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ギニア:スタジアム虐殺事件の「法の裁き」実現に努めよ

当事国内での裁判なるか 国際社会の試金石となる重要なケース

(コナクリ)-ギニア政府は、2009年9月28日に同国で起きた虐殺、レイプほか人権侵害の捜査に対する支援を増すことで、犯罪の公平かつ信頼に足る訴追をこれ以上遅れることなく実現すべきだ。本結論は、捜査の妨げとなっている要因の詳細な調査や分析を基にしている。また、欧州連合(以下EU)、米国、国連人権高等弁務官事務所を含む国際的パートナーも、法の裁きの実現に向けた働き掛けと支援を強化せねばならない。

報告書「待たれる法の裁き:2009年9月28日のスタジアム虐殺・レイプほか人権侵害のギニア法廷におけるアカウンタビリティ」(全58ページ)は、加害者のアカウンタビリティ(責任追及・真相解明)実現に関するギニアの取り組みを分析。事件当日、首都コナクリにあるスタジアムにギニア治安部隊の隊員数百人が乱入、平和裏に集会を行っていた数万人の野党支持者に発砲した。夕方までに少なくとも150人が死亡するか死にかけ、何十人もの女性がレイプや集団レイプなどの残虐な性的暴行を受けた。事件発生から3年が経過するが、関与したとされる者はいまだその責任を問われていない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの国際司法上級顧問エリーゼ・ケップラーは、「2009年9月28日に起きた恐ろしい人権侵害の被害者たちは、3年以上も法の裁きを待ちわびている」と述べる。「アルファ・コンデ大統領ほか政府高官は、アカウンタビリティ実現への支援を口にしてきた。が、求められるのは言葉をもっと行動に移す努力だ。信頼に足る訴追こそが、法の支配の尊重に象徴されるギニア新時代の幕開けに、大きく貢献するだろう。」

本報告書は2012年6月に首都コナクリで行った調査と、その後の政府関係者や弁護士ほか法律家、市民社会メンバー、ジャーナリスト、被害者、国際的パートナーへの聞き取り調査を基にしている。

重大犯罪にまつわる事案は多くの場合、繊細な問題を含み、資金や人材などのリソースを必要とする。しかし、法の裁きの不在は新たな人権侵害をあおることになりかねず、それが人びとや国の発展に壊滅的な影響をもたらす、高い代償にもなり得る。人権侵害の不処罰はギニアにとって、何十年も続いている根強い問題なのだ。

2010年2月にギニアの検察官は、事件の捜査のための判事委員会を指名した。

同委員会は200人超の被害者に聞き取り調査を行うと共に、事件当時の「麻薬密輸および組織犯罪との闘い」担当大臣と厚生大臣を含む、少なくとも7人を立件した。またギニア政府は近ごろ、「紛争下の性暴力に関する国連事務総長特別代表事務所」がアカウンタビリティ実現の取り組みを支援するために推薦した国際専門家の指名を受け入れた。

しかし事件から3年以上が経過してもなお捜査は完了しておらず、多くの被害者も捜査判事委員会に証言する機会をいまだ与えられていない。同委員会はまた、少なくとも2名の重要容疑者——当時の大統領ムサ・ダディス・カマラ大尉およびクロード・「コプラン」・ピヴィ大尉、そして現ギニア治安機関当局者で、事件の被疑者ではない証言者にも、取り調べを実施していない。

2011〜12年にかけギニア司法省は、捜査判事委員会の筆記用具や諸用具を含む支給物品の不足問題に対処し始めるのに1年以上を費やした。結果として同委員会の活動は事実上、2012年5〜9月に追加手当とコンピューターが供給されるまで停止。限定的な身辺の安全対策や矛盾する専門的職責、そして重要容疑者たちが政府の要職につき続けていることなどが、更なる難題を投じている。

加えてギニア司法警察は、集団埋葬地である可能性が確認された場所への捜査判事委員会が求めている現場検証を認めていないほか、未解決なままの当該事件について現在ブルキナファソにいる元「暫定」大統領に対して、捜査判事委員会が求めている聞き取り調査も認めていない。その一方で容疑者の一部は、ギニアの国内法が認める2年を超え、審理前拘禁され続けている。

前出のケプラー上級顧問は、「捜査は一部重要な進展を遂げている。が、それが成功裏に終わるには、政府による一層の支援が求められる」と述べる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはギニア政府、とりわけ大統領と司法相に、捜査判事委員会による効果的な活動を確保するため、一連の主要基準を満たすよう強く求めた。ギニア政府が確実にすべきは次の通り:捜査判事委員会に十分なリソースおよび身辺の安全対策を提供する。必要とされる国際的専門家の任命を推進する。政府の要職に就いている重要容疑者、特に捜査を妨げることのできる地位にある個人を停職させる。ダディス・カマラ元大統領への同委員会による聞き取り調査を可能にする。

加えて、捜査判事委員会は審理前拘禁継続の必要がある個人を公判で迅速に裁き、そのほかは釈放する等、容疑者に対するいかなる違法な審理前拘禁も速やかに処理すべきだ。司法相は、証人と被害者の保護・支援計画を主導すべきであり、また「人道に対する罪の国内犯罪化」「死刑の廃止」を含む法改正を支援すべきだ。

本報告書はまた、スタジアム虐殺事件について公平で信頼に足る訴追に向け、国際社会に一層の支援を要請した。

国際刑事裁判所(ICC)と「紛争下の性暴力に関する国連事務総長特別代表事務所」が、事件に対する法の裁きを押し進めるのになくてはならない貢献をしてきたことを、本報告書は指摘。国連人権高等弁務官事務所も懸念を表明し、いく分かの非公式な物品提供を捜査判事委員会に行ってきてはいるが、同委員会が効果的に機能すべく政府に圧力をかけるという、より積極的な役割を担うべきだ。

EU、米国、フランスなどの主要国政府や政府間機関は、法の裁き推進と捜査判事委員会の効果的な活動を確実にするために、公式/非公式を問わずギニア政府関係者との外交交渉を相当程度強めるべきだ。更には、証人や被害者の保護・支援、科学的捜査、訓練、法改正といった取り組みに向けた財政上や技術上の支援を要請するよう、同国政府に勧めるべきだ。国際的パートナーたちは、スタジアム虐殺事件の捜査と訴追のために、何ら直接的支援を提供しているようにはみえない。

特に国際刑事裁判所締約国と国連は、国内法廷でのアカウンタビリティ実現の一助となる手法を見つけるべく、献身的努力をすることをとみに表明している。その言葉を実行に移せば、国内法廷が犯罪を訴追する能力がない、あるいはその意思がない場合にのみ国際刑事裁判所が介入するという、「補完性」の機能を最大限に生かせるはずだ。ギニアにおけるアカウンタビリティ実現の努力は、この目標に向かって前進する重要な機会を提供しているといえる。

2009年10月に国際刑事裁判所検察局は、ギニア(2003年に加盟済み)の状況を予備調査の対象とした。

ギニア市民社会と被害者の一部は、スタジアム虐殺事件に関して国際刑事裁判所が捜査を開始し、加害者の責任を追及できることを切望すると表明している。

国際刑事裁判所がギニアで捜査を開始できるかどうかについては、その補完性の原則上、疑問の余地が残る。実際に捜査を開始したとしても、その範囲は限られたものになるはずだ。同裁判所の本部はギニアから数千マイル離れたオランダにあり、最高レベルの責任疑惑がある容疑者や、ジェノサイド罪、戦争犯罪、人道に対する罪にのみ活動の焦点を絞るのが、その理由だ。

前出のケプラー上級顧問は、「ギニアにおける国内捜査は国際社会にとって、国内レベルでのアカウンタビリティ実現を補助することに関し、試金石となる重要なケースといえる」と指摘する。「同国の国際的パートナーは、スタジアム虐殺事件に法の裁きが下る見込みを最大にすべく、政府に対する激励、圧力、支援を駆使すべきだ。」

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