明確に定義された犯罪に事実が適合するかではなく、事実に適合するように犯罪そのものを解釈できる。サウジアラビアの裁判官は、宗教的権威や政治的権威を平和的に批判した人びとに、「服従の域を超えた」というあいまいな容疑で、頻繁に有罪判決を下している。

サウジアラビア治安部隊はジッダ出身のバダウィ氏(30歳)を6月17日に逮捕。同氏は、宗教と政治を議論するサウジアラビアのオンラインサイト「フリー・サウジ・リベラル」というウェブサイトを2008年に共同設立した。

ウェブサイト上でバダウィ氏らは、2012年5月7日をサウジリベラル派の日と宣言し、「民衆の」宗教と「政治化された」宗教の違いについて開かれた議論を行うことに関心を集めようとした、とウェブサイト事務局長のスアド・アルシャマリ(Su’ad al-Shammari)はヒューマン・ライツ・ウォッチに話した。バダウィ氏の逮捕は表現の自由を侵害する逮捕であり、ヒューマン・ライツ・ウォッチは彼の釈放を以前から求めてきた

アブドッラー国王が2011年4月に出した勅令を根拠に、電子的方法でイスラム教を侮辱する行為に関わる全犯罪は、総合情報庁内にある司法評議会の管轄権に属する。評議会は事件を直接国王に付託する権限を持ち、国王は事件を裁判所に付託することを含め、「公共の利益になるような措置をとることができる」とされる。

バダウィ氏に対する司法手続きでは、具体的にどの文言や活動ゆえに起訴されたのか、明らかにされていない。しかし国際人権法は、表現の自由を広範に保護している。たとえば暴動が差し迫った状況下での扇動となる演説をするというような狭義に定義された状況下でしか、表現の自由の制約は認められていない。国際基準は、通常の信仰とかけ離れている言論や特定の宗教や宗教団体の侮辱ととれる言論を含め、宗教に関する言論も保護している。

サウジアラビア政府当局は、ウェブサイトの設立以降、バダウィ氏に嫌がらせを続けてきた。2008年3月、検察官は彼を尋問のために逮捕・拘留し、翌日に釈放。2009年に政府は、彼が外国に旅行するのを差し止め、事業上の資産凍結を行い、収入源を奪った、と家族はヒューマン・ライツ・ウォッチに話した。

同氏の父親や兄弟は、彼を遠ざけた上で彼を不信心者と言明、更に妻の家族も背教者であるとして強制離婚させるべく、ジッダ裁判所に訴訟を起こした。妻と子どもはサウジアラビア国外で生活している。

「サウジアラビア政府は表現の自由に関する一般市民の権利をまもる義務がある。それなのに、宗教問題についてあえて議論しようとする個人を脅迫すべく、バダウィ氏になりふりかまわず攻撃してきた。政府当局は彼に対するすべての容疑を取り下げるべきだ」と前出のゴールドスタイン局長代理は述べる。

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