(ニューヨーク)タイの新首相による初のビルマ公式訪問では、投資案件だけでなく、両国の人権問題にも焦点をあてるべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。タイのインラック・シナワット首相は2011年10月5日、ビルマの首都ネピドーに数時間滞在し、ビルマのテインセイン大統領と会談する予定だ。なお民主化指導者アウンサンスーチー氏や民族政党幹部と会談する予定はない。

インラック首相の訪問では、両国間の年来の懸案事項も話題となる。タヴォイ(ダウェー)港湾開発事業などタイが行う投資案件や、タイのビルマ難民キャンプに住む140,000人以上の難民の今後、タイのビルマ移民労働者約200万人の法的地位、両国の国境貿易も話し合われる。このほかビルマからの大規模な麻薬密輸などの安全保障問題も議題になるだろう。タイ政府は、インラック首相の訪問がビルマに民主主義への移行と改革を促すためのものであり、改革は2014年にビルマに東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国を担当させるかどうかを決める上でも当然指標になる、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

「インラック首相は、タイの投資と同じくらい人権問題を懸念していることをビルマ政府首脳に明確に示すべきだ」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理エレイン・ピアソンは述べた。「つまり、全政治囚が釈放され、実質的な人権状況改善策に向けた具体的な予定表が存在して初めて、タイ政府はビルマのASEAN議長国就任の動きを支持すると伝えるべきだ。」

今年5月のASEAN高級会合で、ビルマは2014年に、ラオスの次にASEAN議長国に就任することを提案した。この問題の結論はバリで11月に開催されるASEAN首脳会議で出される見込みだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはタイ政府に対し、国境の難民キャンプに住む難民の安全を保障すること、またこれらの難民を国際法に違反する形で強制帰還しないよう確約することを強く求めた。少数民族地域での戦闘は2010年11月のビルマ総選挙後に拡大したため、新たな避難民と難民が数千人規模で発生している。ビルマ国外には長期にわたって亡命生活を続ける反体制派が多数存在するが、ビルマ政府はこうした人びとを歓迎すると伝えられてはいる。しかしタイ政府は、ビルマへの帰還が完全に任意のものであること、また実施にあたっては、安全と尊厳が保たれ、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の広範なモニタリングの下で行われることを確約すべきである。

「ビルマに改革の動きが若干見えても、タイ政府がビルマ難民を時期尚早の状態で帰還させるための口実にはなりえない」と前出のピアソンは述べた。「ビルマ政府のいう改革については誠実さが疑わしいこと、また国境地帯で激しい戦闘が行われていることを考えれば、人びとを帰還させてわざわざ危険にさらすようなことなどありえない。」