Members of Bangladesh Rifles (BDR) accused of mutiny are summoned for a hearing before a special court in Dhaka July 12, 2010.

© 2010 REUTERS/Andrew Biraj

(ニューヨーク)-09年のバングラデシュ・ライフル国境警備隊(以下BDR)による反乱の容疑者らが、拘禁中に頻繁に拷問などの虐待を受け、更に死亡者まで出ている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書内で述べた。6千人近くの容疑者に対する集団裁判は、公正な裁判に関する重大な懸念を生じさせている。

報告書「去らない恐怖:バングラデシュの09年ライフル国境警備隊の反乱 容疑者らに対する拷問、獄死事件、不公正な裁判」(全57ページ)は、反乱を詳細に解説すると共に、反乱計画の容疑で拘禁中の容疑者らに対する治安部隊による拷問などの重大な人権侵害、そして、一度に数百人の容疑者を裁く集団裁判における公正な裁判を受ける権利への侵害に対する懸念について詳述している。悪名高い緊急行動部隊(以下RAB)が、こうした虐待の多くに関与してきたとみられる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長、ブラッド・アダムスは「74人の死者を出した09年の反乱の加害者の責任は追及しなくてはならない。しかし、法の正義の実現が、反乱の容疑者に対する拷問や、不公正な裁判などで行われてはならない」と述べる。「政府の当初の対応は、反乱に対し均衡がとれていた。人口密集地帯で過度な武力行使を求めた軍の要求を拒否し、多くの命を救った。しかし政府はそれ以降、人権侵害と集団裁判などで、治安部隊による報復を基本的に許容している。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは本報告書作成のため、被害者の家族、検察官、弁護士、ジャーナリストを含む、60人以上の人びとに聞き取り調査を行った。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはバングラデシュ政府に、反乱後に人権侵害疑惑に対する厳格な捜査と訴追のため、十分な能力、権限、資金を備えた独立特別捜査委員会を設立するよう求めた。集団裁判はやめるべきだ。

反乱の際、57人の軍将校を含む74人の人びとが殺害され、多くの軍人の妻たちが性的暴行の被害に遭ったといわれている。長年にわたる下級警備隊員の不平不満が引き金になったと考えられているこの反乱は、2009年2月25日BDRが毎年行っている祝祭の日に、ダッカ中央本部のピルカナ兵舎で起きた。シェイク・ハシナ首相率いる当時の新政府は、反乱鎮圧に向け、軍が要求したような重武装の部隊を派遣するのではなく、交渉による決着を選択した。

しかし反乱終結後、軍や他の治安機関は直ちに数千人の容疑者の一斉検挙を始めた。拘禁された者の家族やメディアは、すぐに拷問疑惑と拘禁中の複数の死亡事件を報じた。

少なくとも47人の容疑者が拘禁中に死亡している。被拘禁者は、多くの場合足の裏や手のひらなどを殴られ、電気ショックを与えられた。被害者のなかには、天井から逆さに吊るされたと、そのときの様子を詳述してくれた人たちもいた。拷問を耐えた人びとの多くが、長期にわたる腎不全や部分麻痺などの後遺症に苦しんでいる。拷問の結果、家族の精神が破壊され、うつ状態になったと語る被害者の家族たちもいる。

父親が拘禁中に死亡したある男性は、彼の父親は逮捕されるまで健康だったと話した。「父は自分に何が起こったのかを私に隠そうとしていました。でも父が歩くのに困っていたのが見てとれたんです。父はほとんどよろけていて、立てなかったんですよ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、バングラデシュ政府に対し、2009年3月以来これらの問題についての懸念を何度も表明してきた。また、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、拘禁中の反乱容疑者に対する拷問や死亡事件について、政府が一度たりとも捜査を命令していないことを把握している。そればかりか、政府による公式声明では、拘禁中に身体に重大な危害を加えられていたというかなりの証拠がある容疑者らについて、心臓マヒあるいはその他の自然な原因により死亡したと主張している。

バングラデシュは国連拷問等禁止条約の締約国ではあるが、治安部隊による拷問が日常的に行われている。ヒューマン・ライツ・ウォッチなどのNGOは長年にわたり、軍、RAB、同国の主要諜報機関である軍情報総局を含む治安部隊が、拷問を組織的に行っている実態について報告している。

前出のアダムス局長は「拘禁中に拷問が行われ更に死者が出ているという疑惑に対して、捜査も行わないというバングラデシュ政府の姿勢は、政府が被害者の身に起こったことや、政府部隊の行為について関心がないということを示している」と指摘する。「政府は、人権や法の支配など口先ではまっとうなことを言っているが、政府の治安部隊による人権侵害とその不処罰を終わらせるためには何もしていない。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、特別軍事法廷や特別文民法廷での集団裁判の後、極めて多数の人びとに有罪判決が下されたことについて重大な懸念を表明している。被告人のほとんどが、適切な弁護人への依頼、弁護の準備をするための十分な時間の確保、自らに不利な証拠へのアクセスなどができず、更には自らに対する容疑さえ知らなかった。検察側は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、脅迫で得られた証言を被告人に対し不利に使わないと約束していたものの、被告側弁護士らは脅迫によって得られた自白が、証拠資料に含まれていたと語る。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが特に懸念を表明したのは、一度に800人以上の被告人について審理を行う集団裁判。約4千人の人びとが既に軍事法廷で有罪判決を受けているが、それもすべて集団裁判によるものであった。バングラデシュ刑事訴訟法で設立された特別文民法廷が、殺人などの重大容疑をかけられている847人の被告人に対する審理を行っている。死刑犯罪容疑も含まれる。

バングラデシュ政府は直ちに集団裁判手続きを停止すべきである。その上で、人権侵害の責任者の地位や所属機関にかかわらず、反乱容疑者に対する虐待死、拷問など、あらゆる虐待疑惑を厳格に捜査し、必要な場合には起訴できる十分な専門能力、権限、資金を備えた、独立特別捜査委員会を設立すべきである。

そうした独立した特別捜査委員会が設立されるまでの間、検察官は、人権侵害の責任者の地位や所属機関にかかわらず、反乱容疑者に対する虐待死、拷問、虐待についての疑惑を捜査し、必要な場合は起訴しなければならない。

前出アダムス局長は、「遺族や反乱事件を生き残った人びとのためにも、法の裁きが必要だ。被告人の弁護士に、各依頼人に対する証拠書類アクセスを与えかつ十分精査する時間を与えない限り、公正な裁判を実施することは不可能だ」と述べる。「現在行われているような集団裁判は、被害者が求める法の裁きを実現できない上、反乱の際の恐ろしい犯罪の責任者はいったい誰なのかという問いについても本当の答えをもたらさない。」