A video posted to YouTube by activists from Quseir, Syria shows ZAB 2.5 incendiary submunitions burning in the playground of the Ghaleb Radi school following an airstrike on December 3, 2012.

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(ワシントンDC)-シリア政府軍が2012年11月中旬以降、シリア全域の少なくとも4カ所で、空中投下型の焼夷弾を使用している。本結論は目撃者4人への聞き取り調査とヒューマン・ライツ・ウォッチが分析した多数のビデオ映像を基に導きだした。

シリア政府軍は焼夷兵器の使用を直ちに止めなければならない。重度の火傷を引き起こす空中投下型焼夷兵器については、人口密集地における使用を合計106カ国が禁止しているが、シリアは禁止していない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ武器局局長のスティーブ・グースは、「焼夷兵器は人口密集地で使われた場合、特に一般市民に残酷な苦しみと財産への甚大な破壊をもたらす。シリア政府がこの兵器を使い始めているという事態を、私たちは深く憂慮している」と述べる。「シリア政府は焼夷兵器がもたらす破滅的な危害を認識し、その使用を止めなければならない。」

焼夷兵器は、ナパーム、サーマイトまたは白リンなどの引火性物質をいくつでも内包でき、目標物に火を放つ、あるいは火傷を負わせる目的で作られる。化学兵器ではないので有毒物質を放出して殺害・行動不能にするといった兵器ではない。

焼夷兵器は、多くの場合骨まで達するような極めて大きな苦痛をもたらす火傷を引き起こし、呼吸器系にダメージを与えることもある。火傷の治療は、十分な医療設備のない紛争地帯では特に困難で、治療がひどい苦痛を伴うこともある。回復不可能な傷と体の変形によって、被害者に対する村八分状態や差別を引き起こすこともある。焼夷兵器は広いエリアに影響を及ぼすため、インフラ火災も起こす。つまり、傷痍兵器は、人口密集地帯で兵士と一般市民を区別する方法で使用できないということでもある。

11月中旬以降、焼夷兵器の使用が少なくとも4カ所、ダマスカスのダラヤ、イドリブ県のマーラト・アルニューマン、ダマスカスのバビーラ、ホムス県のクセイルで報告されている。ある活動家はヒューマン・ライツ・ウォッチに、自由シリア軍戦闘員2人を含む成人4人が、11月28日にマーラト・アルニューマンでの焼夷兵器を使った空爆の際に負傷したと報告した。2人の地元活動家およびビデオ映像によると、女性と子どもを含むおよそ20人の一般市民が、12月3日にクセイルにある学校および隣接住宅に対する、焼夷兵器も使われたことが明らかな空爆で負傷している。地元住民の話と映像の精査からは、ダラヤにある住宅1軒もまた、焼夷兵器の直撃を受けたことが分かる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、シリア国内の他地域でも焼夷兵器が使われたという未確認報告を調査・検証中である。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは最近活動家らによって投稿されたビデオ上で、少なくとも2種類の空中投下型焼夷弾の残骸を確認している。残骸にあった識別標識は、それが旧ソ連製ZABシリーズの航空機用焼夷弾であることを示している。1種類目はZAB-100/105という100キログラム爆弾、2種類目はRBK-250 ZAB-2.5という焼夷弾で、ZAB2.5子焼夷弾48発をサッカー場サイズの広さにばらまくものである。中立的な武器専門家ニック・ジェンゼン・ジョーンズの技術分析によれば、子焼夷弾に内包されている特定の物質は引火性物質であるサーマイトだと考えられる。サーマイトはマーキング、遮蔽、照明他の目的では使われず、その焼夷効果でのみ使われる。

ダマスカスのダラヤにおける使用報告

ある目撃者の説明を基に調査して取りまとめられた最初の焼夷兵器使用は、11月16日に起きた。最近数週間シリア軍による激しい空爆にさらされているダマスカス郊外ダラヤの活動家はヒューマン・ライツ・ウォッチに、ダラヤにZAB子焼夷弾が投下されている様子が映っている数本のビデオを撮影したと、次のように報告した。

「戦闘機が引火性の爆弾でダラヤを爆撃し始めたのは11月16日でした。その時、私はそういう爆弾を初めて見たんです。ミグ戦闘機が小さな爆弾を落とし、それがまだ空中にある内に火に包まれ、建物や地面に着弾してからもガス(みたいな…煙)を出し続けていたのを見ました。ガスに似た物質は、とても嫌な、酸のような、金属的な臭いでした。」

「12月1日午前10時頃、私は他の活動家数人と一緒にメディアセンターにいて、その時ミグが上空を旋回している音がしました。外に出てみると、その戦闘機がとても大きな爆弾を落として爆発して、それからその爆弾が複数の火の玉のようなものを出し、小さな爆発を起こしたんです。そういう火の玉を4つ見ました。その内1つがメディアセンターのすぐ隣、50メートル位しか離れていない通りを直撃したんです。通りに落ちた時の破壊力はそんなに大きくなかったんですが、通りに丸焼けの穴ができました。」

12月1日にメディアセンターの隣に落ちた「火の玉」の写真は、ZAB-2.5子焼夷弾の残骸を明確に映し出している。ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じたその活動家によれば、ミグ航空機は12月2日にもダラヤに再び焼夷兵器を投下したそうだ。彼はその空爆の模様も撮影、犠牲者はいなかったそうで、火に包まれた住宅が映っているビデオを投稿している。RBK-250焼夷弾と共にZAB-2.5子焼夷弾の両方をそのビデオで見ることができる。

ダラヤ・メディア・センター地元評議会と関連の同じくダラヤ・ユーチューブ・チャンネル「ダラヤ4メディア」にアップされていた他のビデオ3本もまた、居住区と思われる所にある、焼け焦げたZAB子焼夷弾の残骸を映し出している。その子焼夷弾で焼かれた共同住宅も確認できる。

イドリブ県にマーラト・アルニューマンにおける使用報告

11月20日にイドリブ県マーラト・アルニューマンの町から投稿された、ZAB-2.5子焼夷弾であるとみられる物体を投下する、航空機を映しているビデオをヒューマン・ライツ・ウォッチは分析した。他のビデオ2本も、マーラト・アルニューマン西部郊外にある主要幹線キタデル道路沿いにある、共同住宅とその他建物の付近地上で燃えている、ZAB-2.5子焼夷弾を映し出している。

それらのビデオは、マーラト・アルニューマン革命指導評議会情報室(Revolutionary Command Council of Maarat al-Numan)の公式ユーチューブ・チャンネルに掲示されていた。このチャンネルには、シリア軍による攻撃を映したビデオがマーラト・アルニューマンから投稿されている。それぞれのビデオの撮影者は、マーラト・アルニューマンで撮影されているビデオであると、繰り返し述べている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2本のビデオが、マーラト・アルニューマンのキタデル道路上で撮影されたものであるということを、衛星画像を使って確認した。

マーラト・アルニューマンのあるビデオ活動家はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、ユーチューブ・チャンネル「シリア革命」に投稿されたビデオの一部を撮影したのは、自分であると認めた。彼はヒューマン・ライツ・ウォッチに次のように話した。

「11月20日、21日、28日、3度の空爆があった時、私はマーラト・アルニューマンにいました。11月20日が、あの種の爆弾が使われたのを見た最初でした。本当に奇妙な爆弾で、空中で発火し、地面に着弾する前に炎に包まれるんです。」

「11月28日に、1機のミグ戦闘機が大きな爆弾を落とし、それが半分に割れて、大爆発を起こすのを見ました。私たちはそれで終わりだと思ったんです。ところが小さな爆弾が弾筒から落とされた後、ほんの数メートルの所が炎に包まれたのが見えたんです。炎の爆弾はまっすぐ落ちてきたんですが、同じ所には落ちませんでした。約200〜300メートルに広がったんです。爆弾が地面に当たった時に、連続して小さな爆発音が聞こえました。後で着弾した地域を見に行ってみると、爆弾が白い煙を出しているのが見えました。」

「子爆弾の一部は建物の間の通りに落ち、空き地に落ちたのもありました。通りにいた4人、一般市民2人とFSA(自由シリア軍)の兵隊2人が負傷しました。」

ホムス県のクセイルにおける使用報告

11月3日にホムス県から投稿されたビデオには、遠距離から撮影された子焼夷弾を含む空爆であると思われる映像がみられ、一方もう1つのビデオにはクセイル中心部にあるグハレブ・ラディ学校の遊び場で燃えるZAB-2.5子焼夷弾が映っている。2本のビデオは共に、クセイル・メディアセンターのユーチューブ・チャンネル「qmediacenter」に掲示されていた。衛星画像を使って、ヒューマン・ライツ・ウォッチはビデオに映っていた学校の位置を確認している。

クセイル地元活動家の1人がヒューマン・ライツ・ウォッチに次のように話した。

「爆弾は“グハレブ・ラディ”アル・リファトと呼ばれている学校とそれに隣接するいくつかの住居用建物に命中しました。その爆弾はクラスター弾とは違って、ミグ戦闘機から落ちる途中で火に包まれたんです。大きな爆発音といくつかの小さな爆発音が聞こえました。空中に煙があるのを見たし、アル・リファト通りに着いた時に、少なくとも7軒の住宅が火事になっているのを見ました。」

「それから学校に着いた時、少なくても7発の爆弾が遊び場で、ひどい臭いの白い煙を出しながら燃えていたのを見ました。皆が火事になっている建物の中にいる家族を助けていたんです。野戦病院に行ったら、最低でも20人はけがした人がいて、女性や子どももいましたね。そのうち少なくとも3人は前に見たこともないような、ひどい火傷でした。」

「Al Drisse、イスマエル、ラフメトの家は焼けてしまいました。今言った家族にはけが人も出ていて、そのうち3人が火傷をしていました。もっとたくさんの人がいたのは確実なのですが、17歳の少年の背中のやけどと、お年寄りの男の人が左足と胸の右側にやけどしていたのをはっきり覚えてます。3人目も男の人だったんですが、どこにけがをしていたのかちゃんと覚えてないんです。3人は同じ家族の人たちでした。」

その活動家によれば、平屋建てのその学校の中で、反政府武装勢力である自由シリア軍は活動していなかった。クサイル出身の2人目の活動家もヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、焼夷兵器で、少なくとも19人の一般市民がその空爆で負傷し、少なくとも8軒の住宅がひどく焼けたと証言した。

ダマスカスのバビーラ地区における使用報告

12月3日に投稿されたダマスカスのバビーラ地区とみられるビデオは、上空を旋回中のシリア軍戦闘機を映しその後、建物密集地帯で燃えている共同住宅の近くにあるRBK-250 ZAB-2.5弾筒と、更に燃えている共同住宅に接した道路上で燃えるZAB 2.5子焼夷弾を映していた。そのビデオ全体を通して、撮影者はダマスカスのバビーラ地区で撮影中であると話していて、「バビーラ」というアラビア語エンブレムが付け加えられて投稿されていた。

他の場所での使用報告

12月6日に反政府勢力の関係団体であるDeir al-Zourプレスの公式ユーチューブ・チャンネルに投稿されたビデオと、同じく反政府勢力の関係団体である「derrevolutio11」に投稿されたもう1本のビデオは、RBK-250焼夷弾の残骸と燃え尽きたZAB 2.5子焼夷弾を映している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは空爆のあった位置について更なる情報を入手していないが、活動家複数によって投稿された1本のビデオは、ヘリコプターが投下したZAB焼夷弾によるDeir al-Zour空爆を映していると主張している。

空中投下されて不発に終わった単一型ZAB-100/105焼夷弾が、人口集中地域にみえるアレッポ地区アルバブで撮影されたと撮影者は報告。そのビデオは11月29日、アルバブのビデオ活動家が頻繁に使用しているユーチューブ・チャンネル、「albabforall」に投稿された。

11月21日に「AENNetwork」によってユーチューブに投稿されたビデオは、アレッポ県のコブタン・アルジャバル村で見つかったと伝えられる、RBK-250弾筒の残骸複数とZAB 2.5子焼夷弾1発を映していた。

焼夷兵器に関する議定書を含む1980年成立の特定通常兵器使用禁止制限条約(以下CCW)に、シリアは加盟していない。総計106カ国が、「一般市民が密集」する地域での空中投下型焼夷兵器の使用を禁止するCCW第3議定書に加盟している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは焼夷兵器に関する現行国際法の強化に向けて活動してきている。

シリアが焼夷兵器を製造あるいは輸出しているという情報はない。焼夷兵器の保有量についても不明だが、旧ソ連製であると考えられている。