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(ベイルート)-イエメンでは児童婚が蔓延しており、その結果、少女たちは、教育を受ける機会を奪われる他、健康を害され、二級市民扱いされ続けている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書で述べた。少女たちが享受できる機会の拡大と人権保護のため、イエメン政府は結婚の最低年齢を18歳と定めるべきである。

本報告書「『どうして小さな少女の結婚を認めてしまうの?』:イエメンの児童婚」(全54ページ)は、若くして結婚を強制された少女たちが生涯にわたって被る影響を調査して取りまとめている。イエメンの少女と女性たちは、ヒューマン・ライツ・ウォッチに、家族から強制された児童婚の経験について語る中で、子どもを生むのか、産むとしていつ産むのかなど人生の重要問題について決定権を奪われている実態について語ってくれた。彼女たちは若年婚によって教育を中断されたと話し、中には夫の性暴力や家庭内暴力の被害に遭ってきた人もいる。イエメンでは、女性の結婚に関する法定年齢がない。多くの少女が結婚を強制されており、8歳くらいで結婚させられる場合もある。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・北アフリカ局 女性の権利調査員、ナディヤ・ハリーフェは「イエメンでは、今般の政治危機で、児童婚などの問題は政治上優先順位が低くなってしまっていた。しかし、今こそこの問題に取りかかる時だ。結婚の最低年齢を18歳に定め、イエメンでの抗議運動に大きな役割を果たした少女と女性たちが、今度はイエメンの未来を築くための貢献ができるようにするときだ」と語った。

過去数ヶ月間、デモ隊は男女平等を保証する方策を含む、さまざまな改革を要求した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、児童婚は少女と女性たちへの差別と人権侵害の主な原因となっており、改革の優先課題とするべきだと述べた。

イエメン政府と国連のデータによると、イエメンの少女のおよそ14%が15歳未満で結婚させられ、52%が18歳未満で結婚させられている。地方の一部では、8歳くらいの少女が結婚させられている。少女たちは、時にはるか年上の男性との結婚を強制される。少年が児童婚を強制されることはめったにない。

本報告書は、2010年8月から9月の間にイエメンの首都サヌアで行った現地調査をもとにしている。その調査の中で、児童時に結婚させられた少女と女性たち30人以上と、NGO職員、保健省や教育省職員への聞き取り調査を行なった。

マグダ・T(本人保護のための仮名)はヒューマン・ライツ・ウォッチに、「私は6年生になっていたけれど、結婚するために学校を辞めました。今、娘を見て、自分自身に問いかけるのです。『誰がこの子を教育するの?』と。私にはできないことだから。[教育の大切さは]年をとってはじめて分かったのよ」と語った。

ある16歳の少女は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに以下のように語った。「父親が結婚しろって、うるさかったの。大学に行って、弁護士になりたかったわ。でも、今はもうそのチャンスはないの。だって赤ちゃんが生まれるんですもの。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、幼い時に結婚を強制されたと語った複数の少女と、思春期に入ってすぐ学校を辞めさせられた少女数人に聞き取り調査を行った。あるイエメンでの研究によると、9歳から、娘に学校を辞めさせる親が地方では増える。その理由は、幼い娘に家事手伝いをさせるためや、年下の兄弟姉妹を育てさせるため、そして時に結婚させるためなどである。聞き取り調査に応じた少女と女性たちのほぼ全員が、一度結婚したら、学校に行き続けられなくなったし、学校を卒業もできなくなった、と語り、多くは結婚後すぐに子どもを持ったと話した。

セーブ・ザ・チルドレンなどの他の子どもの権利団体が行った調査によると、教育を十分に受けず、婚姻関係上も十分な権限を持たない少女たちは、子どもの数や出産の間隔をほとんど自らコントロールできておらず、その結果、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)におけるリスクが増大している。

聞き取り調査に応じた少女と女性たちは、家庭内暴力や性的暴力などに頻繁にさらされていると語った。ヒューマン・ライツ・ウォッチに、夫や義理の両親そして夫方の他の親戚もが、言葉による暴力あるいは身体的暴行を加えたと話す少女や女性たちもいた。イエメンでは、女性は結婚すると、夫方の大家族と生活を共にすることが多い。

イエメン人の人権活動家タワックル・カルマンは、女性の権利を向上させた活動を評価され、リベリアの女性指導者2人と共に、2011年12月10日にオスロで、ノーベル平和賞を受賞する予定となっている。カルマンは、児童婚を禁止しないイエメン政府を批判してきた。2010年の記事で、カルマンは「結婚の最低年齢を18歳とするというコンセンサス作りにむけて、私たちのイスラム法の中にも十分なスペースがある」と書いている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、将来のイエメン政府にとって、この問題に対処することで、ジェンダー平等とすべての国民の人権保護に強い関心があることを示す好機だ、と述べた。イエメン政府は、結婚の法定年齢を18歳とすると共に、児童婚の有害性について国民の意識を高めるために、立法措置を取るべきである。イエメン政府と国際援助国と援助機関は、教育やリプロダクティブ・ヘルスに関する健康情報とサービス、さらに、少女と女性たちの、家庭内暴力からの保護へのアクセスを拡大すべきである。

前出のハリーフェは、「援助国・援助機関は、イエメン内の教育と保健改革に数百万ドルもの資金を投入している。しかし、児童婚を禁止しなければ、いかなる国際援助も、少女たちが退学させられ、児童婚における健康上のリスクを負うことを防げないだろう」と述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、イエメン政府のこの問題への対応の仕方について、むしろ逆行している、と指摘。イエメン国会は、1999年には、宗教的根拠に言及しながら、それまで15歳だった少年少女の結婚に関する法定最低年齢を廃止してしまった。2009年には、議会は、最低年齢を17歳と設定することを賛成多数で採決した。しかし、国会議員の1グループが、最低年齢の再導入はイスラム法(シャリア)に反すると主張。ある議会議事手続きを利用して、同法案を無期限に棚上げしてしまった。

中東と北アフリカの多くの国々は、シャリアを法の源泉として認めているものの、ほとんどすべての国が少年少女の結婚に関する最低年齢を定めている。その多くは、18歳未満を児童と定義する国際基準や条約に同意し、結婚年齢を18歳若しくはそれ以上としている。「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女性差別撤廃条約)」と「子どもの権利条約」の実施状況を監視する国連の条約監視機関である女性差別撤廃委員会は、結婚の最低年齢を18歳とするよう勧告している。

イエメンは、「子どもの権利条約」「女性差別撤廃条約」「婚姻の同意、婚姻の最低年齢及び婚姻の登録に関する条約」「市民的及び政治的権利に関する国際規約」「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」など、児童婚を明確に禁止し、加盟国に児童婚を撲滅する対策を講じるよう求める条約の加盟国である。

前出のハリーフェは、「少女たちは、妻や母になるよう強制されてはならない。イエメンは、政治改革を経て、指導者が多大な害をもたらす不正義を正し、少女と女性たちのための平等を盛り込んだ社会正義への新たな道筋をつけるこの機会をしっかり捉えるべきである」と語る。 

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