(ベイルート) イラン当局はゴラームレザー・ホスラヴィー・サヴァードジャーニー氏の死刑執行予定を取りやめ、ただちに死刑を取り消すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。サヴァードジャーニー氏は反体制組織モジャーヘディーネ・ハルグ(イスラム人民戦士機構)支援の容疑で有罪となり、近く死刑になる可能性がある。氏はテヘランにあるエヴィーン刑務所の第350区画(政治囚が通常収監される区画)に収監中だ。

「イランは死刑執行については世界最悪レベルであり、サヴァードジャーニー氏のような政治活動家に死刑を宣告している」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局長代理エリック・ゴールドステインは指摘した。「当局はサヴァードジャーニー氏が暴力的な反政府活動を行ったと一切主張していない。にも関わらず、氏の生命は窮地に立たされている。」

未確認情報によれば、当局はサヴァードジャーニー氏(50)を早くて2012年9月10日にも処刑する可能性がある。テヘランの革命裁判所は氏に対し、モジャーヘディーネ・ハルグ(イスラム人民戦士機構)と関係がある海外テレビ局に協力したとして、2010年「武力による体制破壊」の罪(モハーレベ)で死刑判決を下した。イラン政府は同団体をテロ組織と見なしている。イラン最高裁は4月21日に氏の死刑判決を維持した。

サヴァードジャーニー氏の件について、ヒューマン・ライツ・ウォッチにもたらされた複数の消息筋の情報は、法の適正手続きと公正な裁判に関する深刻な懸念を抱かせるものだ。当局はまず氏を2008年に逮捕し、モジャーヘディーネ・ハルグなどが運営するテレビ局「スィーマー・アーザーディー」(本部ロンドン)に対して、情報と写真と提供したほか、金銭的援助を行った可能性があるとしてスパイ罪で起訴した。ラフサンジャーン市革命裁判所は氏をスパイ容疑で有罪とし、6年の刑を宣告した。

2011年7月、サヴァードジャーニー氏の刑期が執行中であるにも関わらず、司法権はファイルをテヘラン革命裁判所第26支部に送った。消息筋はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、テヘラン高等裁判所は革命裁判所第26支部に対し、氏への容疑を変更し、武力による体制破壊罪で裁判を行うように命令した。氏の代理人側は、新しい裁判を行うことは、イラン刑事訴訟法上の一事不再理に該当すると反論したが、受け入れられなかった。

2010年、地方裁判所はサヴァードジャーニー氏を武力による体制破壊罪で有罪とし、死刑判決を下した。

イラン刑法第186、190、191条によれば、反政府武装蜂起に対する責任か、反政府武装蜂起を行う組織への所属が認定されると、武力による体制破壊罪で有罪となり、死刑判決を下される可能性がある。

サヴァードジャーニー氏に対する訴追は、イランも批准する市民的及び政治的権利に関する国際規約に基づく深刻な懸念を生じさせる。同規約第14条7項は、「何人も、それぞれの国の法律及び刑事手続に従って既に確定的に有罪又は無罪の判決を受けた行為について再び裁判され又は処罰されることはない」とうたっている。同規約の履行状況を監視する国連規約人権委員会は「死刑宣告に至る裁判では、公正な裁判の保証に対する周到な尊重がとくに重要である。本規約第14条の規定が尊重されていない裁判に基づいて死刑判決を下すことは、生命に対する権利の侵害である」と述べている。

第6条2項では、死刑は「最も重大な犯罪についてのみ科することができる」と定める。たとえサヴァードジャーニー氏が公正な裁判を経て有罪になるとしても、モジャーヘディーネ・ハルグに関係するテレビ局への情報と金銭の提供はこの基準を満たさないと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、イラン治安部隊が、拷問などの身体的・心理的強要策を用いて、治安関連の事案で虚偽の自白を引き出し、そして裁判所が被告人を武力による体制破壊罪で有罪とした裁判では、検事が争いのある自白をほとんど唯一の根拠とし、被告人の有罪を立証する説得的な証拠を一切提出しないという数多くの事例を記録している。

サヴァードジャーニー氏の家族はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、氏はラフサンジャーンとエヴィーンの両刑務所での取調・捜査段階で40日間独房拘禁された後、エヴィーン刑務所第350区画に移送されたと話している。この男性はまた、家族が氏に最後に面会したのは9月3日だとし、家族は今、当局が氏を9月10日に死刑にするつもりとのエヴィーン刑務所内での噂を懸念しているとも述べた。イラン法では死刑執行日を通知すると定めるが、氏の家族も代理人にも通知はない。

イラン司法権当局は、家族や代理人にきちんと通知を行なわないまま囚人を死刑にしてきた経緯があると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

イラン政府は2010年1月以降、武装組織またはテロ組織との関係があるとして「武力による体制破壊」または「地上への頽廃の撒き散らし行為」罪で起訴された、少なくとも30人を処刑してきた。また数十人が「武力による体制破壊」など治安関連の容疑で死刑を宣告され、収監中であることがわかっている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、こうした事例の多くで、イラン司法権当局が、その人物が反体制活動家であるというだけの理由で、テロ活動を行っていないにも関わらず、起訴し、有罪判決を下し、処刑したことを示す証拠があることを記録している。

2011年にイランは少なくとも600人を処刑しており、その数は中国に次いで世界第二位だ。アムネスティ・インターナショナルによれば、イラン当局は少なくとも182人の死刑を行ったと認めているが、このほかに少なくとも100人が気づかれないまま処刑されているとの信頼できる情報があるが、ほとんどは薬物関連で有罪判決を受けた者だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの死刑に対する立場は、死刑はその残虐さと目的の点で類のないものであり、また恣意性や偏見、誤謬にまみれており、いかなる場合でも行われるべきでない、というものである。さらにイランでの裁判は、死刑が適用される犯罪の場合も含めて、国際的な公正裁判手続と法の適正手続きに関する権利への深刻な違反が甚だしい。死刑執行のモラトリアムを求める国連総会決議を支持する国の数は増えており、イランもこの列に加わるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

イラン刑法改正案でも、子どもと、死刑を用いる国々の間でも普通は死刑にならない罪を犯した者に対して、死刑が維持されていることをヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は明らかにした。

「イラン政府は直ちに武力による体制破壊罪と共に、この罪に類似した、非暴力の反政府活動を犯罪化する規定の曖昧な反テロ法を廃止するべきだ」と、前出のゴールドスタインは述べた。「また濫用の著しい死刑についてモラトリアムを実施すべきだ。」