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中国:陳可貴氏の裁判は「法の支配」の試金石

盲目の活動家の甥に 家族や自分で選んだ弁護士との面会を認めよ

(ニューヨーク)-著名な盲目の活動家、陳光誠氏に様々な人権侵害を行った山東省沂南県当局が、彼の甥である陳可貴氏に独立した弁護士を付けることを許さずに隔離拘禁を続け、陳可貴氏の人権をも侵害している、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

陳氏の家族は、2012年10月12日、山東省沂南県公安局が陳可貴氏の事件を国家検察局に移送したことを知った。これは、「故意傷害」罪容疑での訴追に道を開く措置である。

陳可貴氏は2012年4月下旬以来、警察の拘束下にある。自宅に違法監禁されていた叔父の陳光誠氏が命がけの脱出を敢行した日の真夜中に、数人の当局者が陳可貴氏の自宅に押し入った。その当局者に暴行を働いた、というのが拘束の容疑だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ中国部長ソフィー・リチャードソンは、「当局の陳可貴氏に対する措置は恣意的かつ法律無視だ。以前の陳光誠氏への対応と同様だ」と指摘する。「中央政府は、陳光誠氏に人権侵害を行った容疑で政府当局者を取り調べると約束した。中央政府は、陳可貴氏の権利擁護に向けても直ちに介入するべきである。」

4月下旬、陳光誠氏はそれまでの19カ月間にわたり違法に監禁されていた自宅から脱出した。4月27日早朝に彼の逃亡に気づいた見張りは、20名ほどで同じ村に住む陳光誠氏の兄弟の家に押しかけた。逮捕前の陳可貴氏の説明によれば、私服の男たちが陳氏を捕らえるために押し入ってきた時、陳可貴氏は自衛のために台所の包丁をつかんだ。同氏の母親は、息子が切りつける前に男たちが息子を殴り、「殴り殺せ」と叫んでいたと話す。

その暴力沙汰の後、陳可貴氏は警察に出頭するために電話したものの、その後に逃亡、数日間隠れていた。その間、母親は拘束され、「犯人隠避」の容疑で立件された。陳可貴氏は5月9日、最終的に捕らえられて正式に逮捕された。警察は彼の身柄を山東省臨沂自治体にある沂南県拘置所に収容し、以来、彼はそこで隔離拘禁されている。

5月18日、警察は陳可貴氏の家族が依頼した弁護士たちによる接見を不許可とした。陳氏には、すでに政府の管理下にある法律支援センターから、複数の弁護士が付いているから必要ない、というのがその主張だった。陳氏の父親は、この処分を「受け入れられない」として激しく非難すると共に、すでに息子が拘束中に拷問されているのでは、という懸念を表明。家族が依頼した弁護士を認めない措置は、陳光誠氏の事件をそのまま繰り返している。陳光誠氏もまた2006年に、「器物破損」容疑、および「往来を妨害するために群衆を集めた」容疑で裁判にかけられ、同様に法律支援センターから弁護士を指定された。この弁護士たちは、有効な弁護を行う意思がないことが明らかな弁護活動しか行わず、結果陳光誠氏は4年3カ月の刑を言い渡されている。

中国の法律によれば、中央政府の検察局は、現在最長1カ月半以内に訴追を開始するか、訴追しないか、容疑を変えるのか、それとも警察に更に捜査を行うよう差し戻すのか、を決定しなければならない。「故意傷害」罪容疑(刑法第234条)は、警察が当初発表していた「故意殺人」罪容疑よりも軽いともみえるが、陳可貴氏と家族は完全な正当防衛だと主張し続けている。

前出のリチャードソン部長は「陳可貴氏は、すでに自分の弁護士を選択する権利を奪われている。将来の訴訟手続きに対しても先が思いやられる」と述べる。「この事件を司法が捜査すること自体は正当だ。が、事件発生に繋がった一部の地方当局者による長い間の迫害と違法行為を考慮しないのであれば、言語道断である。」

陳光誠氏が脱出後北京の米国大使館に保護を求め、米国政府と中国政府は、2012年5月、彼の今後の処遇について交渉していた。その際、中国の国営メディアは、山東省臨沂市の地方政府当局者は、陳氏とその親族を違法に監禁した容疑で取り調べを受ける見込みと報じた。陳光誠氏は後に、中央政府が捜査を約束したと証言している。しかしそれから5カ月以上が経つが、そのような取り調べが行われた兆しはなく、違法な自宅監禁に関与した地方政府当局者は誰も解職されていない。陳氏の家族に対する制約は陳氏が米国に渡って以降緩和したが、今でも当局に監視されている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは中国政府に対し、陳可貴氏と家族の面会を認めると共に弁護士選択の自由を認め、更に彼が拷問やひどい扱いを受けないよう、強く求めた。陳氏の事件が公判段階に移った際には、臨沂地方政府管轄下では、陳光誠氏と家族への迫害に関与していた当局者がいることから、公正な裁判が行われる環境にはない。そこで、山東省の人民高等裁判所は、公正な公開裁判を行うために他の当局の管轄下にある裁判所を指定して移送すべきである。

「陳光誠氏の劇的な脱出は、中国の人権侵害に世界中の注目を集め、政府を大いに困惑させた。しかし地方政府当局者に合法な行為を貫かせるどころか、政府は彼らの人権侵害行為の継続を容認しているように思われる」と前出のリチャードソン部長は指摘する。

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