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リビア:治安部隊が「怒りの日」デモに 実弾発砲

リビア政府は非暴力のデモを行なう民衆の権利尊重を デモ隊殺害事件の捜査を

(ニューヨーク)リビアの治安部隊は、全国に広がる非暴力デモを解散させようと、少なくとも24名の抗議運動参加者を殺害、多数が負傷したと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。リビア当局は、実弾射撃などの殺傷力の高い武器の使用は、人命を守るためにやむをえない場合を除き中止すべきだ。また、実弾射撃による殺傷事件についての独立した捜査を開始するべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

2011年2月17日、リビアのバイダ (Baida)、ベンガジー(Benghazy)、ゼンテン(Zenten)、ダーナ(Derna) およびアッジダビア(Ajdabiya)で、多くの民衆が結集。非暴力の平和的な抗議デモを行った。複数の目撃者によると、リビアの治安部隊は、抗議運動を解散させようと抗議運動参加者に実弾を発砲、殺害した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東・北アフリカ局局長サラ・リー・ウィットソンは「平和的なデモ参加者に対し、リビアの治安部隊は、許されない違法な攻撃を行なった。国内のあらゆる抗議に対し、カダフィ大佐は残虐な対応も躊躇しない現実が明らかになっている」とが指摘。 「リビアの民衆は、人としての権利を求めているだけだ。それだけなのに、なぜ、リビア政府は民衆の命を危険にさらすのか」と述べた。

東部の都市バイダ(Baida)でも、悲惨な状況が繰り広げられた。リビアの情報筋によると、2月17日の午後1時ごろ、病院のスタッフが負傷したデモ参加者70名への緊急医療の必要性を訴えて医療物資の追加支援を要請。70名の負傷者の半数が銃撃の犠牲者で瀕死の状態にあったという。ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取りに応じた複数の抗議運動参加者によると、2月16日の夜、治安部隊は、非暴力のデモ隊を催涙ガスや実弾で攻撃。デモ参加者2名を射殺した。ジュネーブに本拠を置くリビアの人権団体リビア・ヒューマン・ライツ・ソリダリティ(Libya Human Rights Solidarity)は、これまで射殺された犠牲者のうち3名の氏名を確認。その3名は、サフワン・アティヤ(Safwan Attiya)、ナッサー・アル・ジュウェイジ(Nasser Al Juweigi)、アハマド・エル・クワビリ(Ahmad El Qabili)である。

ある抗議運動参加者は、2月17日、正午の祈りと2月16日に殺害された人びとの葬儀の後、新しいデモが始まった、とヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。多くの家族がデモ隊に加わって数百人にまで膨れ上がり、口々に「政権打倒」「カダフィ大佐、出てゆけ」と繰り返しながら治安部隊事務所まで行進した。抗議運動参加者の一部は、携帯電話でデモの様子を撮影し、その映像をネットに投稿した。

バイダ(Baida) の病院で治療を受けていたあるデモ参加者は、ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取りに対し、集中治療室の近くに座っていたところ、治安部隊に射殺された16名の遺体の他に、数十人の負傷者を目撃した、と述べた。彼は、特殊部隊と私服で武器をもった男たちが、デモ隊を阻止しようと実弾射撃を行なった、と言う。

あるベンガジ(Benghazi)のデモ参加者は、弁護士や活動家など数百人がデモに参加し、憲法と法の支配を尊重するよう求めてベンガジ(Benghazi) 裁判所の階段で集結した、とヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。リビアの情報筋がヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによると、当日、デモが始まる前に、リビア治安部隊はベンガジ(Benghazi) 在住のジャーナリスト、ヒンド・エル・ハウニー(Hind El Houny)と、1996年のアブ サリム(Abu Salim) 刑務所での受刑者大虐殺事件の真相究明と裁判を求めている家族グループのひとつセーラム・スイダン(Salem Souidan)を逮捕。リビア治安部隊はバニ・ワリッド(Bani Walid) 在住の元政治犯のひとり、アブデル・ナセル・アルラバシ(Abdel Nasser al-Rabbasi)も逮捕した。

そのデモ参加者は、「ナイフで武装した私服の男の集団がいた。その後現れた治安部隊と一緒に、その武装した男たちが、デモ隊を解散させようと襲撃するのを見た」と証言。彼は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、「治安部隊はその日のうちに少なくとも17名のデモ参加者を射殺した。多くはアブデルナッサー通りの近くで殺された」と語った。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、うち8人の死亡を確認することができた。

また、リビア政府は、政府支持者に対し、政府抗議デモに対峙させようと手をまわしたと見られる。2月16日、リビアの2つの携帯電話ネットワークのうちの1つ「リビアナ」に加入している人びとに「愛国心のある若者は立ち上がれ」と「国家のシンボルを守れ」という内容の携帯テキストメッセージが送信された。2月17日の午後11時30分頃、トリポリのあるデモ参加者は、トリポリでも抗議デモが始まった、とヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。

前述のウィットソンは、「カダフィ大佐は、依然として、エジプトと国境を接するリビアで、失脚したムバラク元大統領がエジプトで取ったのと全く同じ行動をとっている。驚くべきことだ」と述べた。「当時のムバラク大統領と同様、カダフィ大佐は、治安部隊と暴徒たちを動員し、民衆が非暴力でデモを行なう権利を暴力的に否定している。この対応をみると、カダフィ政権はますます失脚の運命に近づいているのではないか。」と指摘する。

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