A torn banner showing former Libyan leader Muammar Gaddafi is seen on a building in Sirte October 21, 2011.

© 2011 Reuters

(リビア・ミスラタ)-リビア国民評議会(NTC)は前リビア指導者ムアンマル・カダフィ大佐とその息子ムタシム氏の死亡について、国際機関と協力して独立性を保った公平な調査を即時開始すべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

国民評議会や他の消息筋は、両氏が10月20日にシルトで死亡したと伝えている。戦闘中に負傷しての死亡か、拘束後の殺害なのかについては不明。しかしながら、ヒューマン・ライツ・ウォッチが入手した情報や当日撮影されたと思われるビデオや写真には、両氏が反カダフィ派部隊に生きたまま拘束された様子が映っている。このことは、彼らが拘束後に処刑された可能性を示している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・北アフリカ局長サラ・リー・ウィットソンは、「カダフィ大佐と息子ムタシム氏の死に関して、信頼に足る調査を開始せねばならない証拠が十分にある」と述べた。「両氏がいかにして死亡したのかを明らかにすることが重要だ。これが、新リビアを支配するのが法律なのか略式暴力なのかの試金石となろう。」

拘束中の個人の故意による殺害は、重大な戦争法違反・戦争犯罪であり、国際刑事裁判所(ICC)によって訴追される可能性がある。また戦争法は、捕虜に医療ケアを提供するよう、紛争当事者に義務づけている。

カダフィ派部隊による多くの戦争犯罪疑惑に並び、両氏の死に関して国民評議会が迅速かつ公平な調査を行わない場合は、リビア国民は法の裁きを自らの方法で執り行えるのだという危険なメッセージにも繋がりかねない。

カダフィ大佐の死にまつわる未解明の状況は調査されねばならない。捕えられた直後に撮影されたとされるビデオで、左顔面から流血した大佐の生存が確認できる。反カダフィ派戦闘員がシルトの拘束場所から、大佐を立たせて連行する様子も映っている。「殺すな! 殺すな! 生かしておかなきゃならないんだ!」という怒声も録音されていた。

その後撮影されたと思われるアマチュアビデオには、戦闘員がカダフィ大佐を車のボンネットに乗せ、そこで大佐が顔面の血をぬぐう様子がみられる。他のビデオには大佐が車から引きずり降ろされて、興奮した群衆に暴行される様子もあった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは10月21日、ミスラタにある食肉用冷蔵室に保管されたカダフィ大佐の遺体を短時間ではあるが観察。その間、何百人もの住民が前指導者の遺体を見物しようと外で列をなしていた。ヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員が遺体の向きを変えたり、間近で観察することは許されなかった。1発の銃弾が大佐の左こめかみに撃ち込まれているのが見えたが、反対側に貫通した形跡はなかった。また、それぞれ1インチほどの深い切り傷が胴体部左に2カ所あった。ヒューマン・ライツ・ウォッチはカダフィ大佐の死因を特定することはできなかった。

リビア国家安全保障の前責任者で、リビア中央部および東部カダフィ派部隊の司令官だったムタシム氏のビデオ映像と写真は、彼が拘束された後に殺害されたことを強く証拠づけている。フェイスブックに投稿された短いビデオには、血まみれの服を着て部屋の中でタバコを吸っている拘束下の同氏の姿が映っている。顔や首に傷もない。ヒューマン・ライツ・ウォッチが確認した写真にも、同じ部屋で水を飲んでいる様子が写っていた。もうひとつのビデオには同じ部屋で、首に傷があるようにみえる同氏が寝ころんだまま生存している姿があったが、その後の遺体写真には首前部に深い傷がみられた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは10月20日、ムタシム氏の遺体をミスラタで短時間ではあるが観察し、喉に大きな傷があるのを確認した。その傷が死因か否かについては明らかではない。

シルトでのカダフィ大佐拘束に結びついた戦闘に直接関与していた、ミスラタのサヘル・アルシャーキ旅団(Sahel al-Sharki Brigade)のある指揮官は、10月20日ヒューマン・ライツ・ウォッチに次のように話している。「車両約50台が西に向かって疾走し、シルトから脱出しようと試みた午前8時半ごろに、激しい戦闘に巻き込まれた。9時半ごろ、NATOの戦闘機がその車列を空爆した」——戦闘はそれから後1時間ほど続いたという。

同指揮官は、「午前11時ごろ、他の複数の旅団が同地域で掃討作戦を行い、排水溝トンネルの中でカダフィ大佐を発見した。大佐は負傷していたが、重傷ではなかった」と話した。

指揮官は続けて、その時点で事態は「制御不能」になったと証言。戦闘員がカダフィ大佐を引きずって殴りつけ、ボンネットの上に大佐を乗せたまま車を走らせようとしたという。大佐は途中で落ちて更に負傷した。その時点では、大佐の頭部に銃弾による傷は1つもなかったとも話している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはカダフィ大佐が拘束された場所を訪問。何十台もの車両の残骸の中に、およそ95の遺体が横たわり、それらはNATOの空爆か、カダフィ派部隊と国民評議会部隊による戦闘で殺害された人びととみられる。車両の燃料タンク爆発により、30ほどの遺体が炭化していた。

現場でヒューマン・ライツ・ウォッチは、6〜10のカダフィ派部隊戦闘員の遺体を目撃した。一部は縛られており、処刑された模様。頭部に銃弾による傷があり、地面には弾痕も残っていた。

国民評議会指導部はカダフィ大佐の死についてこれまで様々な説明を行っており、カダフィ派と国民評議会部隊の銃撃戦に「巻き込まれて」殺害されたという説も含まれている。

しかしながら、シルトでヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた目撃者は誰一人として、カダフィ大佐拘束後の銃撃戦について言及していない。

シルトで拘束されたカダフィ派戦闘員が虐待されるようなことがあってはならない、とヒューマン・ライツ・ウォッチはくり返し懸念を表明していた。拘束された戦闘員の正確な数と所在は不明のままである。

前出のウィットソンは、「拘束された戦闘員は直ちに収容施設として認められた場所に送られるべきであり、その処遇は人道的であるべきだ」と述べる。「重大犯罪に関与した両陣営のすべての個人が公正に訴追されねばならない。」

国際刑事裁判所(ICC)から指名手配されているカダフィ大佐側の高官、大佐の息子セイフ・アルイスラム氏と前軍部諜報部長アブドラ・サヌーシ氏は依然として行方不明のままだ。両氏の身柄が拘束された際は国際刑事裁判所に送られるべき、というのがヒューマン・ライツ・ウォッチの見解である。